新型コロナ問題に伴う外出自粛要請で、長期間運転していなかった人のなかには、いざ必要に迫られて運転するとなったときに、四苦八苦してしまう人もいるのではないでしょうか。運転初心者や運転に不慣れな人が、スムーズに運転するコツとはいったいどんなもののでしょうか。
■教習所の間隔とは別物? 駐車をスムーズにおこなうためには
2020年に入り、新型コロナウイルスの問題による外出自粛が求められたことから、せっかく運転免許を持っているにも関わらず、ほとんど運転していないという人も多いのではないでしょうか。
また、免許を取得した直後に外出自粛が始まってしまったという人にとっては、なおさら運転に慣れる機会が減る結果となってしまいました。
しかし必要に迫られていざ運転となったときに、久しぶりの運転で四苦八苦してしまうのは避けたいものです。
初心者ドライバーやペーパードライバーが苦手とされるシチュエーションで、スムーズに運転するコツとは、どんなものなのでしょうか。
初心者や運転に不慣れな方にとって、怖いと感じたり苦手とする代表格が「駐車場での出し入れ」です。
はじめての場所の駐車場で、周囲のクルマに接触しないように気を遣いながら狭いスペースに何度も切り返して駐車するのが大変、と感じる人も多いようです。
そこで都内の自動車教習所で教官を務めた経験のあるI氏にコツを聞いてみました。
「まず元教官として申し訳ないなと思うのは、車庫入れや縦列駐車などを教える場合、教習所のコースでは周囲のポールなどを目印にハンドル操作を説明しているため、形式上は駐車できてしまうことです。
実際の路上での状況を想定できない教え方になってしまっているなと感じております。教習所内と実地では状況も違うため、難しく感じる人も多いでしょう」
実際の駐車場には周囲にクルマも多く、出入りの激しい商業施設などの駐車場では後続車からのプレッシャーもあって焦りがちです。
不慣れな人は焦ることで、ハンドルを切りはじめるタイミングが遅れ、その遅れを取り戻そうと急なハンドル操作やブレーキ操作になりがちだといいます
「初心者でありがちなのが、停めたい枠からまっすぐ進み、遠い場所でバックしはじめるケースが多いこと。しかもバックをはじめる角度が駐車スペースに対して直角気味な人が多いのです。
そのため1度のバック走行では進入角度が足りず、何度も切り返す必要が発生してしまうのです」(元教官I氏)
元教官のI氏によると、上手に停めるコツはバック操作しはじめる前のポジションが大切だといいます。
「自分が駐車したいスペースが左側にある場合、同じ左側に寄せておきます。
駐車したいスペースをいったん通り過ぎるように前進しながら、まずは右にハンドルを目一杯切ります。感覚的には駐車スペースに45度くらいの角度までリアが向いているイメージです。
停車した後に、ハンドルを左に切り、そしてゆっくりバックしながらハンドルで微調整していけば、割とすんなり駐車スペースに収まります」
もうひとつのポイントは、左のドアミラーで、左側のクルマの端を起点とした円を描くような動きをイメージするのがいいそうです。
とくに初心者の方はドアミラーでの目視がおろそかになりがちですので、バックカメラの映像よりもドアミラーと自分の目による目視で操作したほうがいいということです。
「左側に寄りすぎたと思ったら前進して微調整しながらバックすれば、切り返しは1、2回で済みます。あとAT車の場合はアクセルを踏まずに、クリープ現象(AT特有のクルマが動く現象)を使いながらバックし、ブレーキでコントロールするように操作してみてください」
■上手な車線変更のためには、入りたい車線の速度に乗ることが重要
駐車のほかに苦手意識を持たれやすいのが「車線変更」です。
片側2車線以上ある道路を走行しているクルマが車線変更しようとしたら、後続車から強烈なクラクションを鳴らされていた、という光景を見たことがある人もいると思います。
クラクションを鳴らされて「怖い思いをした」と感じたドライバーのなかには、車線変更しようとした自車の速度が周囲の速度(流れ)に乗っていないという自分のミスが原因だった、というものもあるといいます。元教官のI氏は次のように話します。
「初心者にありがちなのが、『安全運転=ゆっくり走る』と勘違いしてしまうことです。
スピード超過はもちろん良くありませんが、周囲にはその車線なりの流れ(速度)があります。その流れより遅いクルマが目の前に割り込んできたら、危険だと感じますよね」
基本的に、道路上ではクルマは常時動いています。たとえば時速50キロで流れている車線に時速40キロで合流した場合(速度差が時速10キロ)、1秒間で約2.778mずつ接近する計算になります。
ウインカーを出してから車線変更まで何秒かかかることを考えると、車間距離はすぐに詰まってしまうのです。
「車線変更の上手なコツは、入りたい車線の速度に自分のクルマの速度を合わせることです。速すぎたり遅すぎたりするから、スムーズに合流や変更ができないのです。常に周囲の流れを意識して、流れに乗る運転を心がけるといいかもしれません」(元教官I氏)
ウインカーは、道路交通法(施行令第21条第1項)で、進路を変える場合には3秒前に合図を出すことと定められています。
周囲に車線変更の意思を示すことも厳守して車線変更をすれば、スムーズに完了できるはずです。
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最近のナビは優秀で、降りたいIC(インターチェンジ:高速の入り口や出口)が近付くと音声で教えてくれます。
しかし、古いデータのナビを使用している場合は新しいICを表示しないので分からなかったという場合や、運転そのものに集中してしまい、気付いたら降りたいICやJCT(ジャンクション:ほかの路線との立体交差)を通過してしまった、ということも考えられます。
そして、IC付近で降りるのか降りないのかで迷ってしまいフラフラするのも、初心者ドライバーにありがちな行動といわれています。
気づかずに目的のICやJCTを通り過ぎてしまった場合は、慌てずに次のICを目指しましょう。
次のICでは、ETC装着車であっても一般レーンに進み、料金所のスタッフに申し出るのが正しい対処法です。目的地までの戻り方を料金所スタッフが案内してくれます。
高速の場合、1区間がそれなりの距離になりますが、慌てると重大な事故を起こしかねません。「次のICで戻ればいいや」くらいのゆったりした気持ちで運転することも大切です。
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駐車にせよ車線変更にせよ、ウインカー操作やハンドル操作を早めに開始、でも操作は丁寧に、ということを忘れなければスムーズに運転できるということです。