自己流のハンドル操作は思わぬ事故を招く可能性が非常に高いため、なかには道路交通法違反とされてしまう操作方法もあります。では、どんなハンドル操作が危険とみなされるのでしょうか。
■自己流ハンドルで事故多発!? 注意すべきは「内掛ハンドル」
長年クルマを運転し続けるドライバーのなかには、慣れによってハンドル操作に自己流のクセがついていることがありますが、自己流のハンドル操作は思わぬ危険な事故につながりかねません。
実際に慣れているドライバーはどのようなハンドル操作をしているのでしょうか。
JAFが発行する情報雑誌「JAF Mate」の街頭調査によると、一般道の交差点を左折するドライバー300人のハンドル操作を目視で確認したところ、全体の約9割を占める289人のドライバーが自己流ハンドルによる操作をおこなっていることが分かりました。
判明した自己流ハンドルの内訳は、「片手ハンドル:135人(45%)」、「小刻みハンドル:97人(32%)」、「内掛けハンドル:45人(15%)」、「送りハンドル:12人(4%)」、「JAF推奨のハンドル操作:11人(4%)」という結果です。
自己流ハンドルには、安全な走行への影響以外だけでなく、事故時の安全装備であるエアバックの作動にも影響を及ぼす可能性が高くなり、なかでも注意したいのが「内掛けハンドル」です。
内掛けハンドルは、逆手で握りなおして上から下へと引っ張る動作が取れることから、大きな力が入りやすくなります。
クルマが停車しているときなど、ハンドルが重くなる状態でも一気に回せるため、パワーステアリングを装備したクルマが少ない時代に普及したとされているハンドル操作のひとつです。
しかし、現在はほとんどのクルマにパワーステアリングが装備されており、ハンドル操作へ大きな力が必要となる機会は激減しました。そのため、「大きな力を入れやすい」や「一気に回せる」といった内掛けハンドルのメリットも、今では効果を発揮しにくいとされています。
また、メリットがないどころか、「急な飛び出しに応じて逆方向にハンドルを切る」、「微妙なハンドル操作に不向き」、「逆手に持ち替えることで操作がワンテンポ遅れる」といったハンドルの操作ミスに繋がる危険性があるのです。
加えて、ハンドル内には衝突時の衝撃を軽減するためにエアバックが装備されており、内掛けハンドル時にエアバッグが作動すると腕に無理な力が掛かり、肘関節の可動範囲と逆方向からエアバッグの力が加わることで、怪我をする可能性が非常に高くなります。
また、自己流ハンドルの操作方法には、道路交通法に違反するケースもあります。それが、前述したJAFの街頭調査でいちばん多かった「片手ハンドル」です。
片手ハンドルは、パワーステアリングの普及により、ハンドル操作への重労働が軽減されたことで急増しました。
片手での操作では、万が一の事態にとっさのハンドル操作をすることが難しいため、事故やトラブルの頻発に繋がっています。
このように危険性の高い運転操作において、道路交通法第七十条の「安全運転の義務」の下記条文に抵触する恐れがあります。
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」
安全運転の義務に違反した場合、普通車は違反点数2点と反則金9000円が科せられるほか、反則金を支払わなければ、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。
■安全運転の近道は「正しいハンドル操作」が大切!
自己流ハンドルで思わぬ事故を防ぐためには、正しいハンドル操作をおこなうことが大切です。そして、正しいハンドル操作には、手の位置や握り方も重要になります。
実際に、JAFが推奨する適切な手の位置や持ち方を解説します。
まず、ハンドルを持つ手は、時計の針が「9時15分」を指す位置を意識します。この位置に設定することで自然に両脇が締まり、胴体を腕で支えることができるため、非常に疲れにくくなります。
また、両手でハンドルを持ったままハンドルを大きく切ることができるので、とっさの事態にも迅速に対応できます。
一方、9時15分より高い位置に手を配置すると、両脇が開いて凹凸や段差時にハンドルから手が離れやすくなります。低い位置になれば脇が締まり過ぎてしまい、操作が窮屈になってしまいます。
ただし、背丈や腕の長さといった個人の体型や身体の動かし方によっては、9時15分に合わせるとハンドルが持ちづらくなる可能性もあるため、9時15分から10時10分の間を目安に、握りやすい位置を調整しましょう。
ハンドルを握るときは、親指をハンドルの内側に軽く添えて、他の指は軽く握るように持ちながら、手首、肘、肩の力を抜きます。
クルマの運転初心者の場合、ここで力を入れてしまう人も多いですが、力むとコントロールが難しくなるので、リラックスすることが大切です。
そして、上記の状態を維持しながら、軽くハンドルを押すように持つことを意識します。
その反力で背中にしっかりとシートは押し付けられるので、運転姿勢を固定できるため、凹凸や段差、コーナーでの遠心力がかかる際も、身体とハンドルの距離は一定を保たれるため、より安全なハンドル操作をおこなうことができるのです。
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慣れによる自己流ハンドルは、重大な事故に繋がりかねません。内掛ハンドルはエアバッグ作動時に腕への無理な力が加わるほか、片手ハンドルは道路交通法に違反します。したがって、安全運転を心がけるために、適切なハンドル操作を意識することが大切です。