モデルレンジを拡充しているポルシェだが、どのモデルをドライブしてもポルシェDNAは受け継がれている。しかし、さらにポルシェ濃度が高いスーパースポーツを、ポルシェは10年に1度のサイクルでリリースしている。その最新モデルである「918スパイダー」の価値について考察してみた。
■腐ってもポルシェ、そして選ばれしポルシェ
ポルシェのプロダクション・モデルには、どれもスポーティなキャラクターが貫かれている。
例えばそれがSUVの「カイエン」や「マカン」であっても、あるいはサルーンの「パナメーラ」であっても、アクセルを踏み込めば、カスタマーはあたかも伝統の「911」をドライブしているかのような、官能的な走りに全身を包まれてしまうのだから、ポルシェというブランドの魅力が大きいことも理解できる。
●ポルシェがリリースした歴代ハイパースポーツの系譜
ポルシェは、これまでほぼ10年に1度のペースで、高性能で技術的な進化を遂げたハイパースポーツを市場に送り出してきた。
1963年には、2リッターの水平対向4気筒エンジンをリアミッドに搭載し、翌年のタルガフローリオを制した「904カレラGTS」。
その10年後の1973年には、当時のグループ4でホモロゲーションを取得するために限定生産され、今でも通称ナナサンカレラとして、超一級のコレクターズアイテムとなっている「911カレラRS 2.7」。
1986年には200台の限定車として販売された、ポルシェ初のAWDモデル「959」で、プロダクション・モデルとしてついに最高速で300km/hの壁を突破。
1996年は、ル・マン24時間の制覇を直接の目的に、GT1マシンの「911GT1」を製作。わずかな台数がカスタマーのもとにデリバリーされた。
最高速で330km/hを記録した、612psのV型10気筒エンジンを搭載する「カレラGT」が誕生したのは2003年。
そしてそれに続くハイパーカーが、2010年のジュネーブ・ショーで発表されたのだった。それこそが今、ボナムス1793のボンモント・セールに登場した、「918スパイダー」にほかならないのである。
■たった4年での評価は上々。918は優良物件
918スパイダーのメカニズムで最も大きなトピックスは、それがPHEVのシステムを持つことである。
●2016 ポルシェ「918スパイダー」
パワーユニットの核となるエンジンは、レースカーの「RSスパイダー」用をベースとした4.6リッターのV型8気筒で、さらに前後アクスルにエレクトリック・モーターを搭載。それによってパラレル方式のハイブリッドシステムを成立させている。
2個のエレクトリック・モーターは、合計で最高出力が231ps以上。結果918スパイダーが最大負荷時に発生することが可能な最高出力&最大トルクは、770ps&750Nm以上になるとポルシェは公称する。
ドライブモードは、「Eパワー」、「ハイブリッド」、「レースハイブリッド」、ステアリングホイール上にレイアウトされるレッドのプッシュスイッチを操作することで選択の意思が確認される「ホットラップ」の5タイプ。
このホットラップを選択すれば、ハイブリッドシステムは駆動力を最大に発揮する方向へと制御を変化させ、開発時からポルシェが公約としていた、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェで、7分22秒以下のラップタイムを可能にすることも現実になるという。
一方Eパワーは、エレクトリック・モーターの駆動力のみを使用して走行するモードである。ポルシェによればフル充電ならば最大で25kmの距離を、150km/hの最高速で走行することができるとのことだ。
918スパイダーの生産台数は、車名に由来してわずかに918台のみだった。新車当時の価格は61万1000ユーロ。今回のエスティメート(予想落札価格)は、110万スイスフラン−130万スイスフランと発表されているから、あくまで比較のために、現在のユーロ相場で計算すると、新車価格がおよそ7600万円に対してエスティメートは、1億2606万円−1億4898万円という数字になる。
新車からの走行距離がわずかに5900kmとしても、これは値上がり率としては相当なもの。ポルシェというブランドに対する期待感は、市場では絶対的なようだ。