【KOREA WAVE】韓国で、都市生活に限界を感じた青年層が、農村への関心を高めている。特に家賃や生活費が高く、将来への不安が増す都市生活から、農村での新たな生活を模索する動きが広がっている。
「ソウルに住んでいても残るものはないと感じた」。最近、故郷に戻り、両親の農作業を引き継ぐ準備をしているユさん(25・男性)はこう吐露した。ユさんは全羅北道高敞郡(チョルラブクド・コチャングン)で生まれ育った。ソウルの大学を卒業したが、無機質な都市ではなく、農村で人生の第2幕を早々に開くことを決めた。
ユさんはソウルの中小IT企業に勤務していた。生活費はギリギリ。「家賃と公共料金で約70万ウォン(約7万6000円)を支払うと何も残らない。いつになればお金を貯めて結婚や家を買えるのかと思う」
悩み抜いた末、今年の秋夕(チュソク)休暇に故郷に帰り、農業でメロン事業に挑戦することを決意した。
「父が30年かけて築き上げたものがあるから、ゼロから始めるわけではない。他の人よりも良い条件でスタートできるので、中小企業に勤めるよりずっと良い選択だ」
韓国では帰農・帰村ブームは鈍化しているものの、青年の占める比率は徐々に高まっている。統計庁によると、昨年の帰農した人のうち、30代以下の青年層は10.8%を占める。2022年の9.4%から1.4ポイント増加しているのだ。
青年たちが帰農に目を向ける理由としては、ユさんのように、無情な都市生活に対する不満、農村の新たな事業に対する関心の高まりだ。
「ソウルは人が多く、通勤には毎日1時間もかかる。特に何もしていなくてもすぐに疲れてしまう」
ユさんはこう漏らす。
中央(チュンアン)大学社会学科のイ・ビョンフン名誉教授は次のように分析する。
「ソウルをはじめとする大都市の家賃と物価が高すぎるため、余裕のない生活を送っている。都市では一種の『決められた』生活を繰り返すしかないが、農村では季節単位で自らの経済活動を生み出せる。職業選択も変わってきている。仕事がすぐに所得と結びつく産業化時代の親世代とは異なり、現代の若者は自分なりの生活を楽しみ、意味を見出している。自らの生活を価値あるものにしていくという、歓迎すべきトレンドだ」
伝統的な農業だけでなく、地域特産酒の新事業など多様な形態で青年層の帰農が増加しており、そうした層のもたらす成果はかなり大きいとの評価もある。
ソウル大学農業経済社会学部のムン・ジョンフン教授は「伝統的な農業ではなく、さまざまな形態の農業が高付加価値を生んでいる。付加価値の高い農業に、機会を見つけて参入する青年が増えている」とみる。
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