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【解説】備前市が実施したアメリカツアー 市長は公務で同行も費用は私費 専門家「責任の所在 不明確に」 岡山

KSB瀬戸内海放送 2024年9月11日 17時56分

 岡山県備前市出身のメジャーリーガー・山本由伸投手を応援しようと、備前市が企画したアメリカツアーが8月に実施されました。このツアーには市長も「公務」として同行しましたが、費用は「私費」でした。

 抽選で選ばれた備前市の中高生約200人が第1陣、第2陣に分かれて参加したアメリカツアー。

 日程はどちらも3泊5日。山本投手は故障のためツアー中の登板はありませんでしたが、岡山市に本社があるアパレル企業の現地工場を訪れたほか、メジャーリーグを観戦したりロサンゼルスの街並みを散策したりしました。

 宿泊費や交通費、主な食費などは市が全額負担していて、総事業費は約1億3000万円です。

(参加した中学生は―)
「野球を見に行くのが目的だったが、この英語なんだろうと調べたりして、学校での授業ですごく英語力よくなったねと。とてもいい経験だった」
(参加した高校生は―)
「ジーンズは岡山、児島の特産。それを海外で売り込み、工場を造っていてすごさを感じた」

(備前市/吉村武司 市長 8月29日)
「備前の中高生が一歩一歩大人になっていくいいチャンスだったと思う。子どもたちに世界を知ってもらう財源がかなうのであれば来年も当初予算に提案し議会の賛同を得たい」

 吉村市長は、2025年度にはアメリカに加え、備前市と交流がある韓国やフランス、オーストラリアへのツアーも実施したいとしています。

 一方、このツアーを巡っては、抽選に漏れた中高生が参加できないのは地方自治法に違反しているという声が上がったり、公費支出の差し止めを求める住民監査請求がされたりしています。

 地方政治に詳しい専門家はーー。

(日本大学法学部/浅野一弘 教授)
「市民の方を交えて、その第三者機関みたいなものをつくって今回のツアーの決定、そしてその実施過程に問題はなかったのかというのを検証してみることは一つ重要」

市長は私費で同行も…位置付けは「公務」

 ツアーの事業費 約1億3000万円について、備前市は「ふるさと納税やクラウドファンディングで集まったお金で全て賄う」としています。しかしこの事業費にツアーに同行した市長の費用は含まれていません。

(備前市/吉村武司 市長 8月29日)
「公務だから全て税金を使うという考えはありません」

 吉村市長は、アメリカツアーの第1陣が出発する2日前の8月2日にアメリカへ出発。ツアーの団長として、参加者が訪れる施設を事前に視察しました。そして8月4日から4日間、第1陣のツアーのほとんどの場所に同行しました。8月22日から行われた第2陣のツアーでは参加者と同じ日程で過ごしました。
 吉村市長は「公務」として同行していますが、全ての費用を「私費」で負担しています。

 この点について専門家はーー。

(日本大学法学部/浅野一弘 教授)
「公の仕事をする場合には公のお金を出していく、そうしないと責任の所在も不明確になる。公と私の境目が曖昧になってくるとそういうところから例えば癒着みたいなことも生じかねない」

 さらに吉村市長は今回のアメリカツアーに合わせて、さまざまな場所を訪れていましたが、公務と私用の線引きが明確でない点が見られました。

 

 ツアー第1陣の参加者は8月7日にアメリカを出発しましたが、吉村市長は翌8日にカリフォルニア州のトーランス市に移動し、友好都市協定の調印式に出席。これは「公務」で費用は「公費」から出されました。

 翌9日にはベルギーに移動し、備前焼などの工芸品を展示するための候補地探しをしました。これについて市は、「市長が私用でベルギーに移動し、結果的に公務にあたる活動をした」として移動や宿泊などは「私用」、活動は「公務」と位置付けました。かかった費用は全て吉村市長が「私費」で負担しています。

 その後、吉村市長は「私用」でフランスに移動。市は私用のため日程や活動内容の詳細は把握していないとしています。帰国したのは8月13日です。

 この私費での出張について、吉村市長はーー。

(備前市/吉村武司 市長)
「自分のできることは自分でやればいい。公費で活用するところは活用すればいい。それは別に異常でもない、個々の首長が考えること」

 吉村市長は「今回に限らず、これまでも公務の出張にかかる費用を私費で負担したことがある」としています。

 日本大学法学部の浅野教授は、市長の私費での出張について「他の自治体では聞いたことがない」と話します。さらに市議会などが「私費出張」を問題視していないことにも警鐘を鳴らしています。

(日本大学法学部/浅野一弘 教授)
「次の市長が、例えばポケットマネーで行かずに公のお金で出張に行くと『何だこの市長は』といった誤った認識を持つ人が出てくる。そういうきっかけづくりにもなる。選挙はお金のある人しか出られないのかという話になる」

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