首都高速道路にはさまざまな路線が存在しますが、そのなかでも東京駅にもっとも近い「八重洲線」には、首都高を降りることなく人を降ろせる場所が存在します。一体どのような目的で設けられた場所なのでしょうか。
■東京駅の地下に存在する秘密の場所とは
東京都とその周辺を結ぶ首都高速道路は、40か所以上のジャンクション(JCT)と10以上の路線が存在する複雑な自動車専用です。
左右どちらからも合流したり、右車線も走行車線であるなど、自動車専用道路の常識が通用しない首都高ですが、路線内には「人を降ろすための専用降車口」というものがあるといいます。それは一体どのようなものなのでしょうか。
首都高には東京駅のもっとも近くを通る路線として、「首都高速八重洲線」が存在。都心環状線外回りでは神田橋JCTから、内回りでは汐留JCTと西銀座JCTを経て入ることができ、ほぼ全線が地下路線となっています。
人を降ろすための降車口はこの八重洲線内にあり、正式名称は「八重洲乗客降り口」と呼ばれています。
八重洲乗客降り口は、八重洲線の上り・下りどちらにも設けられ、首都高を降りることなく人を降ろせる場所となっています。
実際に人を降ろすスペースはタクシー乗り場のように歩道が設置され、すぐそばには八重洲地下街へと続く扉があるなど、高速道路上でありながら人が移動することを前提としたつくりになっています。
八重洲乗客降り口には「八重洲地下街」と呼ばれる広大な地下街が広がっています。現在は八重洲地下街株式会社が運営している施設で、開業は1960年代、売場面積は現在も都内最大とされています。
この降り口が地下街と繋がっている点は、何か理由があるのでしょうか。八重洲地下街株式会社は、以下のように話します。
「管理や管轄は現在も首都高速がおこなっているため、八重洲乗客降り口が設置された理由などはわかりません。ただ、降り口を利用している人は今でもいるのではないでしょうか。
タクシー専用というわけでもないと思いますので、地下街を通じて東京駅へ向かう人の利用があると思います」
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八重洲地下街にとっても、降り口は「イレギュラーな存在」とされているようです。しかし、降り口を利用する人は現在もおり、利用方法のひとつには東京駅へ向かうことがあるとのことです。
交通混雑を避けるためにも無用に立ち寄ることが控えておきたいですが、東京駅を利用するユーザーとしては、知っておきたい場所といえます。
■タクシードライバーもあまり行く機会が無い!?
神奈川県のあるタクシー会社のドライバーは、八重洲乗客降り口について以下のように話しています。
「八重洲乗客降り口の存在については知っていますが、私も先輩から教えてもらったことがあるだけで、お客から行き先として指定されたことはほぼ無いですね。
ただ、東京駅直結の会社に勤めている人で、羽田空港からオフィスへ送るときに使ったという話を聞いたことがあります。タクシーにとっては首都高から出ることなく乗客を降ろせるので、メリットの大きい場所だと思います。
仕事で八重洲線を使うときは、降り口を使うことよりも、東京駅の目の前に出られる八重洲出口や、銀座に通じる新京橋出口へ向かうために使うことが多いです」
八重洲乗客降り口は、専用の扉から八重洲地下街へと出ることができますが、扉は首都高側からしか開けることができず、一度扉をくぐってしまうと本線上には戻れないため、「降りるため専用の場所」となっています。
また八重洲線は、首都高を利用するドライバーが、渋滞状況や事故発生個所を確認するための「図形情報版」には描かれていません。
大型車や危険物積載車は八重洲線内の八重洲トンネル通行が禁止されていることから、首都高としてはこの路線を周知することによって交通量が増え、それによって発生する交通渋滞や事故のリスクなどを考慮し、その存在をあまり広めていないようです。
タクシー運転手や、東京駅の近くで働くビジネスパーソンなど、知る人ぞ知る人が利用する秘密の場所といえるでしょう。