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買えなくなると欲しくなる!? 「エスティマ」や「パジェロ」など販売終了すると人気復活する訳

くるまのニュース 2019年11月13日 7時10分

2019年は、トヨタ「エスティマ」「マークX」や三菱「パジェロ」など、かつて主力だった車種の販売終了が多い年です。販売の低迷から販売終了につながるケースが多いのですが、一方で終了がアナウンスされると販売台数が伸びる傾向があるようです。それは一体なぜなのでしょうか。

■人気低迷で販売終了するのに、なくなるというと人気が出る!?

 2019年は、メジャーな車種の終了が相次ぎました。三菱「パジェロ」(日本向けの生産のみ終了)、トヨタ「エスティマ」「マークX」が生産を終え、スバル「WRX STI」や日産「キューブ」も終了することになっています

 車種ラインナップの再編のため、基準が引き上げられた衝突安全性に対応できなくなった、または対応するための改良にかかる費用を回収できるほどの販売台数が見込めないなど、販売が終了される理由はさまざまありますが、いずれも共通するのはフルモデルチェンジがしばらくおこなわれていなかった車種だということです。

 たとえばマークXがフルモデルチェンジしたのは2009年10月、キューブは2008年11月、さらにパジェロやエスティマの登場は2006年で13年間も世代が変わらないまま販売されていました。

 WRX STIに関しては搭載されるエンジンの生産終了にともない受注が終わるのですが、ほかのモデルが生産終了する理由は販売台数の減少です。

 人気モデルであればフルモデルチェンジしますが、販売終了する多くの車種はそこまでの人気回復が見込めないことが背景にあります。

 ところが、生産を終了する一部の車種の販売データを見ると、興味深い変化があります。

 日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表する販売ランキングによると、2019年のエスティマの販売台数は、4月が591台(対前年度比88.6%)、5月が694台(93.3%)と、対前年度比でマイナスが続いていました。

 しかし6月には970台(110.4%)とプラスに転じ、7月に851台(136.2%)、8月は627台(122.5%)を販売。4月から9月の販売台数は4702台で、対前年比114%となっています。

 つまり、前年よりも売れていたのです。もうすぐ生産終了するというのに、なぜエスティマの人気は盛り返したのでしょうか。

 その理由は「駆け込み需要」です。エスティマを扱う販売店のスタッフは、次のようにコメントしています。

「決して多いわけではありませんが、生産が終わると知って新車を購入されるお客さまもいらっしゃいます。エスティマの場合は、ずっと乗り継いでいただいているお客さまで、『デザインが気にいっているから、新車が買えなくなるのなら買えるうちに』というパターンがありました」

 2019年8月に国内向けの生産を終了したパジェロは、2018年度(2018年4月から2019年3月)の販売台数は年間で651台でした。

 しかし、2019年4月に「8月で日本向けパジェロの生産を終了する」と発表されると販売台数が増え、2019年4月から10月までの半年で合計834台を販売。明らかに数が増えています。

 三菱自動車の広報部は、「最終モデルとして限定700台を用意した『ファイナルエディション』も販売店での在庫がわずかに残っているのみでほぼ完売しています。日本向け生産の終了による駆け込み需要はあったと考えられます」といいます。

 パジェロは日本向けの生産が終了した一方で、次のモデルがいつ国内市場に登場するのか明らかになっていません。そこでファンは「新車で手に入るうちに買っておこう」と購入したケースが多いようです。

■生産終了が発表されると爆発的に売れるクルマも存在

 駆け込み需要の傾向がさらに顕著なのがWRX STIです。同モデルに搭載されている「EJ20型」と呼ばれるエンジンは約30年の歴史を持つレジェンド的なパワーユニットですが、ついに生産が終わるのです。

 WRXは、自販連の販売ランキングで50位圏外が続いていました。しかし2019年8月には663台を販売して47位にランクインしています。

スバル「WRX STI EJ20 ファイナルエディション 」

 販売台数自体は目を見張るものではありませんが、対前年度比172.7%というからとんでもない数字です。翌9月には1047台(159.4%)も販売しました。

 自販連が発表するWRXの販売台数は、「WRX STI」と「WRX S4」を合算した数値になります。スバル広報部によると「通常はS4の販売台数の方がSTIより多いのですが、8月以降はSTIの方が多く売れています。STIが終了することによる駆け込み需要の影響があるようです」といいます。

 さらに、WRX STIの最後を飾る「EJ20 ファイナルエディション」を555台限定として用意し、事前申し込みを受け付けたところ、販売台数を大きく超える約1万3000件もの申し込みがありました。約23倍の倍率に膨れ上がってしまったのだから驚きです。

「EJ20 ファイナルエディション」は“バランスドエンジン”と呼ばれる通常モデルとは異なり特別に調律されたエンジンが搭載されているのがポイントで、さらにBBS製ホイールなどが標準採用されていることを考えると452万1000円からという価格はお買い得といえるでしょう。

「生産終了のアナウンスとともに爆発的に受注が入る車種があります。たとえば『R1』やスバル製の『サンバー』がそうでした。サンバーについては、あまりに注文が殺到して生産が追い付かなくなり、受注終了のタイミングを当初のアナウンスより早めざるを得なかったほどです。

 今回のWRX STIは、『ファイナルエディション』の抽選に外れた人も通常モデルであれば購入できるタイミングになっています。しかし、想定している以上に注文が集中するとオーダーストップのタイミングを早める可能性もゼロではありません」(スバル広報部)

 ファイナルエディションなど最後を記念するモデルは、買おうかどうか迷っている人の背中を押す役割があるようです。なかでも、今回のWRX STIファイナルエディションのように、標準仕様に比べて性能アップが図られているモデルに関してはさらに人気が高まる傾向にあるでしょう。

 たとえば2015年に1000台限定で販売された三菱「ランサーエボリューション ファイナルエディション」や、2002年に同じく1000台限定で販売された日産「スカイランGT-R VスペックII Nur/Mスペック Nur」もエンジン出力をはじめ走行性能が標準仕様より高められており、すぐに完売しました。

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 鉄道の世界では、役目を終える車両や廃線になる路線を乗りに行くファンがとても多く、運行最終日には多くの人が駆けつけるそうです。それと同様にクルマでも、「買えるうちに買っておく」というユーザーが、ある程度存在すると考えていいでしょう。

 かつての人気車やビッグネームになるほどその傾向は強まり、「ファイナルエディション」などを設定するとさらに注目度が高まる傾向にあるといえそうです。

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