岡山市にある自主夜間中学で特別授業が行われました。講師を務めたのは、奈良市の公立夜間中学で20年間学び続けた89歳の元生徒です。
年齢や国籍を問わず、さまざまな事情で義務教育を十分に受けられなかった人たちが学ぶ「夜間中学」。
岡山市には、ボランティアが運営する「自主夜間中学」があり、読み書きや計算などの個別授業のほか、講師を招いた特別授業も行っています。
(奈良市の公立夜間中学で学んだ/西畑保さん[89])
「恥ずかしい話やけど、自分の名前もよう書きませんでした。夜間中学で自分の住所と名前を書いた時は一番うれしかった」
11日は、奈良市の公立夜間中学で20年間学んだ西畑保さん(89)が体験を語りました。
家が貧しかった西畑さんは、いじめがきっかけで不登校になり、小・中学校を卒業できませんでした。読み書きができず、職を転々とするなど苦労をしたといいます。
(奈良市の公立夜間中学で学んだ/西畑保さん)
「お客さんの注文をメモして渡さないといけない、それができないの。買い物にしても何にしても字を書けないことが一番つらかった」
結婚する時もそのことを妻に言い出せずにいました。
(奈良市の公立夜間中学で学んだ/西畑保さん)
「妻が初めて声をかけてくれた。『これから一緒に頑張ろう』と言われて、その言葉は今でも忘れていません」
家族に支えられながら、定年後、奈良市の公立夜間中学に通った西畑さん。
覚えた字で妻に感謝の手紙をつづり、2020年には人生で初めての卒業証書を手にしました。
夜間中学の生徒たちを元気づけようと、これまでに10回以上岡山に足を運んでいます。
(奈良市の公立夜間中学で学んだ/西畑保さん)
「夜間中学に行ってから皆さんに出会えた」
岡山市では2025年4月、卒業資格が得られる県内初の公立夜間中学、岡山後楽館中学校夜間学級が開設されます。
(奈良市の公立夜間中学で学んだ/西畑保さん)
「夜間中学は僕のふるさと。岡山はたくさんの生徒が来てくれると思う。今でもこんなにたくさんの生徒がいるから」
(生徒は―)
「つらいこともあって悲しいこともあった人生だと思うんですけど、諦めずに頑張って乗り切ったというのはすごいと思う。僕もこの学校に来て良かったと思いますし、これからも夜間中学で学べたらいいな」
「僕も今まで住所を書けなくて、名前と住所を一緒に書けるようになったのは夜間中学に来てから。たくさんの人が集まっているので夜間中学は大切だと思う」
「私もいじめに遭っていたことがあるのでよく分かります。(夜間中学は)いろんな人と知り合える楽しさもある」
(岡山自主夜間中学/城之内庸仁 代表)
「やはり不安になることが多い。そういう生徒にとっては大先輩の西畑さんの話を聞くことで自分ももっと頑張ろうというエネルギーになってくれたら」
ひたむきに学び続けた西畑保さんの姿はこれまでさまざまなメディアで紹介され、2025年3月には実話を元にした映画も全国で公開されます。
3月7日公開「35年目のラブレター」
監督・脚本:塚本連平さん
出演:笑福亭鶴瓶さん・原田知世さん・重岡大毅さん・上白石萌音さんほか