「ゲーム」を通じて世代を超えた交流の場をつくろうという催しが、高松市の商店街で開かれました。クリエイターや学生らが作ったオリジナルのゲームを楽しめるほか、医療とゲームを組み合わせたものも。「100年続くお祭り」を目指して進化する取り組みを取材しました。
商店街でゲームのお祭り
11月17日、高松市の南部3町商店街で開かれた「SANUKI X GAME」。ゲーム制作の愛好家らでつくる一般社団法人「讃岐GameN」が主催しました。
2024年は県内外のクリエイターや学生らが2023年の1.5倍となる60以上のオリジナルゲームを出展し、大勢の親子連れらでにぎわいました。
(高松市在住のゲームクリエイター/香西一輝さん)
「子どもたちにワクワク、楽しいって言ってもらえたら、それだけで作ったかいがあるんで。普通のゲームのイベントってコアなゲームプレイヤーたちがたくさん来られるんですけども、ここはご家族の方もたくさん来られるので」
医療×ゲームで新体験
中には、地元・香川を舞台にした作品や、医療とゲームを掛け合わせたものもあります。
視力検査のマークと同じ的に輪投げをし、カウボーイのように引っ張るゲームです。そして……
(記者リポート)
「特殊なメガネを使って目の病気が体験できるコーナーです。視野の一部が欠ける緑内障を体験できるメガネをつけると…」
ゲーム画面の一部が白くなり、見えづらくなるのを体感できます。
ほかにも目の中の水晶体がにごる白内障や、近眼を体験できるレンズなどをつけて子どもたちがアクションゲームをプレーしていました。
(体験した子どもは―)
「全然見えん。暗闇の中でいるぐらい」
「なんか小さくて、なんか見えなかった。(Q.プレイはどうだった?)難しかった」
(Dr.GAMES[徳島大学病院の眼科医]/梶田敬介さん)
「病気にならないと病気の人の気持ちって分からないと思うので、色のコントラストが見やすくなったり、見づらくなったり、視野の一部が欠けることで全然攻撃がよけられなくなったりとかするので、そういう新しい発見をしてもらえればうれしいです」
ゲームの依存問題も考える
イベントの一環として、ゲームの「依存」の問題について考える企画を毎回盛り込んでいるのも特徴です。
(讃岐GameN/渡辺大 代表)
「(ゲームは)楽しいぞっていうことだけではなくて、どうやらなんか困ってる人たちもいるんだというところに対して、専門家の人たちだけでもなくて、街の人たちと一緒に話し合う時間というのをこの祭りのたびに設けたいなと思って」
今回は、まず依存症の専門医が講演し、依存が快楽を求めるためではなく、不快や苦痛を和らげるためになるというメカニズムを解説。ゲームが唯一の支えになっている人からそれを奪う危険性も指摘しました。
(三光病院/海野順 院長)
「(ゲームを)長時間使用するのは良くないみたいなキャンペーンが始まると、長時間使用のおかげでバランスがどうにか取れている人たちを傷つけてしまうようなことにならないかという問題が今起こっていることなのだろうと思います」
その後、ゲームクリエイターと小中学生の保護者ら約20人が「ゲームをつくる人と遊ぶ人の違い」や「親と子どもの上手なゲームとの付き合い方」などをテーマに意見を交わしました。
(中3・中1・小1の父親は―)
「(ゲームの)使用時間が長くなるっていうことと、その子が本当に依存になるかどうかは、ちょっとまた別の話なんだろうなとは思いつつ、ただ、関わり方を間違えると依存的な付き合い方になる。そういうのは注意してないといけないなとは思います」
(中2男児の父親)
「(ゲームを)うまくなるために努力をしてる時間だったら、まだ依存ではないよって。それが苦痛を逃れるためにやるんだったら依存に近づいてるって話を聞いた時に、じゃあまだうちの子、依存じゃないなって思ったのはちょっと安心しました。というのと、やっぱりいろんな立場の違う人たちとしゃべれる機会があったのですごくいい経験になったなと思います」
100年続くお祭りに
4回目となる2024年のポスターには「4/100」の文字。
ゲームを軸に100年続く街のお祭りにすることを掲げ、今回、専用の法被とちょうちんを新たに用意しました。いずれも地元の老舗の染め物屋さん(大川原染色本舗)とちょうちん屋さん(三好商店)に依頼したもので、1、2回で使い捨てにしないという決意の表れでもあります。
そして、祭りに欠かせないのが「担い手」です。
(讃岐GameN/渡辺大 代表)
「7~8割はやっぱり香川県の、街の人たちで担いで準備して持ち上げられる、一緒に走れるっていうものじゃないと、やっぱり街のお祭りっていうのにはまだなかなかたどり着けないのかなっていう個人的な思いがあって」
とはいえ、香川県内でゲーム制作に携わる人の数は限られています。そこで……
(記者リポート)
「今回はゲームクリエイターたちだけではなく、地元の鉄工所も初めてブースを出しています。こちら鉄でできたサッカーゲームやオセロ、そしてこの刀のようなもの。実はゲームと深い関係があるんです」
出展したのは、建築金物のほかに鉄を使った家具や小物、オブジェなどを手掛ける高松市の槙塚鉄工所です。
「音響効果刀」という道具、刀身をすり合わせると……
「シャキーン! シュイーン!」
サウンドデザイナーからの依頼を受けて槙塚鉄工所の職人が作ったもので、今では、多くのゲームやアニメの刀剣での戦闘シーンの音が、香川で作られた道具から生み出されているんです。
SANUKI X GAMEではより幅広く地域の人に参加してもらおうと、祭りの主役となる「ゲーム」を、「体験の提供」と再定義しました。
(槙塚鉄工所/岸晃一郎さん)
「僕たちもアナログしか作れないんですけど、クリエイター同士が新しいものを生み出す、すごくいいきっかけになっているなと思っています」
また、高松市の鍼灸院は、ロールプレイングゲームに登場する石化状態を回復させるアイテム「金の針」にちなみ、鍼やお灸を体験できるコーナーを出しました。
(讃岐GameN/渡辺大 代表)
「ゲームクリエイターっていう一部の人じゃなくて、本当にいろんな『体験』を持ってる街中の人がここに集まってこられるっていうお祭りに進化できるんじゃないかなっていうのが今年のチャレンジですね」
ゲームを作る、ゲームで遊ぶ、さらに「体験」を提供する。
子どもからお年寄りまで世代を超えて楽しめる街の新たな「お祭り」は、今後ますます進化をとげそうです。