住宅地などで歩道と車道の間に段差スロープが置かれていることがあります。じつはこれ、公道では違法とみなされる可能性があるばかりでなく、場合によっては設置者に責任が課せられることも懸念されるということです。どういうことなのでしょうか。
■段差解消に便利な段差スロープは違法?
「段差スロープ」は、おもにクルマが通る場所で段差がある場合などに設置される屋外用品ですが、使用方法次第では法律違反となる可能性があります。いったい、どういうことなのでしょうか。
段差スロープはホームセンターなどで入手でき、クルマに限らず車いす、シニアカー、台車などの通過にも利用できて、生活の必需品となっている人もいます。
種類も豊富で、段差に合わせて5cm、10cm、15cmなどの高さが用意されており、段差スロープの左右に配置するコーナー用などもあります。
また、材質もさまざまで、衝撃を吸収し滑りにくいラバー製タイプに加え、樹脂製タイプ、金属タイプ、コンクリート製タイプもあります。
しかし、道路法第43条では道路に関しての禁止事項として、「みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼす虞(おそれ)のある行為をすること」としています。
そのため、車道と歩道の段差を埋めるために段差スロープを道路で使用する行為は、道路法違反となる可能性があります。
段差スロープについて横浜市道路局管理課に聞いたところ、「車庫や駐車場の出入口の前の道路上に乗り入れブロック(段差スロープ)や鉄板を置きっぱなしにしている行為は危険」なため、やめるよう呼びかけているといいます。
さらに「道路法に違反する可能性があるほか、お年寄りや幼児、身体に障害のある歩行者がつまずいたり、すべったりしてケガをすることがあり、バイクや自転車の転倒事故の原因にもなるとのことです。
万が一このような事故が発生した場合には、置いた人の責任も問われかねません」(横浜市道路局管理課)ということでした。
また、「雨の日には雨水の流れを止めてしまい、生活環境を悪くするなど街の美観を損ねることにもなる」(横浜市道路局管理課)とのことで、大雨が多発している最近の状況では、設置による影響がより懸念されます。
これらの周知のために、横浜市道路局管理課では、道路の適正利用についてチラシを各区土木事務所に配付し、区民まつりなどのさまざまな機会を捉えて、市民に理解してもらえるよう啓発に努めているとのことです。
■段差があって困っている場合の対処は?
では、段差をどうにかして解消したい場合はどうしたらよいでしょうか。
自宅の敷地と道路に段差がある場合、その部分のクルマの通過を可能にする本来の方法としては、歩道の切り下げ工事の実施があります。
横浜市の場合、自宅の車庫や駐車場の出入口の段差を低くする必要がある場合には、土木事務所長の承認を得れば、歩道や縁石を切り下げることができるとのことです。ただし、工事費用は自己負担になります。
工事にかかる費用について、別の地方自治体の土木事務所関係者は、「我々の側としては承認を出す立場で、工事には直接関与しないことから、はっきりとした金額はいえません。ただ、数十万円程度かかった事例を耳にします」とコメントします。
単独の工事よりも、住宅を建てる際などは、外構工事の一環として切り下げ工事をあわせておこなっておくとよいでしょう。
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段差スロープは安価ですが、公道に設置すると違法であるばかりでなく、起因する事故による高額な損害賠償や罰金を考えると安易に設置は考えものです。
段差が越えられないなどの事情があるなら、正式に手続きを経て切り下げ工事をおこなうことが望ましいですが、承認までの待ち時間や工事にかかる期間なども必要になります。
それまでは段差スロープを置きっぱなしにするのではなく、必要な時だけ置いてすぐ片付けるなどの対応が必要です。