世界で初めてロータリーエンジンの量産化に成功したマツダは、これまで数多くのロータリーエンジン搭載車を販売してきました。そこで、ロータリーエンジン搭載車のなかでも、歴史的なモデルやユニークなモデルを中心に、5車種ピックアップして紹介します。
■マツダが世に出したロータリー搭載車たち
ロータリーエンジンはドイツの技術者F.ヴァンケルによって発明され、同じくドイツの自動車メーカーNSUが実用化しました。
しかし、技術的な難問が多く本格的な量産化はできない状態でした。そこで、1961年にNSUからライセンスを得たマツダが研究を重ね、約5年後に世界初となるロータリーエンジンの量産化に成功します。
これまで多くのロータリーエンジン搭載車を世に送り出してきたマツダですが、そのなかから歴史的なモデルやユニークなモデルを中心に、5車種ピックアップして紹介します。
●コスモスポーツ
1967年、世界初の量産ロータリーエンジン搭載車「コスモスポーツ」が発売されました。
2シータークーペのコスモスポーツは未来を感じさせるような外観で、当時としてはかなり斬新なデザインになっていました。
初期型は491cc×2ローター110馬力の10A型ロータリーエンジンが搭載され、最高速度185km/h、 0-400m加速16.3秒と、スポーツカーにふさわしい性能に。
翌1968年には128馬力にパワーアップされ、最高速度は200km/h、0-400m加速は15.8秒を達成するなど、ロータリーエンジンの性能の高さを世に知らしめます。
コスモスポーツの価格は初期型が148万円、後期型が158万円で、当時の大卒初任給が2万6000円から3万円の時代ですから、相当高額なクルマでした。
ちなみに「帰ってきたウルトラマン」の劇中車に使われたことで、当時の子どもたちにも人気のクルマでした。
●ユーノス コスモ
バブル景気の絶頂期である1990年に、マツダが展開していたブランド「ユーノス」から、2ドアのフラッグシップクーペ「ユーノス コスモ」がデビューします。
ワイドで優雅なデザインのボディに、世界初の3ローターターボエンジンを搭載するなど、大いに話題となりました。
654cc×3ローターの20B型ロータリーエンジンは280馬力を発揮し、トランスミッションは4ATのみで燃費は6.4km/L(10・15モード)。実燃費はさらに悪化していたことから、ユーノス コスモの極悪燃費はいまも語り草になるほどです。
また、ユーノス コスモには世界初となるGPSナビゲーションシステムが搭載(3ローター車に標準装備)されました。いまでは純正品、社外品、スマートフォンのアプリなど当たり前のように普及しているカーナビは、このユーノス コスモから始まったのです。
価格は最上級グレードで530万円と高額で、バブル崩壊、マツダの収益悪化という背景もあって、モデルチェンジすることなく、わずか4年で生産終了に。
その後3ローターは二度と作られることなく、搭載車はユーノス コスモだけと、希少な存在になってしまいました。
●パークウェイロータリー26
より豪華なマイクロバスを求めるニーズに対応して、1972年に新型バス「パークウェイ26」が発売されました。
外観はモダンなスタイルとなっており、室内も快適なシートを配した26人乗り(13人乗りもあり)で、ラジオや3段切り替えの強力ヒーターを標準装備し、ソフトな天井トリムを採用するなど広く高級感のある空間を実現していました。
そして、1974年に世界初のロータリーエンジンを搭載したマイクロバス「パークウェイロータリー26」がラインナップに加わります。
「ルーチェAPグランツーリスモ」と共通の654cc×2ローター13B型低公害ロータリーエンジンは最高出力135馬力を発揮。車重2800kg以上ある巨大な車体を、最高120km/hで走らせることが可能でした。
ロータリーエンジンならではの優れた走行性能、静粛性と低振動による快適性向上と同時に、当時の国内の排出ガス規制値を大幅に下回る優れた環境性能を実現していましたが、やはり燃費はディーゼルに比べると相当悪く、また低速トルクの細さも災いし、生産期間は2年と短命に終わりました。
■激レアなロータリーエンジン搭載車
●ロードペーサー
1970年代、大型セダンを販売していなかったマツダは、オーストラリアの自動車メーカー「ホールデン(GM傘下)」と提携し、同社の「プレミアセダン」にロータリーエンジンを搭載した「ロードペーサー」を1975年に発売しました。
654cc×2ローターの13B型ロータリーエンジンを搭載し、昭和50年排気ガス規制に適合する初の低公害普通乗用車でした。後に排ガス浄化システムの性能が向上して、昭和51年排気ガス規制にも適合しています。
外観のデザインは当時のアメリカ車そのものといったイメージで、他の国産車と比べても大柄でした。
バリエーションはフロントがベンチタイプの6人乗りと、セパレートタイプ5人乗りの2タイプを用意。
スタイリッシュなボディで高級感のあるセダンでしたが販売は低迷し、わずか4年で販売を終了してしまいました。
なぜ大型セダンにロータリーエンジンを搭載したかというと、当時のマツダに高出力なレシプロ(ピストン)エンジンが無かったという単純な理由のようです。
●ロータリーピックアップ
1974年に北米のみで発売された「ロータリーピックアップ」通称REPUは、世界初で唯一のロータリーエンジンを搭載したピックアップトラックです。
北米向けの「Bシリーズ」というピックアップトラックをベースに、654cc×2ローターの13B型ロータリーエンジンを搭載。
ボディも手が加えられ、幅の広いタイヤを装着するため拡大された前後フェンダーに、ロータリーエンジンのローターを模したエンブレムが取り付けられたフロントグリル、丸型のテールライトなどが専用に装備されました。
アメリカでは取得税や保険の額が優遇されているピックアップトラックの人気が高く、各メーカーとも豪華なモデルや、高性能モデルを販売していたので、マツダもその流れでロータリーピックアップをラインナップしたということです。
静かでなめらかでパワフルなロータリーエンジンの良さが認められ、1977年までの累計生産台数は1万5000台ほどに。そのほとんどは1974年に生産されたといいます。
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ロータリーエンジンは昭和に誕生し、平成で「RX-8」に搭載されたのを最後に終焉しました。しかし、すでにマツダから発表されていますが、近い将来、電気自動車に搭載する発電用としてロータリーエンジンが復活します。
スポーツカーにも使うかはまったくの未定ですが、令和の時代にロータリーエンジンが再び日の目を見るという、ロータリーファンにとっては嬉しいニュースではないでしょうか。