【KOREA WAVE】火葬後の遺骨を粉末状にし、山や海、川などに撒く「散骨」が、来年1月から韓国で合法化される。これにより、納骨堂や墓地の不足問題を解消する新たな選択肢となるかが注目されている。ただ、環境汚染や私有地の侵害、そして「追悼空間」の不在といった課題も指摘されている。
保健福祉省によると、散骨は来年1月24日に施行される「葬送等に関する法律(葬送法)」改正案に基づき、合法化される。これまでの「自然葬」では、火葬した遺骨を樹木や草花、芝生の下や周辺に埋めることだけが認められていたため、散骨は法律上、合法でも違法でもない曖昧な状態にあった。
改正により、海岸線から5km以上離れた海であれば、火葬後の遺骨を撒くことが可能となる。ただし、水産資源保護区域など特定の場所は除外される。また、墓地や火葬施設、納骨施設、自然葬地内の指定区域で遺骨を撒くことも認められる。
韓国では2001年の火葬率が38.5%(約9万3500人)だったが、2022年には91.7%(約34万2000人)と急増している。また、死亡者数も2020年の31万人から2070年には約70万人に増加すると予測されており、納骨施設の不足が深刻な問題となっている。
こうした状況の中、散骨は納骨堂や墓地を必要とせず、スペースやコストの面でも有利だとされている。納骨堂の維持費や管理費が不要となり、遺族の負担を軽減できるのも利点だ。
一方で、散骨が環境に与える影響を懸念する声もある。海や川に遺骨の粉末を撒いた場合、環境汚染のリスクがあるという指摘だ。しかし、国土交通省は2012年に実施した遺骨成分や既存の散骨海域の調査結果をもとに「散骨による海洋環境の悪化は極めて低い」と結論づけている。
同省は当時、ガイドラインとして▽海岸から5km以上離れた場所で散骨する▽他の漁船に影響を与えないよう一定の距離を保つ▽骨粉が風で飛ばされないよう可能な限り水面近くで撒く▽遺骨以外の物(骨壺、遺品など)を海に捨てないこと――などを示していた。
さらに、散骨は「追悼空間」の不在という課題を抱えている。遺族の中には、散骨後に故人を偲ぶ具体的な場所がないことを寂しく感じる人も少なくない。追悼空間を求める遺族は通常、納骨堂を選択するが、経済的理由で散骨を選んだ場合、この問題が浮上する。
蔚山(ウルサン)大学葬送指導学科のイ・ジョンソン教授は「散骨は故人を追悼する際に痕跡を見つけにくいという限界がある。故人を具体的に思い出せるような象徴や標識が必要だ」と提案している。
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