アウディのサポートを受けながらワークス体制でフォーミュラEに参戦しているABT(アプト)が、アウディ「S8」をチューニング。見た目控えめのABTチューニングの真髄とは。
■モータースポーツの技術がフィードバックされたABTチューン
アウディ、そしてVWのカスタマーにとって、チューニングメーカー「ABT=アプト」の名前はとりわけ有名なところだろう。
ABTが、その存在を世界的に有名にしている理由は、アウディのサポートを受けながら、積極的にモータースポーツに参戦している点にある。2014年−2015年シリーズからフォーミュラEへの挑戦を開始すると、2017年−2018年シーズンには早くもワークス体制へと昇格。そして2018年−2019年シーズンにはチームランキングで年間2位を獲得するに至っている。
日本でも、プライベートチームへのABTの活躍はモータースポーツ・ファンならば誰もが知るところである。そして、その技術力の高さが、ロードカーのチューニングに生かされていることは、紛れもない事実なのである。
ドイツに本社を置く、ABTのロードカー・チューニング部門は、正確にはABTスポーツラインと呼ばれる。その洗練されたデザインは、年齢や性別を問わず高く支持されており、いわゆるチューニングカーに独特な凄みを感じさせないのも大きな魅力だ。
実際に今回発表されたアウディ「S8」のエクステリアを見てみよう。ブラックのエクステリアカラーが選択されたS8だが、オリジナルとの違いはほとんど見つけることができない。
フロントグリルがシングルフレームグリルにデザインされていることや、ミラーやメッキパーツがボディと同色化されている点、リアにコンパクトなカーボン製のスポイラーが装着されていることなどが、わずかに違いとして見つけられる部分といえるだろうか。
前後のホイールは「ABT Type GR」と「ABT Type FR」が、20インチ径で用意されているが、近くクラッシックな5スポークが21インチ径でデビューする予定となっている。
■AMGやM以上のパワーを授かった、ABTチューンのアウディS8
ABTが手掛けたS8のメイントピックスは、なんといってもフロントに搭載されるエンジンにある。
オリジナルのS8には571psの最高出力と800Nmの最大トルクを発揮する、4リッターV型8気筒ツインターボエンジンが搭載されていたが、このABT製S8もこの基本スペックは同様だ。
ただし専用のECUなどを搭載することで、最高出力は571psから700psという驚異の数値に、最大トルクも800Nmから880Nmにまでアップしている。果たしてこれをライバルと比較するとどのような結果になるのだろうか。
メルセデス「AMG S63」の最高出力&最大トルクは、612ps&900Nm、BMW「M760Li xDrive」は同様に609ps&850Nm、そしてポルシェ「パナメーラ ターボ」は、550ps&770Nmである。
これは紛れもなく、新たなスーパーサルーンの誕生と呼べるだろう。車両重量が2.3トンもあるモデルでありながら、0−100km/h加速は3.4秒、そして最高速度はアウディのオプションでリミッターをカットすれば、270km/hが可能になるのだから。
しかもVIPを迎えるために最新のアクティブサスペンションや豪華なインテリアを備えているのである。
インテリアには、ABTのエンブレムを刻したスタート&ストップ・スイッチと、シフトノブ・カバーが装備されるという。
世界でも限られたカスタマーのみが手にすることのできるスーパーサルーン。それはスーパーカーとも直接対決できる、感動的なパフォーマンスと実用性、そして快適性を持つ万能なマシンでもある。