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まるでガンダム? ド派手「ハイエース」が減少!? バニングカーが減少した理由

くるまのニュース 2020年3月3日 7時10分

かつてハイエースなどのカスタム手法のひとつとして注目を集めたド派手な「バニングカー」。最近では、その姿を見かける機会は減りましたが、なぜ減少しているのでしょうか。

■ド派手なハイエースカスタム「バニングカー」は何故消えた?

 ひと昔前に、一世を風靡した「バニングカー」というカスタム手法があります。最近では見かけなくなりましたが、当時はド派手な外観デザインが話題となり、注目を集める存在でした。なぜ、最近では見かける機会が減ったのでしょうか。

 バニングカーは1960年代頃にアメリカの西海岸で発祥したカスタム文化とされています。大型のバンの居住性を向上させるためのカスタムとして、若者の間で流行しました。

 外装はいたって普通でも、室内はキャンピングカーさながらの装備が搭載されており、自分なりの居住空間を作り出し、それを見せ合うのが当時のスタイルだったようです。

 その後、内装だけではなく外装のカスタムにも力を入れ始めたバニング文化は、1970年代から1980年代になり日本にも持ち込まれることとなります。

 日本でのバニングカーは本場アメリカとのスタイルに違いがあり、いかに派手にカスタムされているかが重視される独自の文化に変化していきました。

 大型の延長バンパー、派手な装飾、といったスタイルが主流となり、走るよりも「魅せる」カスタムが人気を集めます。

 アメリカではダッジ「A100」、ダッジ「トレーズマン」、シボレー「アストロ」シボレー「シェビーバン」がベース車両として人気がありましたが、日本においては比較的安価でカスタムがしやすいトヨタ「ハイエース」や日産「キャラバン」などの、商用バンをカスタムするのが主流となっていたようです。

 なかには「スムージング」と呼ばれる、フロントの窓以外をパテなどで埋め、ボディー全面にキャラクターや有名人などのペイントを施すといった、大胆なカスタム方法も存在しました。

 内装はシートや内張りを張り替え、革素材やモケットを使用してオリジナルの空間を演出することが醍醐味となっていたようです。

 また、音響にもこだわりが強く、重低音や大音量を繰り出す大型のウーハーや無数のスピーカーを配置するカスタムも流行していたのです。

 さらには、当時人気だったアーティストをエアブラシで描いたバニングカーも一時期、ライブ会場の周辺で見かけることもありました。

 しかし、そんなバニングカー文化も2000年代に突入すると同時に衰退の一途をたどることになるのです。

■法規制がバニングカー減少の理由?

 バニングカーが減少傾向にある、最大の理由には「8ナンバー規制」が関係しています。

 2001年の制度改正以前の8ナンバーは、緊急車両やキャンピングカーや街宣車といった、特殊車両専用のナンバーでした。

最近のハイエースカスタムは、アウトドアやオフロード系の傾向が強いといいます

 8ナンバーに分類されれば車体サイズが変更可能となり、範囲内であればバンパーの延長や大型ウィングの取付けも許されていたため、堂々とド派手なカスタムができました。

 走行するのも不自由なほどド派手なカスタムでありながら、改造自体は合法といった現在では考えにくい状態だったのです。

 また、8ナンバーは、税金や保険料などの維持費が安くなるといった事情もあり、節約の意味でも取得する人が増加します。

 やがて、1990年代には節税などの目的で8ナンバーの不正登録が増え、2001年に規制が強化されます。それまでは、登録時だけ必要な設備を搭載して検査を通し、検査後でそれらを取り外すといった方法で8ナンバーを取得することが可能でしたが、法改正後は運輸支局や自動車検査登録事務所に直接持ち込まなければならなくなりました。

 また、登録に必要な設備は簡単に取り外しができない構造でなければいけないため、取得するには高額な費用が必要となりました。

 そのため、8ナンバーを取得するハードルがあがり、事実上は取得するのが難しくなってしまったことが、バニングカーが衰退してしまった要因といわれています。

 いまでもバニングカーを販売する中古車販売店スタッフは以下のように話します。

――今でもバニングカーユーザーはいるのでしょうか

 規制が強化された以前に8ナンバーを取得したクルマであれば、いまも乗っている人はいます。しかし、年が経つごとに各パーツが劣化するため、ただでさえ少ないバニングカーファンも、どんどん減っています。

――バニングカー乗りたちは、今はどうしているのでしょうか。

 現在は、カスタムメーカーが販売しているキャンピングカー仕様のハイエースが人気です。見た目は普通のバンですが、内装に革張りのソファやウッド調の家具を配置し、オリジナリティを出すことができます。

 また、かつてのバニングカー乗りたちは、今はもう家族を持つことも多い「いい歳」です。まだ乗れるバニングを持っていても、奥さんや子どもたちのことを考えて、見た目が普通のクルマに乗り換える人は多いですね。

※ ※ ※

 8ナンバーの規制強化は、バニングカーだけがその原因ともいい切れないため、「不運」な終わり方だったといえます。痛車の一種として海外でも話題となった日本独自の文化ですが、絶滅を迎えてしまう日も近いかもしれません。

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