ホンダのヒンジドアミニバン「ジェイド」が2020年7月で生産終了となります。かつては、ホンダ「オデッセイ」や「ストリーム」、トヨタ「ウィッシュ」などヒンジドアを設定したミニバンが続々と姿を消す背景とはなんなのでしょうか。
■ヒンジドアミニバンが姿を消したそのワケ
SUV人気に押されているものの、日本ではしっかり根付いたミニバン市場。ホンダ「オデッセイ」や「ストリーム」、トヨタ「ウィッシュ」など一時は隆盛を極めた乗用車タイプのヒンジ式ドアを持つ3列シートミニバン、今や絶滅危惧種という雰囲気です。なぜヒンジドアのミニバンは急激に人気がなくなってしまったのでしょうか。
本家であるオデッセイ、いまはスライドドアになってしまいましたし、ストリームの後継にあたる「ジェイド」も2020年7月に生産中止となりました。
スバルも「エクシーガ」から名前を変え生き延びていた「クロスオーバー7」まで生産中止。いまやヒンジドアで3列シートを備えるミニバンは、ミニバンと呼んでいいのか難しいですが、トヨタ「プリウスα」だけになってしまいました。
なぜスライドドア以外のミニバンが姿を消していくのでしょうか。簡単にいってしまえば「売れないから」にほかならないからです。
ミニバンを買うユーザー層の多くは乳児から幼児を持つ子育て世代。チャイルドシートが必要な年齢だと、大きく開くドアのタイプは狭い駐車場だと乗り降りに苦労してしまう。隣のクルマにうっかりドアパンチでもしようものならトラブルです。
今回、ジェイドの生産終了を決めたホンダも、「各市場に投入する車種の集中と選択を進めていく上で、ジェイドは終了となりました。結果的に、日本市場で残った弊社のミニバンは、フリード、ステップワゴン、オデッセイとすべてスライドドア車のみとなってしまいました」と話します。
加えて、ユーザー側にもスライドドアの方が便利だし上等というイメージがあるようです。
実際、軽自動車を見てみると、スライドドアモデルは当たり前のアイテムになってます。
軽自動車ですらボタンひとつで開閉出来る電動スライド式が普及しているのに、普通車である白ナンバーのクルマで“人力”を必要とするドアというのも寂しいということなんだと思います。
ただスライドドアにも弱点や課題なども多いです。まずはコスト面。
世界的な規模で考えたらスライドドアは特殊な存在。ガラパゴス的になってしまっており、結果的に生産台数が限られる日本専用車になっています。
だからこそ日産「セレナ」もトヨタ「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」もホンダ「ステップワゴン」も、重くて性能的に厳しい旧式なプラットフォームを改良しながら使い続けています。
ふたつ目が車重です。スライドドアは非常に重く、それを左右に付けるとなると100kg近くになります(初期型ステップワゴンは左側にしかスライドドアを付けなかった)。
今や厳しい燃費規制をクリアしなければならず、1g単位で軽量化努力をしてます。自動車メーカーからすれば、なるべくスライドドア仕様を減らしていきたいことだと思います。
前述の通り、自動車メーカーからすれば、スライドドア車は「本来なら燃費やコスト面で作りたくないのだけれど、ユーザーニーズが高いため止められない」ということです。
■今後、日本のミニバンはどうなる?
では、今後のミニバンはどうなるのでしょう。実用性から考えたら、子育て世代だと圧倒的にスライドドアが便利。
ドアの構造や素材の軽量化で、引き続きニーズに応えていくことになると思います。ただしコスト高は避けられず値上がり傾向となるかもしれません。
乗用車タイプのヒンジドア仕様とスライドドア仕様が同じような価格だったら皆さん後者を選ぶでしょう。
ただ遠からず新興国向けに開発されたヒンジドアを持つ安価な3列シート車も日本市場へ入ってくるはず。こちらも日本でのニーズはあると思います。
三菱「エクスパンダー」やホンダ「BR-V」といった3列シート車を日本に導入すれば、200万円をもしかしたら切る価格設定も可能かもしれません。
ここまで読んで「やがてスライドドア仕様は車種が限られるし、どんどん高価になるのでは?」と思うかもしれません。その通りでしょう。
燃費規制をクリアするため新型の3列シートのスライドドア車は全てパワーユニットをハイブリッドにしなければなりません。
手頃な価格で買える新車のスライドドア式3列シートミニバンは遠からず無くなってしまうと思います。