2020年8月19日にマイナーチェンジを遂げたトヨタの新型「ハイラックス」。日本で唯一のピックアップトラックですが、最近ではファッションの一部として所有しているオーナーも少なくないといいます。マイナーチェンジで進化した部分はどこなのでしょうか。
■顔つきがよりワイルドに! 新型「ハイラックス」の特徴とは
2017年に日本での販売が再開されてから、好調な売れ行きを見せてきたトヨタ「ハイラックス」。海外にわずかに遅れて、2020年8月19日にマイナーチェンジモデルが登場しました。
マイナーチェンジ前後では、どのような部分が進化しているのでしょうか。
今回のマイナーチェンジでは、フロント回りとリアコンビネーションランプのデザインが見た目上の変化です。
一見して分かるのはフロトグリルの新デザイン。マイナーチェンジ前の特別仕様車である「Z ブラックラリーエディション」のみに採用されていた六角形のヘキサゴングリルを全グレードに採用しました。
このヘキサゴングリルは、トヨタの北米向けモデルである「タコマ」や「タンドラ」といったピックアップトラックに採用されているもので、これらとイメージを統一した形になっています。
意匠はZブラックラリーエディションよりも立体的で大型化されました。上級グレードである「Z」にはグリルの周囲を囲むようにメッキ加飾が施されているため、遠くからでもハイラックスと分かる顔つきに変貌しています。
ベーシックグレードの「X」にはメッキ加飾はなく、往年のハイラックスを思わせるようなスッキリした顔つきになっています。各部のカスタムを前提にしているユーザーには、こちらの方が人気が出るかもしれません。
リアコンビネーションランプは、どこかタンドラのそれにも似ていますが、タンドラのものよりも立体的で、LEDの光が強調されたデザインが採用されました。
日本発売からわずか3年で(8代目としては5年)、大幅なイメージチェンジを図ったハイラックスですが、乗り味が大きく変わったこともトピックのひとつです。
マイナーチェンジ前のハイラックスはリアサスペンションが硬く、ユーザーからも乗り心地が良くないという声が出ていました。
ハイラックスのリアリーフスプリングは、仕向地により3タイプのバネレートのものが用意されていたようで、日本仕様には従来もっとも硬い仕様が装着されていました。
日本市場では、荷台にフル積載することは希という判断がなされたのか分かりませんが、空荷状態では道路の凹凸でもボディ後部が跳ねるような有様。
オフロードで大きな石を乗り越える際などは、ガツンという衝撃が身体を突き抜けるような感覚さえありました。
そうした市場の声を反映させたのか、今回の仕様変更においては、リアサスペンションを一新。マイナーチェンジ前よりも容量が大きく太いショックアブソーバーを採用して、減衰力をダウン。
リーフスプリングはマイナーチェンジ前より硬いものを採用することで全体のハンドリングのバランスを取りながら、明らかにソフトな乗り心地に改善しています。
フロントサスペンションはマイナーチェンジ前と変更はありませんが、乗った瞬間に「しなやか!」と分かるほど劇変しており、普段乗りが非常にラクになりました。
車酔いしやすい人からすると「柔らかすぎて酔う」ということもあるようですが、大方のユーザーは好意的に受け止めるのではないでしょうか。
砂利の路面も少しだけ走ってみましたが、車体に伝わるはずの音や揺れを上手く処理しており、それでいて路面追従性は良好でした。
舗装路のコーナーでは多少アンダーステアリング傾向ですが、マイナーチェンジ前と比べて運転がしづらくなったかといえば、気になるほどではありません。「ランドクルーザープラド」のようなオフロードSUVと同じレベルと考えればいいと思います。
■マイナーチェンジ後は、細かな部分も進化している?
今回のマイナーチェンジでは、新機構として「オートLSD」の採用。これは「Z」のみに採用されたメカニズムですが、海外製の最新の電子デバイスです。
LSDというとディフェレンシャルギアのなかに組み込まれたメカニカルなもので、片輪が空転したときにもう片輪の差動を制限する装置を思い浮かべる人が多いと思います。
このオートLSDはそれを同じ働きを、ブレーキの制御によって発揮させるものです。ハイラックスには、4WD時に働く「アクティブトラクションコントロール」という機能が付いています。
これは4輪のうち1輪でも空転すれば、それをブレーキで制御し、ほかの3輪に駆動トルクを配分させるというもので、これを後輪駆動時に利かせるのが、オートLSDというわけです。
オートLSDの効能にはさまざまなシーンが考えられますが、ピックアップトラックは空荷の場合に軸荷重が少ないため、当然タイヤのトラクションも低下します。
それゆえ、雨の日の舗装路のコーナーや降雪地での駐車場からの発進時などは、オートLSDが助けてくれそうです。
小さな部分ですが、メーターも変更されています。メーター周囲のメッキリングが時計のベゼルのようなデザインになったほか、従来の青色透過光は廃止されて、オプティトロンメーターになっています。
さらにメーター中央部に、さまざまな情報を表示する「4.2インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ」が新たに採用されています。
加えて、基本的なスペックは同じですが、ディーゼルエンジンの制御を低燃費実現のために変更し、同時にアイドリングストップ機構を搭載。これにより従来よりも15%も燃費性能を向上させました(JC08モードで11.8km/L→13.6km/L)。
マイナーチェンジ前のハイラックスも十分に魅力的なモデルでしたが、マイナーチェンジ後の同モデルはよりユーザーフレンドリーになったように思いました。
そもそもピックアップトラックをどのように使えば分からないという日本のユーザーは多いと思いますが、荷台の使用方法などそれほど考えずに、ファッションとして乗ればいいのではないでしょうか。
都市部での駐車場の問題、さらには1ナンバーのデメリットなどもありますが、ピックアップトラックの魅力はそれを凌駕して余りあります。
まさに世界的にSUT(スポーツユーティリティトラック)のムーブメントが来ている今こそ、ハイラックス所有に踏み切る好機かもしれません。