高速道路利用者の約9割が利用しているETCサービス。ETCサービスを利用するにはクレジットカード会社などでのETC利用申し込みをおこなうほか、クルマにETC車載器を取り付ける必要があります。国土交通省では、今後高速道路の料金所をETC専用にする方針を検討しています。その場合、今後はETC車載器が標準装備になる可能性があるというのです。
■ETC車載器標準装備化は、高速料金の支払い以外がカギに?
国土交通省は2020年7月2日、第38回国土幹線道路部会にて、新型コロナウイルス感染症対策の「新たな生活様式」の一環として、高速道路の料金所をすべてETC専用化する方針を打ち出しました。
現在のETC利用率は90%以上とすでに広く普及しています。一方でメーカー系の販売店ではオプション装備のひとつとして設定されているETC車載器ですが、実際に料金所のETC専用化が実現すれば、標準装備となるのでしょうか。
国土交通省道路局高速道路課の担当者によると、ETC専用化のメリットは、「非接触型にすることで感染拡大防止が見込める」、「柔軟な料金設定が可能になる」、「駐車場などの支払手段に利用できる」などというものが挙げられています。
現在、ETCサービスを利用するためには、新車購入時に販売店でオプションとして装着か、または社外品をカー用品店などで後付け装着する方法が主流です。
実際に高速道路の料金所がETC専用となった場合に、ETC車載器は標準装備となるのでしょうか。
首都圏のホンダ販売店スタッフは以下のように話しています。
「料金所がETC専用になれば、渋滞の緩和にもつながるため、ETC車載器の標準装備化は実現する可能性は十分考えられます。
しかし、標準装備となれば、実質的な本体価格の値上げという形で対応することになる可能性が高いため、高速道路を利用しない人や、さまざま商品が展開している現状と比べると選択肢が狭まることとなります。
ですが、キャッシュレス化によって高速道路料金以外の決済で利用できる範囲が広まれば話は別だと思います。
例えば、ガソリンスタンドでの決済がETCで可能になるといったサービスが実現すれば、高速道路を利用しない人にもメリットがあります」
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ホンダのオプション装備では、ETC車載器は1万1000万円から2万7500円となっており、標準装備となった場合は、上記の値段がそのまま本体価格に上乗せされる可能性があります。
現在、ETCの利用率はおよそ93%となっていますが、残り7%のユーザーなどにとって、この値上げは気持ちよく受け入れられるものではないでしょう。
しかし、高速道路での料金支払い以外の利用では、実際にNEXCO中日本がいくつかの実証実験をおこなっています。
2017年には駐車場料金にて、2019年にはフェリーの乗降手続や利用料金にて、2020年8月3日からは飲食店のドライブスルー利用にて、ETC決済を活用した実験がおこなわれました。
これらの取り組みについて、NEXCO中日本の担当者は「ETCがもっと一般化し、キャッシュレス決済のひとつの手段として広まっていけばと考えています」と話しており、今後もETC決済に関する実験は積極的に導入していく姿勢をみせています。
ETC車載器の標準装備化は、高速道路料金の支払いというETC決済の「本来の目的以外」での発展次第となりそうです。
■あなたは大丈夫? 今のETCが使えなくなる2022・2030年問題とは
現在のETC車載器の一部は、電波法改正に伴って2022年をもって使用出来なくなる恐れがあります。
ETCに限らずあらゆる送信機から電波を発する際、設計上意図していない不要な電波が発生することがあります。これをスプリアスといい、総務省によると、スプリアスの強度の許容値を見直して軽減することにより、電波利用環境の維持、向上および電波利用の推進を図るため、電波法が改正されたとしています。
それによって、旧スプリアス規格に基づいて製造された一部のETCが2022年11月30日をもって使用できなくなるのです。
加えて、電波法とは別にセキュリティ規格の変更も予定されているため、使用できなくなるETCはさらに増えます。
セキュリティ規格とはETCについて盗聴、改竄の不正防止を目的とした情報安全確保の規格で、国土交通省によると2030年に改正を予定しているとしています。
では、2022年あるいは2030年以降、どういったETCを使用すれば良いのでしょうか。
それは現在も購入することができる「ETC 2.0」という規格のETCです。ETC 2.0は従来のETCと比べて大量の情報の送受信が可能となり、ICの出入り情報や経路情報の把握が可能となっています。
2016年5月時点ではETC 2.0の利用率は2.1%でしたが、電波法改正が近づいた2020年5月には25.2%と利用者は着々と増加しています。
先述のホンダ販売店で取り扱うもので比較すると、ETC 2.0車載機と従来のETC車載器では値段に約1万円の差がありますが、今後は車載器の主流となっていきます。