広島への原爆投下後に降った、いわゆる「黒い雨」を巡り、被爆者として認められなかった岡山市の女性が県に却下の処分の取り消しなどを求め、岡山地裁に提訴しました。
訴えを起こしたのは岡山市の83歳の女性です。
訴状によると、女性は当時の広島県津田町で4歳のときに放射性物質を含んだ雨、いわゆる「黒い雨」を浴びたとしています。
黒い雨を巡っては、2021年に広島高裁が国が定めた区域の外にいた人も被爆者として認める判決を言い渡しました。
判決を受け、国は2022年に被爆者の認定範囲を拡大し、「黒い雨」を浴びた可能性が否定できず、がんなど11種類の病気にかかっている場合に、被爆者健康手帳を交付するという新しい基準を設けました。
女性は肝疾患にかかったことなどから2024年3月、岡山県知事に被爆者健康手帳の交付を申請しましたが、「当時いた場所に黒い雨が降ったことは確認できない」として却下されました。
女性は県の判断を不服として、却下の処分の取り消しと手帳の交付などを求め、29日に岡山地裁に提訴しました。
弁護士によると、岡山県では7月までに23人が手帳の交付申請を行い、今回の女性だけが申請を却下されたということです。
国の新しい基準を踏まえた提訴は広島県以外では全国で初めてだということです。
女性は「私は黒い雨の話は長年誰にも話していなかった」「打ち明けられず申請を諦めている人もいるはず」「そのような皆さんに勇気を与えたい」とコメントしています。
岡山県の伊原木知事は「訴状が届いていないためコメントは差し控えさせていただきます」としています。