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超値上げ? トヨタ 新型「センチュリー」は先代の1.6倍に なぜむやみに高価格クルマが誕生するのか

くるまのニュース 2018年11月14日 10時30分

最近は価格をむやみに高めたクルマが登場しています。6月に発売されたトヨタ「センチュリー」は先代型から約700万円以上も値上げされました。HVになったとしても上がり過ぎです。なぜここまで値上げされるのでしょうか。

■新型センチュリーのベースは先代「LS600h」なのに大幅値上げ

 最近は価格をむやみに高めたクルマが登場しています。2018年6月22日に発売されたトヨタセンチュリーは1960万円に達します。先代型は1253万8286円だったので、約700万円以上も値上げされました。比率に換算すると、現行型の価格は先代型の約1.6倍です。

 現行センチュリーはV型8気筒5リッターのハイブリッドを搭載しますが、プラットフォームまで含めて、基本部分は先代レクサス「LS600h」と共通です。

 一方、先代センチュリーは専用開発されたV型12気筒5リッターエンジンを搭載しており、これも高コストです。現行型がハイブリッドになって安全装備も充実させたとはいえ、約700万円以上も値上げするのは不自然でしょう。

 また7月20日に発売されたホンダ「クラリティPHEV」も、価格が588万600円に達します。リチウムイオン電池の総電力量は17kWhと多いですが、そこを考えても相当な高価格です。

 三菱「アウトランダーPHEV」の総電力量は12kWhにとどまりますが、前後輪をモーターで駆動する独自の4WDを搭載します。本革シートなども標準装着したアウトランダーPHEV・Gプレミアムパッケージが479万3040円なので、クラリティPHEVは100万円以上も高いです。

 ちなみにクラリティには、燃料電池車のフューエルセルも用意されています。これはリース車両ですから一概に比較できませんが、価格は767万2320円で、経済産業省の補助金額は208万円ですから、ユーザーの実質負担額は559万2320円です。

 クラリティPHEVの補助金額は20万円なので、実質負担額は568万600円になり、燃料電池車のクラリティフューエルセルよりも高くなってしまいます。

 なぜセンチュリーやクラリティPHEVは、価格が高いのでしょうか。センチュリーの開発者に尋ねると、「現行センチュリーは、ハイブリッドを搭載して安全装備も充実させました。機能がかなり向上しています。しかも月販目標台数(1か月の販売目標)が50台と少ないので、コスト低減を図りにくい事情もあります」と説明しました。

 開発者の言葉で注目すべきは、月販目標が50台にとどまることでしょう。先代センチュリーが1997年に発売された時の月販目標は200台でしたから、現行型の販売規模は25%と少ないです。

 しかもセンチュリーは国内専売なので、世界生産台数が1か月に50台と考えられます。そうなると先代型のように21年間にわたり生産しても1万2600台ですから、プリウスの国内販売に当てはめると1か月半程度の台数です。

 そしてセンチュリーは超絶的な高級車ですから、ハイブリッドシステムやプラットフォームを先代レクサスLS600hと共通化しても、開発と生産には多額のコストを費やします。これが1か月に50台、「生涯生産台数」も1万2600台にとどまると、量産効果はまったく利きません。その結果、価格を高めているのです。

■月販50台という条件、価格を高めて実現へ

 クラリティPHEVは、北米でも売られるために事情が異なりますが、国内の販売計画は1年間に1000台です。1か月平均であれば83台で、フューエルセルを含めてクラリティ全体の販売規模も小さいです。そこで価格が割高になりました。

ホンダ 新型「クラリティPHEV」

 ユーザーから見た時の商品の価格は、主に機能やデザインという商品価値で決まります。クルマであれば、走行性能、乗り心地、燃費性能、車内の広さ、質感、装備などが、価格をイメージさせる商品価値でしょう。

 ところが実際には「どれだけ売れるのか」という生産規模が重要で、たくさん売れれば安くなり、少数では高まります。開発者の中には「クルマの価格と機能はまったく関係ありません」と断言する人もいるほどです。

 したがって売れ行きが伸びると、すべてがよい方向に進みます。大きな利益を生み出し、次期型の開発費用も潤沢に与えられます。価格の割に装備を充実させたり、質感を高められるので、ますます好調に売れます。

 逆に販売が伸び悩むと、必要な改良を受けられなかったり、次期型の開発費用を減らされるなどマイナス方向に進んでしまいます。その結果、消滅する車種も少なくありません。

 センチュリーは前席よりも後席を重視する国産唯一の高級セダンで、トヨタのイメージリーダーカーでもあります。そこで国内専売で月販50台という厳しい条件ながら、価格を大幅に高めることで商品として成立させました。

 このようにクルマの価格は、人気度を表現する指標でもあります。読者の皆さんが「コスパがいいね、割安だね」と感じた商品は、クルマに限らず高い人気を得ているでしょう。

 その一方で「コスパは悪いけど、思わず買ってしまった」という商品もあると思います。そこに当てはまるのが、センチュリーやクラリティPHEVで、「たとえ割高でも買いたい」と思わせる魅力が必要です。はたしてこの2車種はどう評価されていくのでしょうか。

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