2020年8月31日に発売されたトヨタの新型コンパクトSUV「ヤリスクロス」。自動車ジャーナリストの国沢光宏氏が公道での魅力や、気になる3つの弱点を紹介します。
■新型ヤリスクロスは優等生!? 気になる3つの弱点
トヨタ「ヤリスクロス」の売れ行きが好調だという。2020年9月中旬時点で人気グレードは納期3か月とのこと。
今回は、公道でジックリ試せたのでレポートしてみたいと思う。といってもヤリスクロスって「優等生」のため、良い評価になりがち。最初にガツンと弱点を指摘しておきたい。
弱点の筆頭はリアシートでしょう。基本的にコンパクトカーの「ヤリス」とキャビンスペースが同じだから、ホンダ「ヴェゼル」や日産「キックス」と比べたら狭い。いや、格下のトヨタ「ライズ」より窮屈です。
ただ本当に狭く感じるヤリスより座面が20mm高く、ドア開口面積も天地方向に高いため、身長183cmの筆者(国沢光宏)でも何とか座れる。ディーラーで実車チェックし、ぜひ競合車と比べて欲しい。
ふたつ目に乗り心地を挙げておく。「RAV4」や「カローラ」など最近のトヨタ車は乗り心地が滑らかになったが、ヤリスクロスの場合、路面からの突き上げ感を残す。
決定的に悪いというほどじゃないまでも、ヴェゼルやキックスと比べたって厳しい。もちろんガマン出来ないほど揺さぶられるわけじゃないから、これまた確認してみたらいいだろう。
みっつ目は3気筒エンジン。振動など問題ないレベルながら、普通のエンジンだとアクセルを少し大きく開けた加速時に音が賑やかです。ハイブリッドはむしろエンジン音を聞かせるようになっているため、賑やかでも気にならない。
ガソリンエンジンを考えているなら、少し速度域の高いところで追い越し加速してみて欲しい。スポーティだと思うなら問題なし。
この3点さえ許容出来るのなら、残りすべてを褒めてもいい。都市部でも取り回しに困らないコンパクトなボディで、しかも燃費抜群に良く、絶対的な動力性能だって十分確保されています。
安全性は極上。ハイブリッドの走行用電池を守るべくボディ後部が強固な構造になっており、激しく追突されても生存区間が潰れることなし。
■では、新型ヤリスクロスの乗り味はどうなの?
ということで売れ筋になっているというハイブリッドのFFから試乗といきましょう。
Dレンジをセレクトして走り出すと、元気一杯だ。ハイブリッドといえば走る楽しさよりECOというイメージを持つかもしれないが、RAV4やヤリスの世代からガラリと味付けを変えてきた。積極的にモーターアシストしており、アクセル踏むと前に出る。
サーキットで長い時間全開にしていると徐々に伸び悩んでくるけれど、一般道なら使い切れないほど。ハイブリッドとガソリンエンジンの価格差は37万円。税金などで7万円くらい安くなるから実質30万円差です。
10万kmくらい走ると燃費差分となり、5年くらいで乗り換えれば燃費差+下取り額の高さで元は取れる。ハイブリッドを選んでおくことをすすめたい。
標準装備となる全速度域アダプティブクルコンを使ってみたが、やはり便利。高速道路の渋滞などで絶大な威力を発揮する。
うっかりミスで追突することは無いし、これまた意識しないで車間距離詰まってあおり運転と間違われることだって無い。
レーンキープアシストも使える仕上がりになった。高速巡航では軽くハンドル握っていれば良いです。
続いてガソリンエンジンに試乗。スタートからグイグイ出るハイブリッドから乗り換えた直後は少しばかり元気無い感じ。
でも慣れれば、むしろ平均的な1.5リッターよりパワフルなほど。年間5000km程度のチョイ乗りしかしない&10年以上乗ろうと考えているような人ならリーズナブルなガソリンエンジンで不満無し。なんたって、179万8000円からとお買い得価格です。
4WDもチェックしてみた。一般的な乗用車用4WDは左右輪のLSD機能を持たないため、片側が雪無し路面でも片側アイスバーンの登り坂だとスタート出来ない。
ヤリスクロスはオフロードセレクト機能を持っており、ボタンひとつで本格的SUVに近い性能となる。雪道を走る機会のある人なら、4WDを選ぶといいだろう。