「どうやって来られたんですか?」
重厚なガラス扉を開けて中に入った途端、キョロキョロしている私に警備員が近づいてきた。しまった!自然体でいるべきだったのに。
アイドルの写真が至る所に貼られ、K-POPが流れる。活気に満ちている――そんな予想とは180度異なる様子だ。
K-POPの聖地とされる韓国の芸能事務所大手「HYBE(ハイブ)」本社の第一印象は、その大きなガラス扉のように重厚だった。
「約束があって来ました」。許可を得て訪問した旨を伝えても、厳しい表情の警備員は簡単には警戒を解かない。しばらくの間、鋭い視線が背後に付きまとった。約1億人のグローバルファンダムを抱えるグループ「防弾少年団」の拠点らしい雰囲気だ。
9月末の午前11時、ソウル市龍山区の漢江大路にあるHYBE本社を訪れた。快晴の空の下、BTSに偶然会えるかもしれない、という期待に足取りも軽やかだった。
大きなガラス扉を押してロビーに入ると、天井に届きそうな背の高い木々が目に飛び込んできた。
ロビーの一角にある庭園を除けば、全体的に灰色を基調としたインテリアがモダンな印象を醸し出していた。正面左側にある「HYBE」と書かれた立て看板がなければ、まるでIT企業と勘違いしそうなほどだ。
身分証を預けて入館証を受け取り、セキュリティゲートを通過した。社員らは顔認証や入館カードを使い、外部の訪問者は入館証が必要だった。
厳重な手続きを経てエレベーターに乗った。19階に至る複数のエレベーターが並ぶ空間では、HYBE所属のアイドルたちのミュージックビデオが次々と映し出されていた。
◇BTSはどこにいるのか?
エンターテインメント会社らしい雰囲気を感じた瞬間、エレベーターの扉がスーッと開いた。「もしかして」と期待し、見慣れた顔に会えるかもと心を躍らせたが、その期待は一瞬で消え去った。
同じHYBEにいるとはいえ、私たちがいるHYBEは異なっていた。
社員とアーティストの利用階は厳密に区分されており、アーティストが使用する階のボタンはすべて灰色のテープで覆われていた。ダメ元で禁止されたボタンを押してみたが、やはりアクセス不可だった。押した途端、ボタンが元に戻る仕組みだ。
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