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コロナ後の景気対策案に浮上した高速道路無料化。もういちど過去の道路政策を振り返る

くるまのニュース 2020年4月18日 8時30分

終わりの見えない新型コロナウイルス感染拡大。日本でも緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大するなど対策に追われている。そうしたなか、コロナ終息後の景気対策として政府内で浮上しているといわれている案のひとつが「高速道路無料化」だ。ドライバーにとっては歓迎すべきものだが、実際にどんな影響があるのか、過去の政策を振り返ってみた。

■当時政権与党だった民主党のマニュフェストが「高速道路無料化」

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の1年延期に始まり、各種スポーツイベントも相次いで中止となっている。自動車関連でいうと、国内自動車メーカーの多くが工場稼働を停止しており、モータースポーツでも開催が延期されるなど今後が見通せない状況が続く。

 政府は特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大。生活にも大きな影響が出ているのが現状だ。

 そんななか一部の新聞報道で、感染の拡がりが終息した後の景気対策として、政府が高速道路の通行料金を無料化する案を検討している、というニュースが伝えられた。

 公式な発表がないので、今後それが実現されるのかは不明だが、われわれドライバーにとって高速道路の無料化は歓迎すべきことだろう。

※ ※ ※

 高速道路の通行料金が無料になる政策といえば、およそ10年前、当時政権与党だった民主党がマニフェストで掲げた「高速道路無料化」が思い出される。

 当時の政策内容を振り返ってみると、すべての車両を対象に高速道路の通行料金を無料にする、というものだった。

 無料化の実施にあたり、地域経済の効果や渋滞と環境への影響を把握するために『高速道路無料化社会実験計画』が実施され、国費を充当することで、2010年6月から社会実験がスタートしている。

 これにより無料化された区間の交通量が増える一方で、並行する一般道の交通量が減少するなど一定の影響があったことは報告されている。

 しかし、当初から予算編成が難航したことで、日本の大動脈である東名高速道路や名神高速道路などは無料化区間に含まれず、実施されたエリアも地方を中心に全体の2割にとどまる50区間(約1600km)のみだった。

 さらに無料化の費用に税金が使われていることで、負担の不公平性や高速道路の大幅な渋滞増加、交通量の増加に伴い二酸化炭素排出量が増えたことなど、看過できない問題も指摘されていた。

 その後、2011年3月に東日本大震災が発生したため、復旧や復興のために国費が必要となることから、同年6月に社会実験は終了となった。

 この社会実験に対する総括は、2018年7月に発表された高速道路に関する調査・研究機関である財団法人・高速道路調査会によるレポート「高速道路の料金制度に関する研究」で報告されている。

 このレポートによると、将来の高速道路のあるべき料金制度として、

●高速道路建設のための債務を2050年までに一旦完済(償還満了) 
●建設のための債務返済後も高速道路は通行料金を下げたうえで有料での運営を続ける 
●高速道路を利用する人が通行料金を負担する 
●高速道路ネットワーク維持とメンテナンスのための財源を確保

 という提案がなされている。

■リーマンショックに対する景気対策としておこなわれた「高速道路休日1000円」

 ところでもうひとつ、高速道路の通行料金で思い出す政策があるだろう。それは「休日1000円」だ。

国土交通省がまとめた「高速道路休日1000円の検証」のデータによると、当時「休日1000円」をおこなうことによる観光消費の経済効果は年間約8000億円と試算されていた

 これは民主党が政権を取る前の2008年秋、アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことによる世界規模の金融危機「リーマンショック」に対する景気対策として、当時与党だった自民党が実施したもの。

 その内容は、土日祝日の休日、高速道路や自動車専用道路の通行料金を、ETC搭載車に限り普通車や軽自動車、バイクも含め距離71km以上(軽自動車は89km以上)は一律、上限1000円で通行可能とした政策だった。休日だけでなく、前日または翌日が休日となる平日や、お盆、年末年始の平日にも適用されていた。

 これは2009年3月から2011年6月までの期限付きで実施されたが、この政策も振り返ってみよう。

 国土交通省が実施終了直後の2011年7月に発表した内容によると、

●直接的な観光経済効果は年間約3600億円。間接的な効果を含めた経済効果は年間で約8000億円と試算
●観光やレジャー・帰省などで国内旅行に出かけた回数は前年度と比べて、日帰り旅行で1.3倍、宿泊旅行では1.2倍に増加。
●都道府県別に見ると、東北や四国エリアで観光客数が増加。とくに首都圏から遠方のエリアへの利用台数が大幅に増加した。実施した2009年と実施前の2008年を比較すると、GW期間だけで1日あたり5000台以上も増加したエリアが出たほか、通常の休日でも同様の台数を記録したエリアが複数箇所出ている。

 結論としては地域活性化に経済効果があったことが確認されている。

 だが一方で、対象となった主要高速道路では実施前の約3倍という激しい渋滞が発生したことや、高速バスやフェリーなどの乗客が減少するといった、他の交通機関への影響があったことも指摘されている。

 もし「高速無料化」や「休日1000円」などが実施された場合、大規模渋滞や他の事業者への影響も無視できるものではないが、コロナウイルス感染拡大の影響で地方の観光業界を中心に大打撃を受けている現状、一刻も早く感染拡大を終息させて、景気対策の起爆剤として期待したいものだ。

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