【KOREA WAVE】韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が3日夜に「非常戒厳」を宣言し、韓国社会は大きな衝撃に包まれた。そんなさなか、AI(人工知能)サービスが「非常戒厳」宣言に関する情報をどのように把握してユーザーに伝達したか、記者が検証した。
主要AIサービスであるオープンAIの「ChatGPT」、米スタートアップが提供する「Perplexity(パープレキシティ)」、そして韓国の大手IT企業ネイバーの「キュー(Cue:)」をテストした結果、それぞれのサービスが持つ技術的な特徴と利点・欠点が明確に現れた。この検証により、AI技術が情報提供と社会的議論の中でいかに重要な役割を果たしているかが確認できた。
◇ChatGPTとPerplexityの高性能な情報提供
オープンAIの「ChatGPT」と「Perplexity」は、RAG(検索拡張生成)技術を基盤とし、最新の情報をリアルタイムで提供する高い性能を示した。RAGは大規模言語モデルとリアルタイム情報検索を組み合わせた技術で、すでに多くの分野で商用化されている。
記者が「ユン大統領が非常戒厳を宣言したが、それについてわかりやすく整理してほしい」と質問したところ、「ChatGPT」はわずか2秒で詳細な回答を寄こした。「ユン大統領が3日夜に非常戒厳令を宣言した。これは国家安全保障の脅威に対応するための措置だ。だが、国会が直ちに戒厳解除決議案を可決した」と、出来事を簡潔にまとめた。また、関連する歴史的背景や憲法条項にまで言及し、包括的な情報を提供した。
一方「Perplexity」も同様に優れた性能を見せた。同じ質問を投げかけると、「ChatGPT」とほぼ同様の内容を回答した。関連ニュース記事のリンクを28件も含む注釈がついており、ユーザーが追加情報を容易に確認できるよう配慮されていた。
「ChatGPT」もRAGを活用する場合には回答の出典を提示するが、「Perplexity」ほどの精密性は現時点でなかった。しかし、両サービスともにRAG技術を活用することで最新情報を正確に伝え、ユーザーに必要なことを詳細に提供していた。これにより、ビッグテック企業が主導するRAG技術が安定して商用化されていることがわかる。
◇「Cue:」ベータ版ながらも成長の可能性
また「キュー」は現在、ベータ版として提供されている対話型AI検索サービスで、「ChatGPT」や「Perplexity」とは異なるアプローチを取っている。記者が「包括的に説明してほしい」と求めた際は「ユン大統領が3日夜に非常戒厳令を宣言した」と3、4行の簡潔な回答を出した。
「もう少し詳しく説明してほしい」と求めると、事件の詳細、国会の対応、市民の反応といったタイムラインをA4用紙1枚分の分量で詳述し、対話型検索の可能性を示した。また「Perplexity」と類似した注釈形式で出典を提示し、ユーザーが情報源を探しやすくしていた。
「キュー」はRAG技術を活用しているものの、「ChatGPT」や「Perplexity」に比べて市場への参入が遅れているとされている。これは大規模言語モデルとRAG開発に莫大なコストなどが必要なためだ。しかし、ネイバーはAI技術の継続的な改善を進めており、来年上半期には「キュー」を統合した新たな「AIブリーフィング」の公開を予定している。これにより、最新データを基にした情報要約や文書出典の強化といった機能が拡充される。
ネイバーが推進するこれらの取り組みは、同社が強調する「ソブリンAI(自主的AI)」の概念に沿ったものだ。ネイバーは、国内技術を発展させ、海外のビッグテックへの依存を防ぐ必要があると主張している。
しかし、専門家は大規模言語モデルが膨大な費用を必要とする技術であると指摘している。米国や中国などの技術大国と比較し、韓国は技術的・財政的制約を抱えており、海外ビッグテックを追随する戦略が最適なのかについては、意見が分かれている。
韓国AI業界の関係者は「ChatGPTも最初から完璧だったわけではなく、ユーザーの要求と競合サービスの動向を反映しながら改善を重ねてきた。ネイバーのソリューションも同様の方法で強化されれば、韓国内の状況ではより良い成果を出せるだろう」と述べた。
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