ドラマや映画では、軽トラの荷台に人を乗せて走っている姿をよく見かけます。しかし、現実では転落事故が起こる可能性もあり、決して安全とはいえません。荷台に人を乗せて軽トラを走らせる行為は、道路交通法に引っかかってしまうのでしょうか。
■軽トラの荷台に人を乗せて走る行為は違法?合法?
軽トラの荷台に人を乗せて走る行為は、原則として違反です。道路交通法の第五十五条には、以下の記載があります。
「車両の運転者は、当該車両の乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させ、又は乗車若しくは積載のために設備された場所以外の場所に積載して車両を運転してはならない」
過去には徳島県で、保育士と園児を荷台に乗せて走る軽トラックが目撃され、地域全体で問題となった事例がありました。
目撃者の証言によると、荷台には園児6人、保育士ひとりを乗せており、数百メートルを走行していたといいます。
さらに、その前年にも荷台に園児を乗せた軽トラックの姿が確認されており、地域住民からは「園児が荷台から落ちたら大怪我をする」「園児たちの命にかかわる危険な行為をしていて、信じられない」など非難の声が上がりました。
しかしながら、道路交通法の第五十五条の、先述した部分に続くただし書きでは、荷台に人を乗せてもいいケースが記されています。
同条の続きは、以下の通りです。
「ただし、もっぱら貨物を運搬する構造の自動車(以下次条及び第五十七条において「貨物自動車」という。)で貨物を積載しているものにあっては、当該貨物を看守するため必要な最小限度の人員をその荷台に乗車させて運転することができる」
つまり、基本的に人が乗車できる場所は座席のみですが、「荷物を監視する目的」であれば荷台に人を乗せても問題無いとのことです。
なお、荷台に乗れる具体的な人数の指示はないものの、必要最小限と記されている事から、ひとりからふたり程度だと考えられるでしょう。
荷台へ人を乗せられるケースは他にも存在します。
道路交通法第五十六条には、以下の記載があります。
「車両の運転者は、当該車両の出発地を管轄する警察署長(以下第五十八条までにおいて「出発地警察署長」という。)が当該車両の構造又は道路若しくは交通の状況により支障がないと認めて積載の場所を指定して許可をしたときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該車両の乗車又は積載のために設備された場所以外の場所で指定された場所に積載して車両を運転することができる」
この条例によれば、各県警からの許可を得ることができれば、荷台に人を乗せることができることになりますが、その用途は主に、祭礼行事や選挙活動などが挙げられます。
■荷台に乗るのは危険!過去には転落事故も
2020年5月7日、神奈川県内で軽トラの荷台に乗っていた少女が転落し、怪我を負う事故が起きました。
事故の内容は、トラックが住宅敷地内を走っていたところ、荷台に乗っていた少女が3.6メートル下の道路に転落したというものです。
また、荷台に乗っていた少女だけでなく、運転していた70歳の女性も怪我をしたものの、命に別状はなかたようです。
公道ではなかったため交通違反とはなりませんでしたが、少女は重傷となっています。
荷台は身体を固定することができないため、万が一の場合は身を投げ出されてしまいます。必要不可欠な場合以外は、絶対に人を乗せないようにしましょう。
また、過去の事例では、軽トラックの荷台に乗っていた中学生が死亡してしまった事故もあります。
2018年、鳥取県内を走る軽トラックが縁石に衝突し、荷台に乗っていた14歳の男子中学生が身を投げ出され死亡しました。
この時、運転手は同様に14歳の少年であり、助手席には15歳の少年が乗っていたと報じられています。
軽トラックは盗難車であったため、2人の少年は窃盗および無免許過失運転致死、道路交通法違反などの罪で逮捕されました。
このように、軽トラックの荷台に乗る行為は、一歩間違えると死亡事故にも繋がりかねません。
やむを得ず荷台に人を乗せる際は、まず人数の限度を守りましょう。人数が増えれば落下事故時のリスクも高くなります。
また、トラブルを起こさないためにも、荷台に人を乗せて走るときは走行速度を調整しつつ、ハンドルやブレーキ操作に注意。デコボコ道を避けるなど、経路への配慮も忘れずに心がけましょう。