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「GRヤリス」よりもスゴかった!? 短命だったモンスターマシン5選

くるまのニュース 2020年7月22日 6時10分

2000年代になるとクルマの性能は飛躍的に向上しました。とくに燃費性能や安全性能と並んで、目覚ましい進化を遂げたのが動力性能です。しかし、1980年代にもモータースポーツで勝つことを目的に、異常なまでに高性能化した時代があります。そこで、往年のモンスターマシンを5車種ピックアップして紹介します。

■勝つためだけに生まれたモンスターマシンを振り返る

 2000年代に入ってすでに20年経ちますが、この20年間のクルマの進化は目覚ましく、燃費性能や安全性能と並んでエンジンの出力や運動性能は飛躍的に向上しました。

 しかし、1980年代に、モータースポーツで勝つことを目的につくられた凄まじい性能のクルマが存在。

 そこで、往年のモンスターマシンを5車種ピックアップして紹介します。

●ランチア「デルタS4」

グループB終焉を決定付けてしまった「デルタS4」

 1979年に発売されたスタイリッシュな5ドアハッチバック、ランチア「デルタ」は、オーソドックスなFFコンパクトカーです。

 そして1985年に、フィアットグループは世界ラリー選手権(以下、WRC)に出場するグループB車両として「デルタS4」を開発。デルタという車名がつけられていますが、市販のデルタとはまったく異なるシャシとボディとなっており、共通する部品はほとんどありません。

 搭載されたエンジンは1.8リッター直列4気筒で、低回転域やスロットルオフからの加速時はアバルト製スーパーチャージャーで過給し、高回転域ではターボチャージャーで過給するツインチャージャーを採用。

 最高出力は250馬力を発揮しましたが、これはストリート仕様で、ラリーに出場したワークス車両では500馬力以上を絞り出したといわれています。

 このエンジンをリアミッドシップに縦置きにマウントし、駆動方式はフルタイム4WDとなっていました。

 デルタS4がWRCに参戦すると、圧倒的な強さを誇りました。しかし、1986年のWRC第5戦「ツール・ド・コルス」で、ランチアのエースドライバーだったヘンリ・トイボネンがコースアウトして崖下に転落し炎上。

 ドライバーと、コドライバーの両名が死亡するという、痛ましい事故が起きました。

 さらに、直近のレースでも重大事故が多発して観客に死亡者が出るなど、グループB車両は危険すぎると判断されて1986年シーズンをもって終了しました。

●プジョー「206ターボ16」

大衆車のシルエットながら戦闘マシンに変貌した「205ターボ16」

 1983年に欧州でデビューしたプジョー「205」は、1.6リッター直列4気筒エンジンを搭載した同社のエントリーカーで、秀逸なデザインと優れた性能で話題となりました。

 そして、1984年にはWRCへの参戦を目的したグループB車両の、「205ターボ16」が登場。

 WRCでは4WDをいち早く取り入れたアウディ勢が快進撃を続けていたなか、プジョーは205を4WD化するだけでなくエンジンをリアミッドシップに搭載して、運動性能を高める手法をとります。

 搭載された1.8リッター直列4気筒ターボエンジンは、ストリート仕様では最高出力202馬力と控えめでしたが、ラリー車両は540馬力を誇りました。

 205ターボ16の外観は、シルエットこそ205をイメージしていましたが外装にFRPを多用し、張り出したフェンダーやエアロパーツに、リアサイドのエアインテークなどによって、戦闘マシンへと変貌。

 シャシや室内もベース車とはまったく異なるものとなっていました。

 なお、205は日本へ1986年から正規輸入が開始され、とくにスポーティグレードの「205GTI」が人気だったため、プジョーのモデルのなかでも馴染み深いのではないでしょうか。

●ルノー「5マキシターボ」

外観もすごいが中身はもっとすごかった「5マキシターボ」

 かつて、ルノーのエントリーカーとして、欧州のみならず日本でも馴染みが深かったのが「5(サンク)」です。

 初代5のデビューは1972年と基本設計は古かったものの、優れたデザインのコンパクトカーで、ユニークなメカニズムを採用するなど人気を博し、1984年まで生産されたロングセラーでした。

 この5をベースとしてWRCに参戦するために開発されたのが「5ターボ」です。5ターボは当時のグループ4カテゴリーのレギュレーションに則ってつくられ、1980年に発売されました。

 最大の特徴は後席部分にエンジンを縦置きに配置し、リアタイヤを駆動する2シーターミッドシップに作り変えられていた点です。

 搭載されたエンジンは1.4リッター直列4気筒OHVにターボが装着され、市販モデルで最高出力160馬力を発揮。

 さらに、外観も大きく張り出したオーバーフェンダーによって、大衆車をベースしたとは思えないほどの迫力を演出し、初期のモデルでは、内装の色使いやデザインが秀逸と評されるほど、アヴァンギャルドなクルマに仕立てられています。

 その後、WRCがグループBに移行すると「5マキシターボ」となって参戦。1.5リッターながら最高出力はピーク時には350馬力を絞り出しましたが、4WD勢の後塵を拝してしまいました。

■国産車にもあった戦うクルマとは!?

●日産「240RS」

3代目「シルビア」をベースに戦うマシンに生まれ変わった「240RS」

 1965年に発売された、国産スペシャリティカーの元祖といえる日産初代「シルビア」は、多くの製造工程が手作業とされた非常に高価でレアなモデルです。

 1975年に登場した2代目はアメリカ市場を意識した流麗なフォルムのクーペでしたが、排出ガス規制の強化と重なった時期だったため、人気車とはなりませんでした。

 そして、1979年にデビューした3代目は、2代目とは大きく異なるシャープなボディラインを持つスポーティなクーペ/ハッチバックとなります。

 この3代目シルビアをベースとして、1982年にレースベース車の「240RS」を発売。

 搭載されたエンジンは2.4リッター直列4気筒DOHC16バルブで、フロントに搭載されリアタイヤを駆動するFRを採用。2基のソレックスキャブレターが装着され、最高出力240馬力を発揮し、ラリー仕様では275馬力までパワーアップされていました。

 外観はラジエーターの冷却能力向上のために大きく拡大されたフロントグリルと、リベット留めのオーバーフェンダー、リアスポイラーなどが装着され、ベースのシルビアとは異なる迫力あるボディとなっています。

 また、内装に快適装備は一切無く、インパネには各メーターとグローブボックスがあるだけの、非常にストイックな仕様です。

 240RSはWRC参戦を目的に、グループBの公認を得るために200台を製造し、国内でもわずかな台数が販売されました。

 しかし、参戦した時点ですでに4WDが優勢で、FRの240RSはすでに時代遅れだったため優勝こそなかったものの、1983年のニュージーランドラリーで2位、1985年のサファリラリーで3位などの戦績を残しています。

 なお、240RSは非常に希少なクルマですが国内にも現存しており、いまでも旧車イベントなどで見ることができます。

●ダイハツ「シャレード926ターボ」

国産コンパクトカーでは唯一のグループBカーだった「シャレード926ターボ」

 ダイハツ初代「シャレード」は、新世代のコンパクトカーとして1977年に登場。1リッターの直列3気筒エンジンを横置きに搭載したFFで、コンパクトなボディサイズながら広い室内空間を実現し、優れた経済性から人気となりました。

 1983年に登場した2代目シャレードには、1リッターガソリンエンジンに加え、当時の世界最小排気量だった1リッター直列3気筒ディーゼルエンジンをラインナップ。

 そして、1984年にWRCへの参戦のため、ホモロゲーションモデルの「926ターボ」を200台限定で発売。

 926という車名の由来は排気量で、ベース車が993ccエンジンだったのに対し926ターボは文字どおり926ccでした。

 これは国際自動車連盟が決めた規則で、レースにおいてターボエンジンと自然吸気エンジンを公平に扱うために、ターボ車の排気量を1.4倍(当時の規則)として扱う「ターボ係数」が課せられました。

 その結果、993ccならば1.3リッターから1.6リッターのクラスで戦わなければなりません。しかし排気量を926ccまで下げた926ターボならば1.3リッター以下のクラスに参戦できました。

 なお、926ターボはラリーベース用車両といっても、チューニングをすることを前提としていたため、最高出力は76馬力と、80馬力を発揮する「シャレード・デトマソターボ」よりも劣っていたくらいです。

 それでも、強化バルブスプリングや高速型のカムシャフト、フルトランジスタ点火を採用し、内装ではバケットシート、MOMO製ステアリングホイールがおごられ、ほかにも165/70HR13のタイヤ、ハロゲンヘッドライトなどが標準装備されていました。

 実際の戦績では1985年のサファリラリーで、クラス優勝を果たしています。

※ ※ ※

 グループBカーは数々の悲劇によって消滅しましたが、その後のグループA、そして現在のWRカーと、スピードはグループBを凌ぐほどに上がっています。

 技術的な進化もありますが、レース運営など多角的な改善によって、重大な事故は減ったということでしょう。

 そうした進化は市販車にも生かされており、昔よりもハイパワーになっても、安全性は飛躍的に向上しています。

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