【KOREA WAVE】北朝鮮が韓国の「非常戒厳事態」に対する関心を強めている。11日に初めて報道し、その翌日も続報を出した。公式声明や談話の形式を取らない背景には、「南北二国家論」に基づき表向きの距離感を示しつつ、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の弾劾プロセスへの干渉を避ける計算があるとみられる。
北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は12日、「韓国で非常戒厳事態の真相が徐々に明らかになる中、ユン・ソンニョルの弾劾を求める抗議の声が高まっており、政治的混乱が深まっている」と報じた。さらに、国会本会議で内乱罪に関する特別検事の設置案が可決され、ユン大統領が被疑者として立件され出国禁止措置を受けた▽国防省や警察庁への家宅捜索が入った――ことなど、韓国の現状を詳細に伝えた。
専門家は、北朝鮮が公式声明を避けている理由について、「南北二国家論」に基づき表向きは韓国と距離を置く姿勢を示しつつ、裏では韓国国内の分裂を助長する心理戦を展開している可能性を指摘している。
また、北朝鮮が慎重に対処している背景には、ユン大統領の弾劾プロセスを妨害しないようにとの意図もあるという。国家安保戦略研究院のキム・インテ博士は「ユン政権は最初から北朝鮮に対する敵対的な政策を明確にした保守政権であり、弾劾要求に対する北朝鮮内部の見方は当然のことだと考えている可能性がある」と述べた。
北朝鮮がこの事態を利用し、内部プロパガンダの一環として体制の正当性を主張する動きも見られる。高麗大学のユ・ホヨル教授は「韓国側の行動を挑発的とし、北朝鮮に対する攻撃的な立場を『非難の材料』にして、米国や中国に向けた外交戦略としても利用する可能性がある」と指摘した。
さらに、北朝鮮が韓国の混乱を目の当たりにし、自信を深めた可能性も指摘されている。ある北朝鮮専門家は「命令に従わない韓国軍人を見て、北朝鮮指導部が韓国軍の戦闘能力に疑問を抱き、それを利用して軍事的挑発を強化する恐れがある」と分析した。
専門家らは、北朝鮮が近く開かれる最高人民会議で、領土条項を憲法に反映した場合、南北間の軍事的衝突リスクがさらに高まる可能性があると警告している。今回の事態は、北朝鮮に対する韓国の防衛態勢や内部結束力の強化を促す一方、北朝鮮が挑発行動を強める契機ともなり得る。
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