かつて、チューンナップやドレスアップされたクルマを販売する「コンプリートカー」は、チューニングメーカーやショップが手掛けるのが一般的でした。しかし、近年では自動車メーカーやメーカー系列の会社が販売することも珍しくありません。そこで、メーカー系のド派手なコンプリートカーを3車種ピックアップして紹介します。
■クオリティが高く派手なコンプリートカーを振り返る
一般的に「コンプリートカー」というと、エンジンや足まわりをチューニングしたり、エアロパーツなどでドレスアップしたモデルをそのまま販売することを指し、かつてはパーツメーカーやショップが手掛けていました。
一方で、近年はクルマの合法的な改造は市民権を得て、自動車メーカーやメーカーの関連会社がコンプリートカーを販売することも、珍しくなくなりました。
そこで、これまでに発表・発売されたメーカー系コンプリートカーを、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「GRスープラ 3000GTコンセプト」
アメリカのネバダ州にあるラスベガスで毎年開催される「SEMAショー」は、アメリカ最大級のアフターパーツのショーで、日本の「東京オートサロン」と、ドイツの「エッセンモーターショー」と並び、世界3大カスタムカーショーのひとつと呼ばれています。
このSEMAショーには数多くの大胆にモデファイされたカスタムカーが出展されますが、これまで日本のメーカーも積極的に参加してきており、2019年のショーではトヨタから「GRスープラ 3000GTコンセプト」が出展されました。
このモデルは、TRDブランドを展開してきたトヨタテクノクラフトとジェータックス、トヨタモデリスタインターナショナルの3社が統合され、2018年に発足した新会社、TCD(トヨタカスタマイジング&デベロップメント)が企画・開発。
GRスープラ 3000GTコンセプトは、1994年に4代目(A80系)スープラ用にTRDが開発したワイドボディキットを装着するコンプリートモデル、「TRD3000GT」をオマージュしています。
最大の特徴は、ノーマルから大きく変更されたボディで、フロントバンパーには大型化された専用のフロントスポイラーを装着し、エアロボンネットはTRD3000GTのイメージを引き継いだ4か所の冷却用スリットが入っています。
フロント/リアフェンダーは大径タイヤを収めるためにオーバーフェンダーを装着。サイドスカートやリアアンダースカートはすでに発売中の「パフォーマンスライン」と同形状のアイテムですが、ワイドボディ化に合わせて取り付け部の変更がおこなわれています。
リアにはエアロボンネットと同様にTRD3000GTをイメージさせるデザインの大型ウイングが装着され、ボディカラーはアルミにヘアライン加工を施したようなブラッシュドシルバーとブラッシュドゴールドのワンポイントが入り、このシルバーもTRD3000GTをオマージュ。
ほかにもブレンボ製ブレーキキットや、HKSのマフラー、テイン製の車高調などのパフォーマンスパーツが奢られ、見た目だけでなく走りもグレードアップされていました。
●日産「シルビア オーテックバージョンK’s MF-T」
日産「シルビア」は国産スペシャリティカーの先駆け的存在で、初代は1965年にデビューし、代を重ねるごとにスポーツカー色が色濃くなりました。
1988年に発売された5代目(S13型)はデートカーとして大ヒットを記録。そして、1994年に登場した6代目(S14型)ではトップグレードに220馬力を誇るハイパワーなエンジンを搭載するなど、FRスポーツとしてのポテンシャルが高められました。
この6代目シルビアをベースに1997年、日産の特装車などを製造する関連会社のオーテックジャパンが「シルビア オーテックバージョンK’s MF-T」を製作。
シルビア オーテックバージョンK’s MF-Tは、後期型の「ツリ目」モデルをベースに、エンジンは専用のターボチャージャーなどでチューニングされた2リッター直列4気筒ターボを搭載。最高出力はベースの220馬力から250馬力に向上しています。
外観では専用フロントバンパーにサイドステップ、さらに最大の特徴が大型のリアスポイラーの採用で、ハイパフォーマンスさを強調。
内装もホワイトメーター、MOMO製スポーツステアリングなどを装備し、専用の生地を採用したシートやドアトリムによって、特別な1台に仕立てられています。
ノーマルとは明らかに異なるフォルムのシルビア オーテックバージョンK’s MF-Tは、ベース車のモデルチェンジのためわずか1年ほどで生産を終えてしまい、いまではかなり貴重なモデルです。
■エグいほどのエアロパーツが装着されたモデルとは!?
●スバル「インプレッサ S201 STiバージョン」
1989年に発売された初代「レガシィ」から、スバルは世界ラリー選手権に本格参戦しました。そのモータースポーツ活動を支えてきたのが「スバルテクニカインターナショナル」(以下、STI)で、これまで数多くのコンプリートカーも手掛けています。
なかでも、初代「インプレッサWRX」をベースとしたコンプリートカー「インプレッサ S201 STiバージョン」(以下、S201)は、斬新かつ大胆なボディのモデファイが注目された1台です。
2000年に発売されたS201は、ダートを走行するラリーをイメージさせるインプレッサに対し、オンロードでの走りを追及したモデルとして開発。
エンジンは2リッター水平対向4気筒ターボ「EJ20型」をベースに、専用ECUと吸排気系の変更により、最高出力はノーマルから20馬力アップの300馬力まで向上させています。
足まわりには車高調整式サスペンションと、ピロボールを用いたリンク類が組み込まれ、オンロードに特化したセッティングによりダイレクトな操縦性を実現。
外観では、グリル一体式のフロントエアロバンパー、大型エアスクープ、砲弾型ドアミラー、サイドスカート、ダブルウイングリヤスポイラー、ディフューザー形状のリヤエアロバンパーなどが装着され、ノーマルの面影が無いほどの迫力あるフォルムに変貌しています。
なお、限定台数は300台で、当時の価格は390万円(消費税含まず)と、モデファイの内容の割にはリーズナブルだったといえるでしょう。
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クルマの改造をおこなうことは、自分の好みに仕上げるという楽しさがあります。一方で、改造にはデメリットもあり、操縦性のバランスが崩れたり、クルマの寿命が短くなるケースや、パワーアップすることで燃費の悪化などを覚悟しなければなりません。
しかし、愛車をモデファイすることは、そうしたデメリットを上まわるほどの魅力があるのも事実です。
改造やドレスアップをおこなう際には、愛車のバランスを考え、やりすぎに注意しましょう。