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ゴミ収集車の内部はどうなっている? どんな物でも飲み込む箱の謎とは

くるまのニュース 2020年8月5日 10時10分

自動車メーカーのクルマをベースに、用途に応じた特別な装備や改造を施したクルマは「特装車」と呼ばれています。なかでもゴミ収集車は特装車メーカーのノウハウが詰め込まれており、家庭ゴミや粗大ゴミを効率的に収集するための工夫がなされています。

■ゴミ収集車の種類や、内部の仕組みとは?

 街中で、ゴミ収集車に家庭ゴミなどを袋のまま荷台の機械に投げ込んでいる光景をよく見かけますが、あの何でも砕くような荷台の中身はどうなっているのでしょうか。

 ゴミ収集車は、「パッカー車」や「塵芥車(じんかいしゃ)」と呼ばれます。その種類は、大きく分けて「プレス式(圧縮式)」と「巻き込み式(回転板式)」の2種類のタイプがあり、ゴミの種類などにより使い分けられます。

 プレス式は、2段階の圧縮構造となっています。まず初めに、手前のプレスプレートでゴミを細かく破砕する1次圧縮をおこない、破砕したゴミを奥へと押し詰める2次圧縮をおこないます。

 このように2段階の圧縮を採用することで、ゴミを限界まで圧縮でき、容積を無駄にせず大量に収集可能となり、圧縮力も強いため粗大ゴミといった大きさのあるものも収集できます。

 なお、プレス式は構造上ゴミを圧縮してしまうため、家庭ゴミに含まれる水分や、危険物が混入していた場合も押し潰すため、ライターやリチウムイオン電池が原因となって火災に至った事例も報告されています。

 巻込み式は、車体後部の回転板でゴミをかき上げ、押込み板で奥へ押し込んでいく仕組みです。手前のゴミを次々と奥へ押し重ねていくため、プレス式ほどの粉砕力がありませんが、一般ゴミや葉や枝などの収集に向いているとされます。

 硬い材質や長い鉄製のゴミが挟まってしまうと回転板が停止してしまうなど、収集できるゴミの種類が制限されてしまうデメリットがありますが、プレス式と異なり圧縮をしないためゴミに含まれる汚水を排出しにくい、構造がシンプルでコストを低く抑えられるというメリットもあります。

 ゴミ収集車などの特装車メーカーである極東開発工業は、以下のように話します。

「プレス式のほうが若干コストは高くなりますが、販売台数が多いのはプレス式です。安定した需要があり、常に一定の台数を販売している状況です」

 一般的に、ゴミ収集車は行政から委託を受けた清掃事業者がおもな顧客となりますが「ゴミ収集車は自治体で出る家庭ゴミ収集用のものがほとんどですが、変わったところではダンボール回収を専業とする個人事業主が使うこともあります」と話すなど、購入者は必ずしも限定されていないようです。

■特装車はなぜ専用メーカーが存在するのか

 ゴミ収集車は、いすゞや日野のトラックなどをベースとしていますが、ゴミ収集車自体を製作・販売しているのはそれらの自動車メーカーではありません。

 ゴミ収集車のような車両はベースとなる車両に対して特別な架装が加えられていることから「特装車」と呼ばれ、前出の極東開発工業のような専門の特装車メーカーによって製造・販売されます。

 特装車は、架装の程度によって異なりますが、ベース車両よりもかなり高額となることがほとんどです。

 例えば、特装車メーカーのひとつである新明和工業では、プレス式と巻き込み式の2種類のゴミ収集車をラインナップし、それらの定価は2トンタイプのプレス式が381万円4000円、巻き込み式が376万8000円ですが、これらはエンジンや車体などの「シャシ部分」を除いた金額です。

 ゴミ収集車のベース車両は、いすゞ「エルフ」や日野「レンジャー」などのトラックが一般的ですが、特装車に仕立てるには車体本体の価格も必要となります。

 一見すると高価な特装車ですが、専門用途に応じて製作されていることから、その機能性は抜群です。

 また特装車メーカーごとに、特色もあります。例えば、新明和工業では1台で2種類のゴミを分別収集可能な「2分別塵芥車」という特徴的なゴミ収集車を販売。
 
 ボディの左右にゴミ収集コンテナを備えるこの車両は、缶と紙などの異なるゴミを1台で収集できることから車両台数の削減や効率的なゴミの収集に貢献しています。

 また、プレス式のゴミ収集車では、ごみに含まれる水分を絞り出してしまい、汚水が発生するという問題を抱えています。

 極東開発工業のゴミ収集車では、汚水を道路に放出してしまわないよう汚水タンクや漏れ防止プレートが備え付けられ、なかに溜まってしまった汚れも奥から水で洗い流せるなどの特徴的な構造を持っています。

救急車なども特装車として専用メーカーが製造していることが多い

 特装車メーカーはあくまで架装部分を専門に手掛けるメーカーであるため、自社ではクルマを製造していません。

 タンクローリーやコンクリートミキサー車なども特装車のひとつですが、これらもトラックの車体をベースに、荷台部分に燃料用のパイプやミキサーを回転させる油圧モーターを取り付けます。

 燃料やコンクリートなどの特殊なものを運ぶための架装は、自動車メーカーとは異なるノウハウが必要とされるため、専門の特装車メーカーが必要となるのです。

※ ※ ※

 特装車は、求められる用途に応じて特殊な改造が施されたクルマです。車体やエンジンこそトラックメーカーのクルマが使われていますが、特装車メーカーが手掛けるクルマは車体構造に手が加えられ、高さや幅が変わることも少なくありません。

 そこには自動車メーカーにはない独自のノウハウがあり、自動車メーカーにはできない役割を果たしているといえるでしょう。

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