ラグジュアリーSUVの頂点に君臨するベントレー「ベンテイガ」が、刷新されることになった。英国クルー本社で新ベンテイガの姿を実際に見てきたモータージャーナリスト山崎元裕氏が、その第一印象をレポートする。
■もはや「フライングスパー」のSUV版といいたくなる新型「ベンテイガ」
2015年に発表されて以来、ラグジュアリーSUVの頂点の定義を書き換えることを目標に、セグメントをリードしてきたベントレー「ベンテイガ」。
このこれまで合計で2万台以上が生産されてきたベンテイガが、新型へと生まれ変わった。
参考までにこの新型ベントレーは、「持続可能なラグジュアリー・モビリティの世界的リーダーになるための旅程である、新しいベントレーの事業戦略、ビヨンド100」のもとで発売される最初のモデルとなる。その意味でも世界から新型ベンテイガに集まる視線は熱く、そして厳しい。
新型コロナウイルスの影響が猛威を振るう直前、ベントレーの本社があるイングランドのクルーを訪ねていた私は、度々変わるそのスケジュールに困惑していた。
ベンテイガの専用ラインを持つ本社工場の取材も終えていたし、そこではジュネーブモーターショーに出品される予定だった「バカラル」にも直近で出会うことができた。
スケジュール表ではその後に、「ワールドプレミア」と書かれたセッションが用意されていたのだが、それがこの新型ベンテイガであるとは思いもしていなかった。当然のことながら、それがアンヴェールされた瞬間の驚き、そして感動は予想をはるかに超えたものだった。
新型ベンテイガで、まず注目しなければならないのは、驚くほどにダイナミックに姿を変化させたエクステリアだ。
実際にはその変化はフロントとリアのセクションに集中しているのだが、それが第3世代のコンチネンタルGTやフライングスパーにインスピレーションを得たものであることは間違いのないところである。それによってベントレーのデザインはよりブランド内でのデザインの統一性が図られ、現代のベントレーを象徴する姿カタチが整った。
まずはフロントセクションから、その変化を見ていこう。フロントグリルは大型化され、ベントレーがマトリクスグリルと呼ぶ、より網目を強調したデザインが採用されている。
左右のヘッドランプは消灯時にはクリスタル製品のような美しさを見せるが、点灯時には82個のLEDがその高い機能性で安全性をアシストする。ちなみにヘッドランプは、これまでより外側の30mm高い位置に移動しているという。
モードはタウン(48.3km/h以下)、カントリー(48km/hから98km/h)、モーターウェイ(98km/h以上)の3つ。照射範囲と距離が調節されるほか、対向車の眩しさを防ぐためにハイビームのままでも、常時82個のLEDは点灯と消灯を繰り返している。さらにワイパーアームには、22個のヒーター付きウオータージェットが装備され、冬季でも安全な走りを実現してくれる
■さらにゴージャスな内外装になった新型「ベンテイガ」とは?
フロントマスクの印象が、よりダイナミックなものに見えるのは、より垂直にそそり立ち力強さを演出しているからだろう。先代のベンテイガでも、フロントマスクの存在感はかなりのものだったが、それでも新型と比較するとスマートなものに見える。
リアデザインも大きく見直されている。これは今回のモデルチェンジで、リアトレッドが20mm拡大されたこともその一因である。
ホイールアーチ内のホイールの位置も変わり、よりスポーティなフットワークが予感できるようになった。ホイールは22インチ径となり、仕上げ方法が2種類から選択でき、デザインは5タイプに増えた。
テールライトはコンチネンタルGTと共通の楕円形テールライトとなる。テールゲートも完全新設計となり車幅いっぱいにオープンすることが可能になった。
新デザインのルーフスポイラーも同様に車幅分の長さがある。またライセンスプレートはバンパー部へと移動している。
インテリアの変化も激しい。もはやSUVのインテリアというよりも、紛れもないベントレーのインテリアである。仮にコンチネンタルGTやフライングスパーから乗り換えても、何も違和感を覚えることはないだろう。
シートアレンジは4、5、7席の3種類から選択が可能だ。
トピックスは数多くあるが、そのなかでも特筆すべきはセンターフェイシア、ステアリングホイール、ドアトリム、シートなどのデザインが一新されていることだ。
新世代のインフォテインメントシステムも採用され、10.9インチのディスプレイが、ベントレーの翼をイメージしてハンドクラフトされたダッシュボードにシームレスに装着される。
搭載されるエンジンは、まずは4リッターのV型8気筒ツインターボからとなる。最高出力&最大トルクは550ps&770Nmという数字で、これに8速ATを組み合わせる。
最高速度は290km/h、0?100km/h加速は4.5秒というから、これはまさにSUVの姿をしたスーパーカーだ。
このエンジンはまた、低負荷時には8気筒のうち4気筒を停止させるシリンダ・オン・デマンド機能も備えている。
燃費はWLTPモード(複合)で13.3L/100km。CO2排出量(複合)は302g/kmと発表されている。
このV8仕様の後には、2020年中に6リッターW型12気筒エンジンを搭載した「ベンテイガ・スピード」と、PHEVモデルが発売される計画だという。
新型ベンテイガは、5年前に自ら定義したラグジュアリーSUVの頂点を、再定義することができるのだろうか。もちろんカスタマーはおおいにそれに期待していいだろう。