2024年5月、岡山県教育委員会は真庭高校と笠岡工業高校を再編整備の対象にしたことを明らかにしました。県教委は統廃合を前提とした行動計画を2024年度中に策定する方針ですが、地元からは存続を求める声があがっています。
真庭高校が再編対象に
2024年11月の岡山県立真庭高校です。この日は食農生産科の生徒がニンニクの植え付けや花の手入れなどについて学んでいました。
(生徒は―)
「手入れって思ったより楽しい。確かに時間がかかるので飽きるのではないかと思われるかもしれないが、やっている方としては面白い」
真庭高校は、2011年に落合高校と久世高校が統合してできました。
特色ある学校づくりをしようと2022年に普通科の生徒募集を停止し、現在は、食農生産科、看護科、経営ビジネス科の3つの学科があります。
最後の普通科の生徒が卒業して間もない2024年5月、県教委は真庭高校を再編整備の対象にしたことを明らかにしました。
2023年度と2024年度、2年続けて1年生の生徒数が100人を下回り、再編整備の基準に該当したのが理由です。
(岡山県教委 高校魅力化推進室/藤原紳一 室長)
「一定の規模がないと活力が維持できないということで、今再編整備の検討を進めている。高校生ですので一定の規模の中で切磋琢磨しながら成長してほしい」
真庭高校の竹内成長校長は県教委の方針を理解しながらも「今後、生徒数が増える可能性があるので統廃合を前提に議論するのは時期尚早だ」と話します。
(真庭高校/竹内成長 校長・2024年11月)
「専門科高校として3年前から準備して3つの科の完成年度、1年生から3年生までがそろった状態が今年ですから、これまで卒業生もまだ出ていない。校内のカリキュラムや行事の設定、校外との連携などまだまだきっちりと確立できていない道半ばという感じが学校としてある」
2024年10月、真庭高校の生徒が全国高校生ビジネスアイデアコンテストで放置された竹林の活用方法を発表し最優秀賞に輝きました。
また、看護科の卒業生の2~4割程度が岡山県北の医療機関に就職しています。
地元の医師会と看護協会は地域医療を支えるために真庭高校の看護科が必要だとして、存続などを求める要望書を14日、県と県教委に提出しました。
(真庭市/太田昇 市長・2024年10月)
「知恵を集めて今までにないようなことを考え、やらなければ県立高校は真庭市から消えると思っています」
太田市長は2024年10月に岡山県庁を訪れ、統合を前提とせず慎重に議論することなどを求める要請文を中村正芳教育長らに手渡しました。
県立高校の再編整備基準
岡山県教委は、少子化の中で一定の教育水準を保つためとして、2019年に県立高校の再編整備の基準を決めました。
その中で、2023年度以降、2年連続で5月1日時点の1年生の人数が100人を下回った場合、再編整備の対象にすることを定めました。
また、2年連続で80人を下回った場合は次の年度の生徒募集を停止することとしています。
真庭高校の1年生の数は2023年度が84人、2024年度が74人でした。笠岡工業高校は2023年度が99人、2024年度は96人でした。
なお、市町村に1校しかない県立高校については2028年度まで統廃合の対象にはしません。
笠岡工業については、地元の商工会議所が工業系人材の学びの場の存続を求めて県教委に要望書を提出するなどしています。
要望書では、笠岡工業は企業への人材供給を通して地域産業の発展に大きく貢献しているとしています。
周辺の自治体も危機感
高校の再編整備は周辺の自治体にとっても影響がありそうです。真庭市の隣にある新庄村は危機感を募らせています。
(新庄村/小倉博俊 村長)
「今回のこの問題については危機感を非常に持っている。新庄村の将来の存続にも関わる」
新庄村の小倉博俊村長は「真庭高校がなくなると村の人口減少につながる恐れがある」と話します。
(新庄村/小倉博俊 村長)
「学ぶ機会の創出、その場所が身近なところでなくなると通えないとすると転出をしていく状況になる」
新庄村には高校がなく、毎年5~8人いる村の中学校の卒業生のうち約半数が真庭市の真庭高校か勝山高校に進学しています。
この2校にはバスで40分から1時間程度で行くことができますが、他の高校に自宅から通うのは厳しいのが現状です。
新庄村は、2024年10月に真庭高校の存続を支援しようと真庭市が設立した基金に1000万円を寄付しました。
(新庄村/小倉博俊 村長)
「真庭市だけにお任せする問題ではなくて、新庄村の未来を考えたときに地方創生の面からも、あるいは子どもの将来の教育を考えたときに新庄村としてもやはり他人事ではない」
専門家「地域振興も踏まえて協議を」
学校の統廃合について研究しているシンクタンクは、地域振興の観点も踏まえて話を進めることが重要だと話します。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング/阿部剛志 上席主任研究員)
「移住先を選ぶときの要因の大体トップ3は自然環境がいいか、教育環境がいいか、そういう(移住先の)選択肢にのるかのらないかのところに高校は一つ意味があるし、かつ魅力的な高校かどうかは大事」
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが全国で行った調査によりますと、高校が統廃合で消滅した市町村では高校生世代の転出者が増えました。
一方、高校の魅力化に取り組む学校がある市町村では人口減少率が緩和される傾向がありました。
阿部上席主任研究員は、オンライン授業の普及や部活動の地域移行が進んでいるため、再編整備の基準となる生徒数を見直すことも選択肢の一つだと指摘します。
(三菱UFJリサーチ&コンサルティング/阿部剛志 上席主任研究員)
「とにかくぶれてはいけないのは、岡山県に生まれた子どもたちに一番選択肢の多い岡山県の教育を残していくにはどうしたらいいかを真剣に考えること。10年後、20年後に岡山の高校で『こんな形、学校があってもいいよね』ということを描いて、そこにどうリソースを充てていくかを県教委と県知事部局が一緒に考えていかないと縮小均衡だけで未来は描けない」
岡山県教委が2024年度中に策定する行動計画がどんな内容なのかに注目です。