韓国京畿道(キョンギド)富川(プチョン)の総合学習塾「クリムナラ美術・補習学院」のキム・ソンジン院長と生徒計16人が来日し、7月31日から8月3日にかけ、東日本大震災(2011年3月)で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町を訪れた。地元住民と交流するとともに、震災遺構などの見学などを通じて防災意識を高めた。
窓口になったのは、NPO法人「ヴィレッジネーション」(静岡県富士宮市、村松広貴代表理事)。東日本大震災の直後から南三陸町で視覚障害者を中心に支援を続けている。
クリムナラ美術学院は、高校生ら300人以上が犠牲になった大型旅客船セウォル号沈没事故(2014年4月)を契機に「命を守る防災安全教育」を重視するようになった。
同学院が日本における子どもの防災活動について調べていた際、「ヴィレッジネーション」の活動を知るようになり、直接連絡を取ったことでつながりができた。「ヴィレッジネーション」を通して、南三陸町の復興に関する活動記録を受け取り、教材として活用してきた。こうした経緯から「ヴィレッジネーション」を介したクリムナラ美術学院と南三陸町の交流が深まった。
2018年には学院の生徒から南三陸病院に「南三陸町にいた人は今、元気ですか」というメッセージとともに絵画が届いた。こうしたメッセージに子どもたちが「町の名物、キラキラ丼を食べたい」「『南三陸さんさん商店街』に行ってみたい」などと記していたこともあり、地元の水産加工会社と同社の協力会社2社が出資して子どもたちを招待することを決め、南三陸観光協会などの協力も受けて今回の訪問が実現した。
韓国の一行は7月31日、仙台空港に到着した。8月3日までの滞在期間中、南三陸病院や震災遺構の見学のほか▽地元素材を使ったモノづくりを担う「南三陸YES工房」訪問▽水産加工会社の工場見学▽キラキラ丼体験・夕涼み会参加――など、多忙なスケジュールをこなした。
参加した子どもたちは「南三陸町は山と海が調和し、きれいでした」(ハン・イェリムさん)▽「地元の祭りで、村のみなさんと一緒に踊ったことが一番記憶に残っています」(イ・ヘジュさん)▽「韓国文化との違いをたくさん感じ、興味深かった」(イ・ガギョンさん)▽「南三陸で多くの人々に会いました。みな親切で、温かかったです」(ぺク・ジュナさん)――などの感想を語っていた。
キム・ソンジン院長は「災害の痕跡を感じ、失われた方々を追悼し、町の復興を体感する時間になった。今回の体験によって変化する子どもたちを見て、言葉が通じなくても心を通わせられるということを改めて実感できた。住民のみなさんに感謝を申し上げたい」などのメッセージを残した。
一連の行事を終えて、村松代表理事は「純粋に“人を思う”という気持ちで交流を続けてきた。情操教育や国際教育を重視しつつ、若者の交流を進め、異文化への理解を深める。こうした草の根の交流が、多様な波及効果を生み、未来を創造していることを実感している」と振り返った。
(c)KOREA WAVE/AFPBB News