1990年代のランボルギーニといえば、「ディアブロ」一択しかなかった。そのディアブロのシリーズ最後を飾る知られざるスペシャルモデルとは、どのようなクルマなのだろう。
■ランボルギーニが「ディアブロ」一択しかなかった冬の時代
V型12気筒ミッドシップの「アヴェンタドール」、同じくV型10気筒エンジンをミッドシップする「ウラカン」、そして世界で初めてSSUV=スーパースポーツ・ユーティリティ・ヴィークルを名乗ったV型8気筒SUVの「ウルス」というシリーズモデルに、さらに魅力的な限定車を加えれば、華々しいモデルラインナップが展開されている現在のランボルギーニ。
だが1990年代のランボルギーニが生産したのは、唯一「ディアブロ」のみであった。
ディアブロは、「カウンタック」の後継車として1990年に誕生し、さまざまなモデルを派生していく。
ビスカスカップリングをセンターデフに使用した4WDモデルの「VT」や、オープン仕様の「ロードスター」。軽量でかつ高性能なことで人気を博した「SV」などはその積極的な進化策の象徴的な例だ。
限定車としては、ランボルギーニの創立30周年を祝するアニバーサリーモデルとして誕生した150台の「SE30」が、その後シリーズモデルの「SV」を生む直接のきっかけとなっているし、また1998年に現在の親会社であるアウディがランボルギーニを手中に収めてからも、1999年モデルでのマイナーチェンジや80台の限定車「GT」、それをベースとするレース用車両「GTR」が誕生した。
だがアウディにとってもっとも重要なプロジェクトは、約10年にわたって生産を続けてきたディアブロを、次世代を担うニューモデルにフルモデルチェンジすることであった。
実際にランボルギーニではそのプロジェクトは進行していたものの、アウディはそれらすべてのプロジェクトをキャンセル。新たにニューモデル開発をスタートしたのだ。
そのニューモデルのデビューは2001年のフランクフルト・ショーとされた。したがってディアブロの生産は2000年で終了することが同時に決定したのである。
ランボルギーニはその最後を飾るディアブロとして、2000年モデルで誕生した「6.0」をベースとした特別仕様の「6.0SE」を用意するが、実はもうひとつスペシャルモデルを生産していた。
それが今回、ボナムス1793のクエイル・モーターカー・オークションに出品された、「ディアブロ VT ミレニアム・ロードスター」だった。
■知られざる「ディアブロ」限定モデルとは?
ディアブロ VT ミレニアム・ロードスター(以下ミレニアム・ロードスター)は、アメリカ市場向けの専売モデルということもあり、ランボルギーニのファンにも知名度はさほど高くはないのかもしれない。ただそれは逆にコレクターズアイテムとしての価値を高めることになるだろう。
ミレニアム・ロードスターの最大の特徴は、クーペモデルが2000年モデルで6リッターエンジンを搭載したにもかかわらず、従来までの5.7リッターエンジンを使用していることである。
正式な発表は2000年のNAIAS=デトロイト・ショーでおこなわれ、専用のボディーカラーとして、チタニウム・メタリックが設定されていた。
メカニズム的には、それまでの「VTロードスター」と同一だが、ファイナルは2.41から2.53へと変更され、カスタマーはよりダイナミックな加速を楽しむことが可能になった。参考までに今回の出品車は、新車から2万3509マイル(約3万7614km)の走行距離を刻んでいる。
さらに人目を引くのは、ボディのボトム部やリアのピラー、そしてリアウイングなどが、最初のオーナーによって独自にペイントされていることだろう。
本来のミレニアム・ロードスターは、前で触れたとおりチタニウム・メタリックのモノカラーで、このカラー・コンビネーションをどう評価するのかもオークションでは大きな要素となることは確かだ。
だがボナムス1793の解説によれば、このミレニアム・ロードスターが参加したイタリアのショー・イベントで、デザイナーのマルチェロ・ガンディーニはそれを称賛し、その記念にダッシュボードに署名をおこなったという。
現在このモデルは、20万−25万ドル(邦貨換算約2100万−2700万円)でオークションを継続中だ。発表時には30台の限定車とされたミレニアム・ロードスターだが、実際に販売されたのは10台程度ということだから、その希少性はきわめて高いといえるだろう。