Infoseek 楽天

【特集】地域猫の写真と川柳に思いを込めて…不登校・ひきこもりを乗り越えたカメラマン

KSB瀬戸内海放送 2024年9月10日 17時57分

 「地域猫」という言葉はご存じでしょうか?
 地域住民が主体となって適切なエサやりやそうじ、繁殖の防止などに取り組む「特定の飼い主がいない猫」のことで、岡山県も活動を支援しています。
 そんな地域猫の写真をユニークな表現で発信するある男性の思いに迫ります。

 岡山市在住のアマチュアカメラマン服部佳弘さん(35)。週に2回、地域猫活動をサポートしながら、写真を撮影しています。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「もしかしたらそういう気持ちがあるのかもしれないですね。映りたい、撮ってくれみたいな気持ちがあったらうれしいですけど。ありがたいことに寄ってきてくれますね」

 気まぐれな猫たちとじ~っくり向き合うこと数時間。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「なかなか猫も気分屋で思うように動いてくれないので、その中でもおもしろい瞬間とか、いい瞬間が撮れたらすごくうれしい。自分の写真を通じて見ている人が癒やされたり、心が動いたりするような表現ができたら」

 子どもの頃から猫が好きだったという服部さん。3年半ほど前から趣味で写真を撮り始めました。個性豊かな猫の姿を、インスタグラムやXなどのSNSに投稿しています。

写真だけではなく…

 さらに、写真を投稿するだけではなく……。

「ニッコリを 作ってあなたに おすそわけ」

「収納の ワザ光らせる 匠かな」

「支えあう 互いを労い 送る日々へ」

「夕焼けが ニャン平線へと 吸い込まれ」

 写真からイメージした自作の「猫川柳」を添えるのが服部さんのスタイル。数カ月かけて習得したという文字で、手書きにも挑戦しています。

子どもの頃は集団生活になじめず不登校に

 さりげない優しや温かさが感じられる服部さんの川柳。そのルーツは、小学生の頃にさかのぼります。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「子どもの頃に学校に行けなくて保健室登校をしていて、その時に先生に『(川柳が)うまいね』と言ってもらった記憶があったので、それを思い出して書いてみようと思って」

 極度の人見知りで、集団生活になじめなかった服部さん。緊張やストレスが積み重なり、小・中学校を不登校のまま卒業しました。

 その後、定時制高校に進学したものの、中退してひきこもりの状態に。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「日を追うごとに自分を責めていって、自分は言ってしまえば価値がないというか。自分はだめだなとか」

 そんな服部さんを家族はそっと見守り続けました。姉の珠子さんからもらった手紙には……。

(姉・珠子さんからの手紙)
「自分を信じて家族を信じて前向いて歩いてください」

 そして、普段は物静かだったという祖父の利彦さんも……。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「毎朝部屋の前に来てコーヒー牛乳を置いて飲めっていうふうに声を掛けてくれて、おじいちゃんなりに気にかけてくれていたのかな」

祖父の死がきっかけで気持ちに変化が

 家族の温かさを感じながらも、それに応えられない情けなさや罪悪感でいっぱいだった17歳の頃。祖父が亡くなったことをきっかけに、気持ちに変化が現れました。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「将来が不安というか、どうしようもないというか、死ぬまで家にこのまま外に出られずにいるのかと思っていたんですけど、なんとかそこから頑張ってみようと。僕自身ネガティブなので悩んでしまうことが多いですけど、前向きな言葉を書いてそれを見ながら自分自身も自分の言葉に励まされながら」

 18歳から定時制高校でもう一度学び直し、仕事を始めた服部さん。

 新型コロナ禍で仕事が減り、苦しかった時期に気持ちを和らげてくれたのが、自由気ままな地域猫の姿でした。

コツコツ撮り続けて写真集を自費出版

 コツコツと写真を撮り続け、2023年3月、初めての写真集を自費出版しました。

(服部さんの母/玲子さん)
「私これ好きなんよ……。うれしそうに帰ってくるんよ。お母さん、きょうはええのが撮れた、見て見てって」

 自分のことのように喜んでくれたのは母・玲子さんです。

(服部さんの母/玲子さん)
「昔のことを考えたら本当に学校には長いこと行ってないし、家から出られない時もあったので、ちょっとかわいそうな……すごく悩みましたけどね。だから今のことはすごく何にも代えがたくうれしい。うれしいでございます、母は」

猫仲間と写真展を開催へ

 一歩踏み出したことで目の前に広がった新しい世界。この日は、9月に開催する写真展のリハーサルにやってきました。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「(Q.写真展は初めて?)初めて、まったく初めてです。だから手探りで……」

 「一緒に写真展を開こう」と服部さんに声を掛けたのは、宮本祐希さん。SNSや撮影を通じて意気投合した「猫仲間」です。

(写真展を共催/宮本祐希さん)
「たまたま服部さんがいて、『服部さんですか?』って言ったら『はい』ってなって。今度写真展しましょうよって」

 「地域猫」を見守る人たちへの感謝と、その活動への理解が進んでほしいという願いを込めた写真展です。

 今回のために用意した手書きの川柳。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「やっぱりいいですね、これがあった方が……作品ができたなという感じがしますね」

宮本さん「自分で字を書くというのがいいよね」
服部さん「下手でもいいからとりあえず書いてみようと。ちょっと恥ずかしいけど多少は成長しているのかな」

 過去の経験がある今だからこそたどりついた「自分らしい表現」。

(地域猫の写真を撮影/服部佳弘さん)
「同じように社会の中で生きづらさとかしんどいなとか、学校だけではなくて仕事とか家族のこととかでも疲れたとかしんどいという方にも伝わるような、ちょっとした癒やしや励みになるようなメッセージを届けたい気持ちが強いので、そういった表現をしていきたい」

 服部さんと宮本さんが撮影した「猫」の写真展は9月14日~16日まで、岡山市東区の百花プラザで開かれます。入場は無料です。

この記事の関連ニュース