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「非常戒厳」で見えた韓国警察の変化…「権威から共生」へ [韓国記者コラム]

KOREA WAVE 2024年12月10日 12時0分

(c)news1

【KOREA WAVE】国民と公権力の関係が長年にわたりどのように変化したのか。「非常戒厳」宣布が発令された3日夜、それを浮き彫りにしたのが、韓国警察の対応だった。

「後部座席に子どもがいる場合、取り締まりはしない」。これはベテラン警察幹部の「信念」だ。一見すると、公正な法執行に反するようにも思えるこの言葉だが、その背後には深い洞察が隠されている。

ベテラン警察官によれば、子どもの前で取り締まりを受けた親は、自己防衛の態度を強め、警察への敵意を露わにすることが多いという。信号無視や速度超過といった違反を指摘されても、「黄色信号だった」「前の車について行っただけ」などと言い訳を重ね、謝罪や反省の態度を見せることはほとんどない。結果として、罰金を支払って終わりではなく、警察への反感だけが残る。

このベテラン警察官はこうした手法を「1980年代的なやり方」と評する。

この警察官は取り締まりの際、独自のアプローチをみせる。違反者に厳しい態度で臨みつつも、最終的には厳しい説教と注意で済ませるというものだ。違反者が恥ずかしさを感じる瞬間を利用して、「今回だけは見逃すが、次はない」と伝える。これにより、罰金を科さなくても、違反者は再びルールを守る意識を持つという。

警察という存在は、公権力の象徴であると同時に、市民生活の一部でもある。試験を控えた娘のために祈りを捧げる幹部、反抗期の息子を数枚の紙幣でなだめる中間管理職、週末デートに思い悩む若手警官――。彼ら警察官の生活は、普通の市民と何ら変わらない。

「非常戒厳」が宣布された夜、警察は午前0時から韓国警察トップのチョ・ジホ警察庁長の主催で緊急会議を開いた。しかし、公式な声明は「なし」という結果だった。過去のように、警察が市民を権威的に監視・処罰する時代はすでに終わっている。現在の警察は「治安サービス」や「科学的治安」という理念を掲げ、市民生活に寄り添う形で運営されている。

「非常戒厳」宣布という極めて異例の状況にもかかわらず、警察と市民の間に物理的な衝突はなかった。この背景には、韓国社会が長年かけて築き上げてきた特有の秩序と、市民の自律性の向上がある。警察もまた、その過程で大きく変化した。

一方で、依然として過去の警察運営を理想とする声も一部に残っている。ただ、1970~80年代のような権威主義的な警察行政はもはや通用しない。「非常戒厳」宣布という突発的な状況下でも、警察はその権限を乱用することなく、市民との関係性を重視する姿勢を示した。

今回の事態は、公権力の在り方を再考する契機となるだろう。警察という存在は単なる「秩序の執行者」ではなく、市民と共に変化する必要がある。韓国社会における警察の役割は、今後も進化していくべきだろう。【MONEYTODAY イ・ウォングァン記者】

(c)MONEYTODAY/KOREA WAVE/AFPBB News

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