Infoseek 楽天

ポルシェマニアが最後に行き着く!? 「911スピードスター」とは?

くるまのニュース 2020年8月10日 8時10分

ポルシェ「911」シリーズのなかでも、「ターボ」や「RS」などに負けないほど人気の高い「スピードスター」。そこで、スピードスターの歴史をダイジェストで辿るとともに、最新オークションでの落札価格をレポート。

■北米向けに生まれたポルシェ「スピードスター」

 2020年7月に開催された「オープン・ロード・ザ・ヨーロピアン・サマー・オークション」で、オーガナイザーのRMサザビーズは驚くべきロットを実現してみせた。

 それはポルシェ「911」のファンにとっては特別な響きを持つ、3つの世代の「スピードスター」を一堂に出品すること。オークショネアの価値は、いかに魅力的な出品物を揃えるかにあるかともいわれるが、その意味では彼らの仕事は超一流のオート・オークショネアといえる。

 まずはスピードスターというネーミングをポルシェが使った最初のモデル、1954年デビューの「356スピードスター」の解説から始めよう。いわば簡単な歴史の復習だ。

 ポルシェにとって1950年代から、そのもっとも大きな、そして重要な市場は、現在もそうであるようにアメリカ合衆国である。当時の「356」はアメリカン・スポーツよりもコンパクトでパフォーマンスに優れ、レースでも常勝マシンとして高い評価を得ていたから、さらに高性能なモデルを望むカスタマーからの声は常に大きなものだった。

 そこでポルシェが用意したのが、レース向けの軽量モデルであり、また街中では人の目を魅了する魅力的なスタイルを持つモデルだった。

 これまでのモデルより低くデザインされたフロントウインドウ、はめ込み式のサイドウインドウ、オプションのハンドクラフト製ソフトトップ等々で、カブリオレ比70kgの軽量化を実現したニューモデルには、「スピードスター」の名が与えられた。

 リアには最高出力55psの1.5リッター水平対向4気筒エンジンが搭載された。

 1957年まで生産が継続された356スピードスターは、トータルで4854台が生産された。それらはもちろんポルシェのファンにとって貴重なコレクターズアイテムとなっている。

 そしてこのスピードスターの名前が復活したのは、実に1980年代を迎えてからのことになる。

■3世代の「911スピードスター」、気になる落札価格は?

 1987年のIAA(フランクフルト・ショー)に出品されたコンセプトカー、「911スピードスター・クラブスポーツ・スタディ」で、スピードスターの名前が復活した。このコンセプトカーは、フロントウインドウすら装備されない1シーターモデルだった。

カブリオレと比べて80mmも車高が低い、ポルシェ「911カレラ3.2スピードスター」

 そしてその1年後、ポルシェは当時の930型911をベースに、プロダクション仕様の「911カレラ3.2スピードスター」を発表。当時のカブリオレと比較しても、その車高の低さが印象的なモデルだが、実際にスペックを比較するとスピードスターはカブリオレ比で80mmも車高が低い。

 1988年から1989年までの間に販売された911カレラ3.2スピードスターは、RMサザビーズの調べでは2104台となっている。出品車はそのうち139台しか存在しない右ハンドル仕様で、当初のデリバリー先であるイギリスに輸出されたのは、わずかに64台と記録されている。

 またこの世代のスピードスターには、ダイナミックな前後フェンダーを持つターボルックと、エレガントなナローボディーがあるが、後者はわずか171台。出品車は1989年式のターボルックだ。

 それに続く2代目の911スピードスターは、1992年に誕生した「911カレラ2スピードスター」。いわゆる964世代の911をベースに開発されたモデルである。

 964型911でのメカニズム上の大きな話題は、AWD機構を持つカレラ4と、ティプトロニックの初採用だが、純粋に走りを楽しむスピードスターには、軽量化のためそのAWDは採用されてはいない。

 デビューは1992年。空冷時代最後のスピードスターとして970台が生産されたが、残念ながら今回は姿を現さなかった。

 2010年のパリ・サロンで、第4世代のスピードスターが正式に発表される。ベースはもちろん997型911。生産は2010年から2011年にかけておこなわれ、わずかに356台が生産されたにすぎない。

 リアに搭載されたエンジンは、最高出力で408psを発揮する3.8リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンである。コンパクトなフロントウインドウとキャビン背後のダブルバブルのトノカバーは、もはやこの時代にはスピードスターに欠かすことのできないキャラクターとなった。

 出品車は新車から、わずかに1100kmを走行したのみのモデル。356台中、303番目のシリアルナンバーが打刻されている。ブラックレザーのインテリアと、カレラホワイトのエクステリアの組み合わせも実に見事だ。

 最後に紹介するのは、先代911、すなわち991型911をベースとするスピードスターである。スピードスターが、各世代の911のラストモデル的な役割を果たすことは、すでにこれまでの経験からファンにはお馴染みのスケジュールだったが、その正式発表が後継車の992型の誕生以後におこなわれたのはさすがに驚かされた次第だ。

 ベースを「GT3」とする最新のスピードスターは、4リッターの水平対向6気筒NAエンジンを搭載し、最高出力は502ps。最高速は310km/hに達するスーパーマシンだ。

 出品車はアルバートブルーのボディカラーを纏った、実にスポーティでエレガントな仕様。ちなみに全モデルの生産台数は、ポルシェ博士がオーストリアで最初にロードスターを作った年を祝して、1948台とされる。

●歴代スピードスターの落札価格は?

 それでは実際のオークションの結果はどうだったのか。事前にRMサザビーズが発表していた予想落札価格は、930型が10万−12万ユーロ(邦貨換算1230万円−1476万円)、997型が25万−30万ユーロ(同3075万円−3690万円)、991型は30万−38万ユーロ(同3690万円−4674万円)というものだったが、このなかで売買が成立したのは11万5500ユーロ(同1415万円)で落札された1988年式の930型911カレラ3.2スピードスターのみであった。

 997型が24万ユーロ、991型が28万ユーロあたりまで入札されたが、予想落札価格には達することができず、流札となっている。

この記事の関連ニュース