クルマに関するトラブルのひとつであるエンジンのオーバーヒートは、名前は比較的知られているにも関わらず、具体的にどういう事象が起きているのかについて知らない人も少なくありません。オーバーヒートを起こしたエンジンのなかでは、なにが起きているのでしょうか。
■なにが熱くなっている? クルマのオーバーヒートとは
クルマのトラブルとして、よく知られているもののひとつにエンジンのオーバーヒートがあります。人の心理状態を表す比喩表現としても使われる言葉ですが、実際に何が起きているのかについては、知らない人もいます。
はたして、オーバーヒートしているエンジンのなかでは、何が起きているのでしょうか。また、オーバーヒートについてドライバーはどれほど注意する必要があるのでしょうか。
オーバーヒートとは、エンジンのなかを流れる冷却水の温度が上がりすぎることで、エンジンが正常に働かなくなってしまう現象のことを指します。
オーバーヒートしたクルマは煙が立ち上っているイメージがありますが、これは沸騰した冷却水の水蒸気によるもので、症状によってはラジエーターキャップなどから吹き出してしまうこともあります。
また、そのまま走り続けると、エンジントラブルの原因となります。
エンジンがオーバーヒートする原因とは、いったいなんでしょうか。自動車メーカーに勤務した経験のある元エンジニアは、次のように話します。
「オーバーヒートの原因は、ラジエーター(冷却水を冷やす装置)やゴムパイプなどの劣化による冷却水漏れ、電動ファンやウォーターポンプの作動不良などが挙げられます。
じつは、最近のクルマでオーバーヒートする可能性はかなり低くなっているので、一般的なクルマの使用方法の範囲内では、あまり神経質になる必要はありません。
注意した方が良いのは、旧車やクラシックカーに乗る場合や、またはクルマに高い負荷がかかっている場合などです。
なお、エンジンオイルが不足していたり劣化している場合や、雪などでラジエーターが塞がれた場合も、オーバーヒートの原因となる場合があるので、そのときは注意が必要です」
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オーバーヒートが起きると、メーター内の水温計の針が高くなり、警告灯が点灯します(水温計がないクルマもあり)。
実際に愛車がオーバーヒートした経験のある都内のドライバーに、当時の話を聞きました。
「友人とスキーに出かけたとき、かなり雪が降っている山道を走っていると、水温計が上がっているのを確認しました。
周囲の安全を確保しつつ、クルマを停めて周囲を確認したところ、フロントグリルに大量の雪が付着していました。ラジエーターに風があたっていなかったのが原因だったのだと思います」
このように、オーバーヒートしたと分かった場合は、速やかにクルマを安全な場所へ停車させることが、まず最初におこなうべきこととなります。
■オーバーヒート時の正しい対処法は
オーバーヒートしてしまった場合、停車後はどのように対処するのが望ましいのでしょうか。ロードサービスを展開するJAFは、次のように説明します。
「エンジンがオーバーヒートしたら、クルマを停めた後はエンジンを切らずにボンネットを開け、エンジンルームの風通しを良くします。
エンジンをすぐに切ってしまうと、冷却水の循環が止まることで、一気に温度が上昇したり、エンジンオイルの循環が停止した後、油膜切れを起こして再始動時にエンジンが焼き付く原因となります。
ただし冷却水が漏れていたり、冷却ファンが回っていない場合は、ただちにエンジンを切ってください。
このとき、エンジンルームは高温になっているため、ボンネットを開けるときは十分に注意してください」
なお、エンジンの冷却が十分におこなわれていないまま、ラジエーター液の量を確認することは大変危険です。熱湯や蒸気が吹き出すことで、やけどなどの危険性があります。
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最近のクルマではあまりオーバーヒートについて神経質になる必要はないとはいえ、いざというときの対処法を知っておくことは重要といえます。
オーバーヒートの後は、まずは十分にエンジンを冷やし、並行してロードサービスや販売店などに連絡を取って対応するのがよいでしょう。
また、冷却水やオイル類を定期的に点検することで、トラブルを未然に防ぐのが賢明といえます。