3日の「非常戒厳」宣言後、事実上の「二線後退」を宣言したユン・ソンニョル(尹錫悦)韓国大統領が、自身の内乱容疑を調査するための「内乱特別検察法案」と、妻キム・ゴニ(金建希)氏に関する「特別検察法案」に対し、拒否権を行使するのか注目が集まっている。
与党「共に民主党」を中心とした野党勢力は9日、内乱特検法とキム・ゴニ特検法の2法案を発議した。これらは12日には国会で採決にかけられる予定で、野党議席が192議席を占める現状を考えると、法案成立が有力視されている。
ただ、これらの特検法案は通常の特別検察法に該当するため、大統領は拒否権(再議要求権)を行使できる。しかし、弾劾政局と捜査が進む中で拒否権を行使すれば、さらなる批判や論争を招く可能性があり、慎重な対応が求められている。野党側からは「被疑者である大統領が、自身に関連する法案に拒否権を行使するのは利益相反だ」との声が上がる可能性もある。
一方で、ユン大統領が拒否権を行使する可能性も排除できない。現行法では、大統領が弾劾されない限り、国政の最終決定権者は大統領であり、現在もユン大統領が軍の統帥権を保持していると国防省も明言している。
ユン大統領は最近まで人事権を積極的に行使している。8日にはイ・サンミン(李祥敏)氏の行政安全相辞任を受理し、5日には非常戒厳を提案したキム・ヨンヒョン(金龍顕)氏の国防相辞任を受理して後任にチェ・ビョンヒョク(崔秉赫)駐サウジアラビア大使を指名した。さらに6日には、真実・和解のための過去史整理委員会委員長にパク・ソニョン氏を任命した。これに対し、野党は「弾劾を見越した布石だ」と批判している。
大統領は通常の特検法に拒否権を行使できる一方で、常設特検法に基づく捜査は拒否権の対象外である。野党はユン大統領の内乱容疑を調査する常設特検捜査の要求を提出しており、この法案は10日に国会本会議で議論される見通しだ。これにより、ユン大統領が拒否権を行使したとしても、特検捜査が完全に避けられない状況となる。
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