2019年の登録車販売台数では、トヨタ「プリウス」が1位に輝きました。そして、現在ではトヨタ「ライズ」が破竹の勢いで売れています。そんななか、スズキのSUVにはプリウス並に売れ、ライズと競合するSUVモデルが存在するといいます。どのようなモデルなのでしょうか。
■プリウス並に売れているスズキのSUVってどんなクルマ?
スズキには、2019年にもっとも売れた登録車のトヨタ「プリウス」並に好調なSUVがあるといいます。どのようなクルマなのでしょうか。
スズキが国内販売しているSUV「エスクード」は、欧州市場で「ビターラ」という車名で販売されています。そして、インド市場では「ビターラ ブレッツァ」というSUVが存在します。
この、ビターラ ブレッツァはエスクードとは違うインド専用車です。このモデルは、スズキにとってきわめて重要な存在となり、デビューから4年弱で累計50万台以上を販売した大ヒット車となります。1年で約12万5000台も販売している計算となります。
2019年のプリウスは、国内で12万5587台を記録していることから、ビターラ ブレッツァはプリウスと同じほど売れている人気車だといえるのです。
さらに、インドのコンパクトSUV市場に占めるシェアはなんと44.1%(2019年春時点)。つまり10台のうち4台以上がこのビターラ ブレッツァなのです。
日本のSUV市場ではトヨタ「ライズ」とダイハツ「ロッキー」が爆売れ中ですが、同様にインドでは驚異的な人気がこのビターラ ブレッツァに集中しているということになります。
しかも、その状態がデビュー直後だけではなく、登場から約4年が経過した今も継続しているのです。
パワートレインは1.5リッターの自然吸気ガソリンエンジン。トランスミッションは5速MTと4速ATが設定されていて、後者はマイルドハイブリッドを組み合わせています。
実は、ライズ/ロッキーとこのビターラ ブレッツァにはふたつの共通点があります。
ひとつは車体サイズで、どちらも全長3995mmと4mを切るコンパクトさとなり、全幅はライズ/ロッキーの1695mmに対してビターラ ブレッツァは1790mmとワイドですが、これは日本とインドのニーズの違いといえるでしょう。
もうひとつは、いずれもドメスティックな商品だということ。ライズ/ロッキーは日本市場だけを見て開発されたモデルで、開発と製造をおこなうダイハツの広報部は「現時点では日本専用車で海外展開の予定はありません」と説明します。
同様にビターラ ブレッツァもインド市場専用モデルで、スズキは「現地の嗜好やニーズをしっかりと汲み取り、現地法人であるマルチスズキがデザインや設計を主導し、日本側とも協力しながら開発しました」といいます。
販売する国を1か国に絞り、その国のユーザーが好む要素をしっかりと反映したことが両者に共通する大ヒットの大きな要因といえるでしょう。
■SUV人気の日本への導入はあるのか…
ビターラ ブレッツァのインドでの大人気の理由はさらに、スズキのインド法人マルチスズキが現地での乗用車市場シェアが50%を超える定番ブランドであることが挙げられます。
ほかのインドメーカーやマルチスズキに次ぐシェアを持っている韓国の「現代自動車」に比べて故障が少ないクルマというイメージが浸透していることや、そしてマルチスズキの販売網が充実していることなども好調な要因です。
いま、日本ではコンパクトSUVの人気が盛り上がっています。そのため、ビターラ ブレッツァを日本でも販売すればいいと思われがちですが、話はそう簡単ではないでしょう。
日本のコンパクトカーは、5ナンバー車を指しますが、ビターラ ブレッツァは全幅が5ナンバー枠に収まっていないので、3ナンバー車としての登録となり、狭い道が多い日本でのニーズにマッチしません。
またビターラ ブレッツァは、インド専売として作られているので、日本とは異なる安全基準で設計されているほか、日本で求められる先進安全機能も備わっていません。日本仕様はそう簡単には作れないのです。
ちなみに、インドで見かける乗用車の多くがビターラ ブレッツァのように全長4m未満のクルマです。
その理由は現地の小型車優遇政策にあり、全長4m未満であれば新車購入時にかかる税金が4mを超えるモデルに比べて大幅に少なく済むからです。
インドでは、その対象となる小型車が乗用車市場の約6割を占めるほど。日本での軽自動車のような感覚と考えればわかりやすいでしょう。