日産は、2020年9月16日に新型「フェアレディZ(プロトタイプ)」を世界初公開します。昨今のスポーツカービジネスはかつてより勢いは衰えているものの、北米ではまだまだ魅力的な市場だといえます。最近では、2019年に約17年ぶりの復活を遂げたトヨタ「スープラ」が話題となり、北米市場でも順調に売れています。新型フェアレディZは、北米でのスポーツカービジネスでどのような展開を見せるのでしょうか。
■新型フェアレディZはスープラを超えられるのか
ついに2020年9月16日にオンライン中継で公開されることが明かされている日産の新型「フェアレディZ」のプロトタイプ。
市販はまだしばらく先と思われますが、登場から11年経ってのフルモデルチェンジとなる待望のニューモデルだけに期待は高まるところです。
現時点で公開されているティザー動画を見る限り「フロントはS30テイスト、リヤはZ32風」というデザインに生まれ変わるいっぽうで、プラットフォームや主体骨格は現行のZ34型から継承。
エンジンはスカイライン「400R」に搭載される「VR30DDTT」型の3リッターV型6気筒ターボが組み込まれるようです。
フェアレディZにとって久々のターボエンジンとなるこのユニットは、405馬力という大パワーだけでなくリニアなレスポンスと高回転域で炸裂するパワー特性が魅力。スカイライン400RではATとの組み合わせのみですが、次期フェアレディZではついにMTで楽しめるようになるのも朗報です。
フルモデルチェンジを受けた新型フェアレディZでも、メイン市場となるのは従来と変わらず日本に加えて北米となるでしょう。
1969年に発売された初代S30型は、北米において大ヒットし、「DATSUN(ダットサン)」ブランドで販売されていたとはいえ現地での日産の存在感を大きく高めました。そのため多くのZ好きがいます。
果たして、新型フェアレディZは北米で大ヒットを実現できるでしょうか。
北米(US)におけるフェアレディZの販売台数は、先代にあたるZ33型時代の2005年には2万7278台を記録しました。
しかしそこから伸びることはなく、現行Z34型のスタートとなる2009年でも新車効果により前年よりは3割ほど増やしているものの1万3117台。2019年は2384台に留まっています。
ただし明るいトピックもあり、今年(2020)年の上半期のフェアレディZのセールスはコロナ禍の影響を受けつつも1310台で2019年に比べると4.6%伸びました。
さらに、5月と6月は、新型コロナウイルスの影響と思われる4月以前の販売減から一転して2019年の月間平均販売台数と比べてもその1.5倍を超えるペースで売れているのは興味深い現象です。
ちなみに北米におけるスペシャルティカーやスポーツカーの販売状況をみると、2019年にもっとも売れたのはフォード「マスタング」で7万2489台。次いでダッジ「チャレンジャー」の6万997台、そしてシボレー「カマロ」の4万8266台と続きます。
その次となるとポルシェ「911」ですが、9265台と台数は一気に減少。やはりアメリカンマッスルカーの人気が高いことがわかります。
■ライバルとなるスープラはどうだった?
ところで、日本のスポーツカーとしてフェアレディZのライバルに相当するのはトヨタ「スープラ」でしょう。
2019年は7月からのデリバリーにもかかわらず半年で2884台を販売。2020年は8月までに3309台を販売していて、しかも3月から4月にかけて減った販売台数も5月以降は回復して毎月500台を超えオーバー。このまま推移すると年間5000台には届きそうです。
では、新型Zは北米で大ヒットモデルとなるのでしょうか。
北米においてもスポーツカービジネスが厳しくなっている昨今、かつてのように年間2万台を超えるような状況は難しいでしょう。
しかし、2000年代に入ってからのアメリカンマッスルカーのトレンドであるノスタルジックなスタイリングとこれまで以上に高い性能を併せ持つ新型のキャラクターが評価されれば、新型スープラと同じ年間5000台ほどの水準は期待できるかもしれません。
次期型フェアレディZとスープラを比較すると、フェアレディZはスープラよりも動力性能が高い可能性が高く、さらにMTも選択可能(スープラはATしか選べない)。
そのうえ価格もスープラに比べて大幅に安いのがスープラに対するアドバンテージといえるでしょう。