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[KWレポート] 若者からお年寄りまで…いまどきの韓流ファンたち (上)

KOREA WAVE 2024年8月14日 6時0分

(c)news1

【KOREA WAVE】韓国のある会社員は、自身を「K-POPの古参」と紹介している。自分より5歳年下のガールズグループ「エスパ」のメンバー、カリナのファンだ。カリナのファンダム活動が「社会生活からの逃避場所」――会社員は、こう強調している。

この会社員は、保守的な雰囲気の会社で緊張した態度で仕事をしているという。

「社会生活をすると心がざわざわし、萎縮する。しかし、応援する歌手の活動を見ると、一時的にでも笑顔になり、力が湧いてくる」

会社員にとって、カリナは「輝いていて、親切な私の歌手」なのだ。

◇アイドルファンダムの大口顧客となった20~30代

この会社員は最近、「エスパ」のアルバム「Drama」に収録されたフォトカードを全種類集めるために約50万ウォン(約4万5000円)を費やした。ファンではない成人には理解しがたいことかもしれない。

しかし、会社員「どうせカリナは、より大きな幸せをくれるので後悔はない」そうだ。一方的な愛ではあるが、歌手とファンがリアルタイムで交流できるようになったので、時には双方向的だと感じることもある――とも語った。

2000年代後半、ビッグバンや東方神起、少女時代など第2世代アイドルが登場したころ、20~30代の会社員がアイドルファンダムに加わるのは容易ではなかった。当時、アイドルファンダムは10代の文化で、アイドルコンテンツも主に音楽番組やバラエティ番組などテレビ番組を通じてしか見ることができなかった。

しかし、YouTubeやSNSなどのプラットフォームが多様化した結果、スマートフォンさえあれば、いつでもどこでもアイドルコンテンツにアクセスできるようになった。さらに、コンサート会場に直接行かなくても、リアルタイムでコンサートを楽しむことが可能となった。

ビョン・ウソクの「Weverse一対一メッセージ」キャプチャー(c)news1

スマートフォン時代の到来で、アイドルコンテンツへのアクセスが容易になり、この会社員のような20~30代の会社員も次々と「私の歌手」に魅了されていった。

いわゆる「オタク活動」は、20~30代の会社員にとって日常の慰めとなり、彼らはアイドルファンダムの「大口顧客」として台頭した。

20~30代の会社員が10代のファンダムと異なる点は「購買力」にある。映像コンテンツの提供やグッズ(商品)のオンライン販売、有料ファンクラブの加入など、ファンダム活動の集大成であるファンコミュニティプラットフォーム「Weverse(ウィバース)」や「Bubble(バブル)」で提供される「プライベートメッセージサービス」は、20~30代のファンダムで最も反応が良い有料サービスの一つだ。

プライベートメッセージサービスは、購読者全員に送られる芸能人のメッセージが、まるで個人間の対話のようにカカオトークのメッセージ画面に表示される、というものだ。推しの芸能人が「今日のお昼メニューをおすすめして」「今日の運動する映像を見せてあげる」とメッセージを送り、それにファンが答える形で日常を共有する。また、機知に富んだメッセージを送ったファンの名前を芸能人が言及することもある。

俳優ビョン・ウソクのファンダム活動をしている会社員は「職場でストレスを受けた後、人と会うこと自体に疲れを感じる。オタク活動は努力しなくてもときめきを感じ、活力を得ることができる趣味活動」とみる。

ビョン・ウソクのプライベートメッセージサービス「Weverse一対一メッセージ」を購読しているこの会社員は、ビョン・ウソクのメッセージ通知が表示されたスマートフォンの画面を見るだけで胸がいっぱいになるという。

グループ「DAY6(デイシックス)」のファンダム活動をしながらプライベートメッセージ「Bubble」を購読している別の会社員は「職場で忙しく働いている間にスマートフォンに届いたDAY6のBubbleを見ることが人生の楽しみ」と語った。

「少しの間に返事を送り、自分が送ったメッセージの『1』が消える(既読になる)と、本当にコミュニケーションしていると実感する」

この会社員はコンサート会場で初めて会ったファンらと一緒に「トッメ(メモ帳)」や「ドムソン(ステッカー)」などのグッズを自作するほど、ファンダムに真剣で熱心だ。

エスパ(c)news1

◇「感情の浪費のない簡便な愛」を求める理由

専門家は、感情の消耗を避けながらも、ときめきと興奮を感じたいという欲求が「20~30代のファンダム現象」の背景にあると分析している。

「感情の浪費のない簡便な愛」を追求しているのだ。

緊張と競争に疲れた彼らにとって、「オタク活動」は一種の解放区として機能している。

ソウル大学心理学科のクァク・クムジュ教授は「20~30代は相手に拒絶されることを恐れ、恋愛に対して情熱的になれないという傾向がある。恋愛番組が流行しているのも同じ原理だ」とみる。そのうえで「誰かに熱狂する心、異性への関心は人間の本能であるが、この心がファンダム活動に向かうようになった。この心は異性に限らず、アイドルとして崇拝し、ロールモデルとしたい同性にも現れることがある」そうだ。

また、嶺南大学社会学科のホ・チャンドク教授は「感情の消耗はないが、誰かを好きになるという感情の行為ができることで、満足感を得ることができる。10代のころには購買力がなく、盲目的に好きになるしかなかったが、購買力がついてくると、さまざまなファンダム活動ができるようになった」と分析している。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News

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