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日本も学ぶべき? 中国の高速道路「あおり運転」皆無なぜ? 「最低速度110キロ」低速は厳罰も

くるまのニュース 2020年8月18日 9時10分

国内の高速道路において、最高速度が120km/hに引き上げられる見通しです。世界的に見ても、最高速度を120km/h前後に定めている国が多いのですが、なかでも中国の高速道路では最高速度120km/hのみならず、最低速度が110km/hに設定されているレーンもあります。日本と中国の高速道路では、どのようなところが違うのでしょうか。

■世界的に見て高速道路の120km/hは速い? 遅い?

 警察庁の発表によると、新東名では2020年度末(2021年3月末)まで、ほかの高速道路でも数年以内に最高速度が120km/hに引き上げられる見通しとなりました。

 120km/hという最高速度は、世界的に見てどうなのでしょうか。

 日本ではすでに2019年3月1日より120km/h試行が実施されている新東名や東北道の一部区間も存在しますが、高速道路における最高速度は100km/h以下に設定されています。

 アメリカは州によって最高速度が異なっています。多くの州は65mphから75mph(112km/hから120km/h)ですが、サウスダコタ州やモンタナ州、ネバダ州は80mph(128km/h)、最高はテキサス州の州道130号線(一部有料)で85mph(136km/h)とかなり高い速度です。

 イギリスは乗用車、オートバイ、乗用車ベースのバンなどは112km/h。速度無制限のイメージが強いドイツのアウトバーンも多くの場所で130km/hが推奨最高速度として設定されており、都市部では120km/h、110km/h以下の制限を課しています。

 イタリアやフランスなども130km/hが最高となっており、120km/hから130km/hという速度はEU加盟国における高速道路の一般的な制限速度となっているようです。

 こうしてみると、日本の最高速度120km/hは欧米に比べても高くも低くもないようで、むしろやっと120km/hになるという印象です。

 日本には世界屈指の品質を誇る自動車メーカーが多数あり、高速道路も非常に良く整備されています。そして、人口10万人当たりの交通事故死亡者数は3.1人と先進国最下位レベルで、歩行者事故が多いため高速道路上での事故に限るとさらに下がるでしょう。

 それでは、韓国や中国ではどうでしょうか。

 韓国ではかつて120km/hの時代もありましたが、韓国在住の知人に聞いたところ現在は引き下げられており、最高速度は原則100km/h(一部区間110km/h)となっているとのことでした。

 また、ソウル・釜山間では80km/hから60km/hに引き下げた区間もあるそうです。「自動車1万台」「走行1億km」あたりの交通事故死者数が世界で突出して多い韓国は、引き下げの方向に動いています。

 注目すべきは中国の高速道路です。2009年にアメリカを抜いて世界最大の自動車市場となった中国では、自動車の保有台数が2億7千万台(2020年6月末)で、これは日本の保有台数約8200万台(同3月末)の約3.3倍です。

 中国の最高速度は「中華人民共和国道路交通安全法」にて2004年より120km/hに設定されていますが、注目すべきは、ほかにはあまり例のない110km/hの「最低速度」です。

 車線ごとに走れる車種と最高・最低速度が厳格に定められており、日本で「追越車線」に相当するもっとも左の車線では最高120km/h、最低110km/hで走行しなくてはなりません。

 この車線を「貨車(トラック)」が走行することは禁じられており、「客車」「小客車」(日本でいうところの普通乗用車と小型乗用車のイメージ)のみが走れます。

 車線が分かれており、また最低速度が110km/hに設定されているので、中国では追越車線をノロノロ走る車は存在しないのです。

■実際、中国のドライバーは法律を守っているの?

 中国のドライバーは最高速度・最低速度、車線の区分を守っているのでしょうか。中国北京市の警察に在籍している高(コウ)さんは以下のように話してくれました。

新東名の120km/h試行区間(写真:加藤博人)

「中国の高速道路はいたるところにカメラがあり、取り締まりが厳しくおこなわれています。なので、ドライバーは速度も車線もしっかり守って走行しています。

 スピードが出ない、出せない遅い車が左車線(追越車線)に入って後続車の進路をふさぐこともありません」

 最高120km/h、最低110km/hが厳格に守られているのであれば、日本のように追い越し車線をふさいで走るクルマもいないでしょう。

 高速道路を使う理由のひとつである「お金を払ってでも早く目的地に着きたい」というドライバーにとっても、ストレスのない走りが可能となりそうです。

 日本の高速道路にも、路肩側の車線(第1通行帯)が大型(特定中型貨物)トラックの通行帯として指定されている区間があります。

 この標識がある区間では、事故、工事、道路損壊などの理由以外で、大型トラックが第3通行帯を走行することはできません。なお、大型トレーラは法定により左側車線のみが走行車線となるので、ほかの車線は走行できません。

 しかし実際は、リミッターによって90km/hしか出せない大型トラックが追越車線をふさいでいる光景を良く目にします。

※ ※ ※

 警察庁の発表による「最高速度120km/h(検討)区間」は、実勢速度が平均100km/h以上、死傷事故率が高くない、大型貨物による渋滞が少ない、などの条件をクリアした区間で、片側3車線(6車線道路)の道路を優先して検討されています。

 東北道(浦和ICから佐野スマートIC、52.9キロ)や常磐道(柏ICから水戸IC、71.2キロ)、東関東道(千葉北ICから成田JCT、26.1キロ)などが検討区間になります。

 なかでももっとも距離が長い新東名(御殿場JCTから浜松いなさJCT、144.7キロ)はすでに試行がおこなわれている区間(新静岡ICから森掛川IC)、50.5キロ)を含めて、今年度中に120km/hの正式運用が始まるようです。

 筆者(加藤久美子)はつい数日前に新東名を全線走行しましたが、随所で「6車線化」のための工事が進められていました。

 新東名は設計段階から120km/h(一部非公式で140km/h)を想定していたため、車線も広くとってあり、6車線化の工事はそれほど大掛かりなものではない印象でした。

 新東名の御殿場JCTから浜松いなさJCTの144.7キロを100km/hで走行した場合と、120km/hで走行した場合、時間にどれくらい差が出てくるでしょうか

 実際に、この速度で走り続けるのは不可能だと思いますが、距離÷時間=速度で計算してみると、100km/hでは約86分、120km/hでは約72分と、14分の違いとなります。

 時間にしてみればそんなに大きな違いにはならないかもしれませんが、試行区間を何度か走った経験からすると、120km/hまで出して走れることはなかなか爽快です。

 遅い車も速い車も走行すべき車線を守って、誰もがストレスなく走れるようになれば、あおり運転の大幅減少も期待できそうです。

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