【KOREA WAVE】韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の「非常戒厳」宣言に対し、捜査機関が本格的な動きを見せている。すでにユン大統領には出国禁止措置が下され、さらに警察は緊急逮捕の可能性を示唆して、捜査のスピードを上げている。
ユン大統領は「内乱罪」の被疑者として捜査対象となっており、憲法が保障する大統領の不逮捕特権が適用されない状況にある。
内乱罪は大統領の特権外とされる犯罪で、捜査・起訴・処罰が可能な例外に該当する。内乱罪の法定刑が最長で死刑に該当する重大な犯罪であることから、強制捜査が進められる可能性が高まっている。
捜査は、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)、検察特別捜査本部(特捜本部)、警察庁国家捜査本部特別捜査団の3機関が競うように進めており、いずれもユン大統領の身柄を確保する方針を示唆している。刑事訴訟法によると、長期3年以上の懲役刑に該当する罪を犯した疑いがあり、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合、捜査機関は逮捕状なしに緊急逮捕が可能とされている。
ただ、現職大統領を逮捕することによる国政の空白や大統領警護処との衝突が避けられないとの指摘もあり、現実的には難しいという反論も存在する。ある憲法学者は「大統領が逮捕されれば、国政の責任者がいなくなる」と述べ、逮捕と同時に弾劾訴追を進め、副大統領または代行者が職務を遂行できるようにする必要があると指摘した。
現在、捜査機関はまずユン大統領への出頭要請や訪問調査を通じて証言を得る計画だが、これを拒否した場合には強制捜査を検討するとみられる。また、大統領府や官邸への家宅捜索の可能性も取り沙汰されているが、過去の例では任意提出で証拠が確保されたケースが多かった。2017年のパク・クネ(朴槿惠)大統領(当時)の国政介入事件では、特別検察チームが大統領府の家宅捜索を試みたが、軍事機密を理由に拒否されたことがある。
興味深いのは、この時の特別検察チームの責任者がユン大統領本人だったことだ。
一方で、法務省は9日、公捜処の要請に基づき、ユン大統領に対する出国禁止措置を下した。現職大統領への出国禁止措置は前例がなく、ユン大統領が直面している内乱罪の重さを物語っている。国政介入疑惑で弾劾されたパク・クネ氏も、在任中に出国禁止措置を受けたことはなかった。
捜査の進展により、早ければ来週にもユン大統領の召喚調査が実施される可能性があるという。現職大統領に対する直接調査は韓国史上初となる。専門家の間では、ユン大統領が即座に辞任し、捜査と弾劾が同時に進行されるべきだとの意見もある。
法学者の間には「ユン大統領の内乱罪はパク・クネ氏の事案よりもはるかに明確である。軍を動員して国会を停止させ、政敵を排除しようとした証拠がある」「非常戒厳の宣言は内乱罪に該当し、違憲であることは明白だ」「ユン大統領は政治的責任だけでなく、法的責任も負うべきだ」という意見が出ている。
現在、ユン大統領は7日の国民向け談話以降、公邸に籠り、外部との接触を断っている。一部では、側近らがメッセージアプリ「テレグラム」を退会・再登録する動きが確認されており、大統領府が強制捜査に備えているのではないかとの見方も出ている。
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