ひと昔前のSUVやミニバンには、通称「きのこミラー」といわれるサイドアンダーミラーが装備されていました。なぜ最近のクルマでは見かけなくなったのでしょうか。
■減少傾向の「きのこミラー」は、技術の発達とともに衰退した?
かつてSUVやミニバンなどのボディサイズが大きいクルマに採用されていた「サイドアンダーミラー」は、近年の新型モデルで姿を見かける機会が減少しましたが、なぜ見かけなくなったのでしょうか。
かつてボディサイズの大きな国産SUVやミニバンの定番装備となっていたサイドアンダーミラーは、フロントフェンダー部分からきのこのように生えていたことから、一部では「きのこミラー」と呼ばれていました。
1970年代から1980年代にかけて、RV(現在のSUV)やバン、1BOX(現在のミニバン)などといった車種による左折巻き込み事故が多発したことにより、1990年代のはじめに登場した安全装備です。
サイドアンダーミラーは、運転席から死角となる助手席側の空間をミラー越しに確認できる装備として、各自動車メーカーが相次いで採用しました。
2003年に国土交通省は、クルマの視界を確保する間接視界基準の導入を決定。2005年1月1日以降の生産車からサイドアンダーミラーの取り付けが義務付けられています。
2016年6月には、「間接視界基準に係る国際規則の採用」にともない、設置が義務付けられているサイドアンダーミラーと同等の視界が確保されるカメラモニタリングシステムで代用することが許可されました。
これにより、最近では小型カメラを助手席側のドアミラー下部に取り付けて、その映像をディスプレイで確認できる機能を採用するクルマが増加しています。
カメラとモニターによる確認は、これまでのサイドアンダーミラーよりも圧倒的に視野性が向上した結果、サイドアンダーミラーを付けたクルマを見かけなくなったのです。
さまざまなサイズのSUVやミニバンをラインナップするトヨタの販売店スタッフは次のように話します。
「SUVは、一般的なクルマに比べて車高が高く設定されており、助手席側が見えづらくなることから、小さなお子様を巻き込んでしまうといった事故が起こりかねません。
こうした事故を防止するため、十分な視界を確保するためにサイドアンダーミラーが装備されていましたが、最近のクルマにはカメラ付いており、モニターで左側の視界を十分に確認できるため、サイドアンダーミラーが付いていないことが多くなりました。
ただし、グレードやオプションによって搭載することが可能です。そのため、サイドアンダーミラーが装着されたままのモデルもあります」
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また、前述のようにサイドアンダーミラーは、その形状やデザイン性から「ダサい」という声もあります。そのようなデザイン面での影響について、国産メーカーのデザイン担当者は、次のように話します。
「最近のクルマは、出来る限り凹凸や余計な突起物を無くす方向性になっています。これは、どのメーカーにも同じことがいえ、その要因として第一に燃費性能の向上が挙げられます。
空気抵抗が大きくなる突起物は、その分燃費に影響するため、可能な限り燃費性能を向上させる努力をデザインに反映させているからです。
もうひとつは、そもそものデザイン性を考えた際に見た目的に不要な物を排除したいということがあり、かつては安全上や技術的に装備していたものでも代用出来る物が登場したのであれば、変更していきます。
似たような物として、クルマのアンテナはかつては棒状で長いタイプが主流でしたが、徐々に小型化していき、最近ではシャークアンテナという空気抵抗も考慮したタイプに変わっています」
■サイドアンダーミラーを取り外すと車検に通らない?
安全対策として取り付けられるサイドアンダーミラーですが、純正で装着されているものを取り外すことは問題ないのでしょうか。
基本的に、サイドアンダーミラーは法律で設置が義務化されているため、取り外した場合には車検に通過することができないうえ、公道を走ることもできません。
ただし、前述のカメラを使った装備や車検対応の代用品を装着することで、公道を走ることは可能です。
カー用品店では、「サイドアンダーミラー取り外しキット」といった商品を展開していますが、市販されているなかには、一部車検に適合しない商品も存在します。
付け替えるタイプの場合、道路運送車両法の保安基準が定める外装の技術基準で「外装は曲率半径2.5mm未満の突起を有してはならない」と決めらており、突起状態によっては車検に通らない可能性が高くなるのです。
かつては定番装備だったサイドアンダーミラーですが、法改正や技術の進化によってその姿が減少しつつあります。
最近では、レクサス「ES」やホンダ「ホンダe」などに、ドアミラーの代わりにカメラとモニターで代用するシステムも登場していることから、今後はドアミラー自体が珍しい存在になる日もくるかもしれません。