【KOREA WAVE】韓国で、手術室への防犯カメラ設置義務化を巡る議論が、施行から1年経過した現在も続いている。この法改正は、代理手術や性犯罪の防止、医療事故の対応を目的に2021年に成立し、2年間の猶予期間を経て昨年から施行されたが、未だに憲法裁判所で医療界からの憲法訴訟が審理中だ。
手術室防犯カメラ設置義務化が議論されたきっかけは、2014年に公開されたある整形外科の手術室内での医療スタッフの誕生日パーティー写真だ。その後も代理手術や過失による患者死亡事件、手術中の性的暴行事件などが相次ぎ、防犯カメラ設置の必要性が高まった。
2021年の医療法改正により、全身麻酔などで意識を失う患者の手術を手掛ける医療機関に、手術室への防犯カメラ設置が義務付けられた。ただし、緊急手術や高度な危険性を伴う場合、また研修医の訓練を著しく妨げる場合には撮影を拒否する例外規定が設けられている。
医療関係者は、この法律が医療従事者を潜在的な犯罪者とみなすものであり、手術をためらわせる「防衛診療」を招くと主張している。患者のプライバシー侵害や防犯カメラ映像の流出リスクにも懸念を示している。大韓医師協会と大韓病院協会は昨年9月、法律の効力停止を求める仮処分申請書および憲法訴訟を提出した。
憲法裁判所は現在も審理中だが、大学医学部定員増加を巡る議論に注目が移り、防犯カメラ義務化への関心はやや薄れている。
一方、現行規定の実効性についても多くの問題が指摘されている。現行法では、防犯カメラ設置は義務化されているものの、撮影は患者や保護者からの要請が必要で、要請しない場合には撮影されない。撮影要請の案内義務もないため、患者や保護者が規定を知らないケースが多い。
また、法律違反に対する罰則が軽い点も問題とされる。防犯カメラを設置しなかったり、撮影要請を拒否したりした場合でも、罰金は最大500万ウォン(約55万円)に過ぎない。
さらに、防犯カメラ映像の保存期間は30日とされており、これを90日以上に延長すべきとの意見もある。映像が必要な場合、調停や法的手続きに時間がかかり、保存期間内に取得できないことも多い。これが患者や保護者に早急な刑事告訴を促していると指摘されている。
法律の専門家は「実効性には依然として課題が多い」と述べ、法律の見直しを提案している。また「施行1年が経過した今、効果の検証と規定の改善が必要だ」と指摘した。
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