これまで販売されたクルマのなかには、先駆け的なモデルであったり、唯一無二といえるモデルがあります。そうしたクルマは決して派手な存在ではありませんが、いまも語り継がれる存在です。そこで、新たなジャンルを開拓した先進的なクルマを3車種ピックアップして紹介します。
■このクルマが無かったらどうなっていた!?
これまで、世界中のメーカーから数多くのクルマが発売されていますが、そのなかには先駆け的なモデルや、唯一無二となったモデルがあります。
そうしたクルマの多くは決して派手なモデルではありませんが、後世でも語り継がれるような存在です。
そこで、新たなジャンルを開拓した先進的なクルマを3車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「ワゴンR」
現在大ヒット中のトールワゴン系やハイトワゴン系の軽自動車が登場する以前は、軽ワゴンというとキャブオーバータイプの商用バンをベースにしたものが主流で、軽自動車メーカー各社から販売されていました。
リアドアにスライドドアを採用し、室内も広く使い勝手は良かったものの、商用車のイメージは払拭できませんでした。
そうしたなか、1993年にスズキ初代「ワゴンR」が登場。トールワゴンという軽自動車の新たなジャンルが確立された革新的なモデルでした。
スタイルは当時、高い人気を誇っていたミニバンをコンパクトにしたイメージで、その後の軽自動車のデザインにも大きな影響を与えました。
また、左側が2ドア、右側が1ドアと左右非対称なつくりが、初代ワゴンRならではの特徴で、安全面への配慮とコストダウンが図られています。
エンジンは、デビュー当初は660ccの直列3気筒自然吸気のみでしたが、1995年のマイナーチェンジでターボエンジンを追加して余裕ある走りを実現。
それまで軽自動車というと女性ユーザーをメインターゲットとしていましたが、初代ワゴンRは男女問わず人気を博し、進化を続けつつもコンセプトは変わらずに現在に至ります。
●ホンダ「オデッセイ」
1994年にホンダ初代「オデッセイ」が発売されました。それ以前から、他社からもミニバンが販売されていましたが、1BOXバンの流れを汲んだFR駆動のモデルが主流で、室内の広さは特筆するほどではありませんでした。
そんななか発売されたオデッセイは、乗用車のシャシをベースにFFを採用したことで、低床の広い室内を実現し、6人乗りもしくは7人乗りの3列シートのミニバンとして大ヒットを記録します。
ボディは3ナンバー専用サイズのステーションワゴンタイプで、ワンボックスカーとは明確な違いを主張するように、前傾するボンネットからルーフに至るラインが新鮮な印象でした。
エンジンは2.2リッター直列4気筒を搭載し、トランスミッションは4速ATのみ。コラムシフトを採用したことにより前席から後席へのウォークスルーが可能となっています。
また、リアドアはワンボックスカーと決別する意味でヒンジドアとなっており、電動スライドドアの普及以前だったこともあって、当時はネガティブな要素ではありませんでした。
オデッセイのヒットを受け、ホンダは1996年により小型で全高の高いミニバンの「ステップワゴン」を発売してヒット作となります。他社も同様なFFミニバンを開発して追従し、現在に至るミニバン市場を形成しました。
■いまでは唯一無二の存在となったミニバンの祖先とは
●三菱「デリカ スターワゴン」
日本のミニバンで悪路走破性能が高い唯一無二の存在なのが三菱「デリカ:D5」です。キャンプなどアウトドアレジャーを好むファミリー層から、絶大な人気を誇っています。
このデリカ:D5の源流といえるモデルが「デリカ スターワゴン」です。
多人数乗車のワゴンは1BOXタイプが主流だった1979年に、デリカ スターワゴンが誕生。そして、1982年に4WDモデルが追加されました。
駆動方式は「ジープ」で実績のある、手動でトランスファーギヤを切り替えるパートタイム4WDを採用。シャシはトラックと同様なラダーフレームとすることで、シンプルな構造から耐久性や強度が高く、優れた悪路走破性を発揮しました。
最低地上高が高められ大径のオフロードタイヤを履き、フロントにはガードバーを装備するなど、外観も本格的な4WD車であることをアピール。
その後は代を重ねて、より実用的かつ洗練されたミニバンとして進化しますが、コンセプトは普遍で悪路走破性能の高さはいまも健在です。
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いまではファミリーカーというとミニバンと軽ハイトワゴンが主流ですが、かつてはセダンや2BOXのコンパクトカーがファミリーカーとして人気だった時代があります。
なかでも2BOX車は2ドアのモデルが多く、使い勝手は良いとはいえませんでしたが、それでも文句はあまり出ませんでした。
現在は電動スライドドア車がファミリーカーの必須条件ですから、時代とともにニーズが変化していることがわかる、顕著な例ではないでしょうか。