日本には、「こんなところ走れるの?」とちょっと驚かされるような道路が存在しており、砂浜を走れる場所や、川が増水したときに沈んでしまう橋などがあります。果たしてどのような道路なのでしょうか。
■バスでも走れる砂浜「千里浜なぎさドライブウェイ」とは?
クルマを運転していると「こんなところ走っていいの?」というような道路や場所を見かけることがあります。
その代表的な例が、石川県にある「千里浜なぎさドライブウェイ」ではないでしょうか。
羽咋市千里浜町から羽咋郡宝達志水町今浜までの約8kmの観光道路で、日本で唯一となるクルマで走ることができる砂浜です。
砂浜に少しだけ乗り入れることができる海岸はありますが、基本的には4WD車でないとスタックしてしまうようなところがほとんどです。
しかし、千里浜なぎさドライブウェイは普通の乗用車やバイクだけでなく、バスなどの大型車も砂の上を走れるといいます。
クルマがスタックしない理由について、羽咋市の商工観光課では以下のように説明します。
「千里浜の砂はきめが細かく、海水を含むと砂が引き締まるため、砂浜でも自動車やバス、自転車などで走ることができるのです。ただ、白っぽくなっている部分は、タイヤがはまりやすいのでご注意ください」
きらめく白波を横目に潮風を頬に受けながら海岸線を走れば気分は爽快。夕方には空と海の色が、青から紫、そしてオレンジから深い赤へとダイナミックに変化します。
あたりは国定公園に指定される景勝地。そのあまりの美しさに気を取られ、サラサラした白い砂にタイヤが埋まってしまったり、ハンドルを取られて事故があったりといったトラブルはないのでしょうか。
「目立ったトラブルはとくにありませんが、天候や波などにより通行規制がかかって走行することができない場合があります。『明日は走行できますか?』といったお問い合わせをいただくことがありますが、当日になってみないと走れるかどうかは判断できないのです」
昨今は砂浜の浸食が激しく海岸線が毎年1mずつ後退しているといいます。侵食を食い止め、美しい砂浜を後世に伝えるため、そしていつまでも千里浜なぎさドライブウェイを走行できるよう、「千里浜再生プロジェクト」と題して官民一体でイベントなどさまざまな取り組みをおこなっているそうです。
千里浜なぎさドライブウェイのある羽咋市は「UFOのまち」として知られるだけでなく、羽咋駅前に「ジャーン!」や「ゴゴゴゴゴゴ」などの擬音を模したオブジェがあることから、近年は「ジョジョの奇妙な冒険」の世界観を表せるインスタ映えスポットとしても評判です。
また、柴垣天然岩ガキや鹿島路りんご、のとしし(イノシシ肉)といったグルメや温泉も楽しめるとあって、観光地として注目を集めています。
■ぶつかりそう!? 車高が低くないと通れないガード下
千里浜なぎさドライブウェイのほかにも、日本には「ここ走っていいの?」といいたくなるようなスポットがもたくさんあります。そのなかから興味深いスポットを紹介します。
●高輪橋架道橋下区道(東京都)
JRの田町駅から品川駅の間にある高輪橋架道橋の下を通る道で、極端に天井が低いことで有名なスポットです。
その高さはわずか1.5m。ごく普通のセダンでもギリギリで、立体駐車場に収まる、背の低いワゴンやミニバンでも通ることはできません。
セダンタイプのタクシーでは、天井にある行灯(社名表示灯)がヒットしてしまうこともなきにしもあらずで、「ちょうちん殺しのガード」と呼ばれています。
歩行者も通行できますが、成人男性の平均身長より低いため、屈みながら歩かなければなりません。クルマで通る際も思わず頭を下げてしまい、背の低いクルマでも通れるか一瞬不安になるほどです。
高輪橋架道橋下区道は、長い間親しまれてきた珍スポットですが、新駅「高輪ゲートウェイ」開業に伴う再開発により整備される予定になっており、東京でいちばん低いガード下は姿を消そうとしています。
●四万十川の沈下橋(高知県)
沈下橋とは、川が増水したときに水面下に沈んでしまう橋のことです。潜水橋や潜り橋と呼ばれることもあり、日本全国で400本以上もの沈下橋が存在します。
沈下橋がとくに多いのは、高知県に流れる四万十川とその支流で、その数は47にも及びます。なお、高知県では1993年に沈下橋を生活文化遺産ととらえ保存する方針を決定しました。
沈下橋の特徴として挙げられるのが、河川の増水で水面下に沈んでいる際に流木などが引っかからないように、欄干がない、あったとしても簡素な欄干が設置されていることです。
クルマで通れる沈下橋もありますが、ハンドル操作を誤れば簡単に川に落ちてしまう構造であるので通行するには少し勇気がいるかもしれません。なかには車両の通行が許されている橋もあります。
有名なのは、四万十川最下流で最長の沈下橋である「今成橋(四万十市佐田)」や、人気映画「釣りバカ日誌」のロケ地にもなった「勝間橋(四万十市勝間)」です。
沈下橋はあくまでも地元の生活道路のために設置されているものであって、大型連休など混雑が予想される時期はクルマでの通行は控えるよう四万十市観光協会が呼びかけています。
近隣の駐車場に停め、歩いて橋と絶景を満喫するのが良さそうです。
●江ノ電の併用軌道(神奈川県)
「併用軌道」とは、道路上に敷設された軌道のことを指します。簡単にいうと、一般的な線路のように専用の敷地があるのではなく、道路と線路が同じ平面に併設されている状態です。
例外はありますが、路面電車の線路がこれにあたり、電車のすぐそば、あるいは線路の上をクルマが走行できるのが特徴です。
普段は踏切以外の場所で線路を跨ぐことはあまりないので、ちょっとドキドキしてしまう道路といえるのではないでしょうか。
「都電荒川線」や「広島電鉄」、「札幌市交通局」など数多くの路面電車が道路を走っていますが、なかでも珍しいのが「江ノ島電鉄」の腰越駅付近にある鉄道道路併用橋「神戸橋(ごうどばし)」です。
これは鉄道と道路の走行域が共用の橋で、日本で現在するのは唯一ここだけ。江ノ島や鎌倉観光のついでに、ちょっと走ってみたくなる橋です。
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日本の道路の総延長は127万9511.9km(道路統計年報2018)もあり、今回紹介したところ以外にも、まだまだたくさんの「こんなところ走っていいの?」という場所が存在します。
いろいろと探してみて、観光の目的のひとつにするのも面白いかもしれません。