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希少な日本車ホットハッチ スズキ「スイフトスポーツ」4代の歴史を見る

くるまのニュース 2019年9月18日 16時10分

5速MTのみの設定でオーディオもレス設定となるなど、徹底してコストを削減しながらも、専用のパワートレイン、専用のサスペンション、リアブレーキの4輪ディスク化や240km/hスケールのスピードメーターなどを採用し、本格的なスポーツモデルとして登場した初代スズキ「スイフトスポーツ」。現行型スイスポまで4代の歴史を振り返ります。

■軽量コンパクトボディにハイパワーエンジンで注目されたスイフトスポーツ

 スズキ「スイフトスポーツ」は、2003年の初代登場から現在まで、4世代16年もの歴史があります。

 日本車ホットハッチ、スイフトスポーツ4代を振り返ります。

●JWRC参戦マシンのデチューン版といえる初代「スイスポ」

 スズキのコンパクトハッチバックである「スイフト」のホットバージョン「スイフトスポーツ」(HT81S型)は、ベースとなったスイフトのマイナーチェンジとあわせて、2003年6月に登場しました。

初代スイフトスポーツ

 ベースは国内には存在しない欧州向けスイフトのボディを架装。剛性面で有利な専用の3ドアハッチバックは、専用ストラットタワーバーを装着し、スポーツ走行にも対応できる高いボディ剛性を獲得していました。

 ボディサイズは全長3620mm×全幅1650mm×全高1525mmで、標準のスイフトに比べ全幅を50mm拡幅し、全高をマイナス15mmローダウンしたことで、ベース車とかなり異なるスポーティな雰囲気を持っていました。

 このスイフトスポーツは、ジュニア世界ラリー選手権(JWRC)に参戦する車両(イグニススーパー1600)にならって作ったモデルでした。

 搭載したパワーユニットはM15A型の1.5リッター直列4気筒DOHCで、JWRC参戦マシーンの1.6リッターユニットのデチューンバージョンだといいます。

 それでも圧縮比アップや鍛造アルミ製ピストンの採用、新たに開発したインテークマニホールド(樹脂製)の採用などで、最高出力115馬力、最大トルク143Nmを発揮。

 930kgという軽い車重に、クロスレシオとした5速MTと組み合わせて、吹き上がりがシャープな回転フィールは高評価を得ました。

 そのほかリアブレーキをディスク化、さらに専用デザインのレカロ製シートを標準装備しながら、きわめてお買い得な119万円(消費税含まず)としていました。

 なお、イグニススーパー1600は、JWRCにおいて一時は上位を占め、そのボディカラーから「イエローバレット(黄色い弾丸)」という異名を得ます。

●小型登録車のための専用設計プラットフォームとなった2代目

 2004年11月、スイフトがフルモデルチェンジします。初代が軽自動車の「Kei」や「ワゴンRプラス」から派生したのに対し、2代目は小型登録車専用ボディ&シャシとして設計したモデルでした。

2代目スイフトスポーツ

 翌2005年9月、ZC31S型「スイフトスポーツ」が生まれます。専用開発された高剛性プラットフォームが功を奏し、スイフトスポーツは大きくレベルアップします。

 ボディは5ドアハッチバックとして使い勝手を上げ、トランスミッションは5速MTに加えて4速ATを設定するなど、購買層の拡大につなげたモデルとして市場に受けいれられます。

 搭載エンジンは排気量を拡大した1.6リッター直列4気筒のM16A型エンジンで、ラリーマシンのようなハイチューンではありませんが、現行モデルまで続く2本出し専用マフラーを装着するためにフロア形状まで専用設計とする力の入れようでした。

 そのM16A型エンジンの最高出力は125馬力、最大トルク148Nmとなりました。

 また、足まわりもリファインされ、モンロー製のダンパーの新採用、ベースの4穴ハブから高剛性5穴ハブへの換装、4輪ディスクブレーキの採用などで、基本性能の底上げを図りました。

 2007年5月の一部改良では、スポーツ走行時のシフトアップでパワーバンドを外れてしまうという声を反映し、レブリミットの引き上げやMTのクロスレシオ化などを実施。スポーツモデルとしてアップデートしています。

■「ホットハッチ」として不動の地位 そして現行型は3ナンバーサイズに

●6速MTとなり2代目から正常進化した3代目

 スイフトスポーツは2011年12月に3代目(ZC32S型)へとフルモデルチェンジします。

3代目スイフトスポーツ

ボディサイズは若干拡大しましたが、超高張力鋼板を積極的に使用し、ホイールやタイヤ、ブレーキなど徹底的な軽量化により、先代比で約10kg軽量化しました。足元も専用の17インチアルミホイールに195/45R17タイヤを装着して一層スポーツ性を高めています。

 搭載エンジンは先代と同じくM16A型を踏襲しますが、出力は136馬力、160Nmに向上しました。組み合わせるMTは5速から6速へバージョンアップをはたし、2速から5速ギアをクロスレシオとしました。

 一方、2ペダル仕様は、4速ATからパドルシフトによる7速マニュアルモード付きCVTへ変更しています。

●ダウンサイジングターボに換装された3ナンバーモデルの4代目

 日本での発売に先駆けて2017年9月12日、フランクフルトモーターショーでワールドプレミアされた4代目(ZC33S型)スイフトスポーツは大きく変貌します。

4代目現行型スイフトスポーツ

 まずエンジンが1.6リッターNAからダウンサイジングした1.4リッターターボ「K14C型」に変更されます。専用チューニングを受け、最高出力140馬力、最大トルク230Nmと歴代最高となりました。

 トランスミッションは、販売の30%を占めていたという2ペダルの変速機がCVTから6速ATに変更されました。6速MTは、3速をダブルコーンシンクロ化するなどの改良を受けて健在です。
 
 驚くべきはボディサイズで、全長3890mm×全幅1735mm×全高1500mmと、ついに3ナンバーサイズの車幅となりワイドトレッドになりました。しかし、高剛性で軽量な新プラットフォームの採用により、先代比70kgもの軽量化を実現しました。

 サスペンション形式やモンロー製ダンパーの採用は従来どおりですが、ワイドトレッドに対応するため、多くの専用パーツを開発。ブレーキも大容量になり、増大したパワーに対応しています。
 
 先進安全運転支援装備の充実も見逃せません。単眼カメラとレーザーレーダー(赤外線レーダー)で前方の歩行者や車を検知して衝突時の被害を軽減する「デュアルセンサーブレーキサポート」をオプション設定し、マニュアルトランスミッション車にもアダプティブクルーズコントロールが備わりました。車両価格は183万6000円から205万9560円(消費税込)です。

※ ※ ※

 歴代スイフトスポーツの魅力は、軽量で、サスペンションもボディもガッシリしていること、そしてその価格です。

 3代目までの美点ではあるものの、しばしば硬すぎる乗り心地が指摘されていましたが、現行の4代目はその点でも改善、進化していて、コンパクトなファミリーカーとしても使える快適性も備えています。

 スポーツ性能は高く、価格はなるべく安いクルマが欲しいという若者だけでなく、子供が独立して小さめのクルマへの乗り換えを検討しながら、いま一度スポーツ走行にチャレンジしてみたい中高年にも適したクルマではないでしょうか。

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