トヨタには豊富なミニバンのラインナップがあり、国内では大中小と6車種をラインナップしていますが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。また、海外で展開されるトヨタのミニバンには、どのようなモデルがあるのでしょうか。
■小さいシエンタから大きいアルファードまで、多彩なミニバンを揃えるトヨタ
昨今のSUVブームと同じく、ミニバンも売れ筋のジャンルです。背が高くて室内が広く、子供が乗り降りしやすいスライドドアを備えるなど、ファミリー層から支持されています。
とくに豊富なラインナップを揃えるのがトヨタです。トヨタのミニバンには、どのような特徴があるのでしょうか。
国内で販売されているトヨタのミニバンは、ラージサイズの「アルファード」「ヴェルファイア」、ミドルサイズの「ノア」「ヴォクシー」「エスクァイア」、コンパクトな「シエンタ」と6車種あります。
ラージサイズのアルファードは、トヨタの高級ミニバンの代名詞ともいえる存在で、2020年1月から6月の登録台数が3万6597台にも及ぶ人気車種です。
現行モデルは2015年に登場した3代目モデルですが、2017年のマイナーチェンジで押し出し感のある外観デザインに変更。優雅でダイナミックな外観と、ラグジュアリーで質感が高い内装デザインも好評を得ています。
パワートレインは、2.5リッターガソリンと3.5リッターガソリン、2.5リッターハイブリッドをラインナップし、乗車人数は3列シート7人乗り/8人乗り(3.5リッターガソリンは7人乗りのみ)です。
政治家や芸能人、VIPの移動車に用いられることも多く、かつてトヨタ「クラウン」でいわれた「いつかはクラウン」ならぬ、「いつかはアルファード」といわれるほど、憧れのクルマになっています。
アルファードの姉妹車であるヴェルファイアは、クールな外観デザインを追求し独自のオーラと存在感を放っています。なお、内装やパワートレインはアルファードと共通です。
現行型が発売されるまではヴェルファイアの販売が好調でしたが、2017年のマイナーチェンジでアルファードとヴェルファイアのデザインが変更されると販売順位が逆転。
2020年1月から6月のヴェルファイアの登録台数は1万697台ということからもわかるように、アルファードとは3倍以上の差がついています。
ミドルサイズのミニバンは、日産「セレナ」やホンダ「ステップワゴン」といったライバル車がひしめく激戦区ですが、トヨタはノア、ヴォクシー、エスクァイアをラインナップします。
2020年1月から6月は、ノアが2万647台、ヴォクシーが3万3818台、エスクァイアが1万6095台と、単体で見るとアルファードのほうが多く売れていますが、ノアヴォク3兄弟を合計すると半年に7万560台を売り上げる人気シリーズとなりました。
5ナンバーサイズ(エアロモデルは3ナンバー)に収まる扱いやすいサイズで、広々とした室内空間は、子育て層に適しています。
外観のデザインは、ノアは堂々感、ヴォクシーは“毒気”のあるカッコよさ、エスクァイアはワンランク上の高級感を表現しています。
また、ノアとヴォクシーは標準仕様とカスタム仕様がありますが、エスクァイアは標準仕様のみとなります。
内装は基本的には共通ですが、エスクァイアは革シートを備えるなど、ノア、ヴォクシーとは違った上質感を演出しています。
パワートレインは2リッターガソリンに加え、1.8リッターガソリン+モーターのハイブリッドシステム「リダクション機構付きTHS II」を採用し、クラストップレベルの低燃費を実現しました。
トヨタがおこなっていた販売チャネル制では、ノアはカローラ店、ヴォクシーはネッツ店、エスクァイアはトヨタ店・トヨペット店で販売されていましたが、2020年5月よりトヨタでは全店舗で全車種を取り扱うようになり、現在ではどこの店舗でも購入できるようになりました。
そのため、今後どれか一車種に統合される可能性が高いといわれています。
コンパクトで、スライドドアによる乗り降りのしやすさを兼ね備えたシエンタは、取り回しのしやすい3列シートの小型ミニバンとして人気です。
2020年1月から6月の販売ランキングでは4万194台を登録して6位と、トヨタのミニバンでもっとも売れています。
現行モデルは2015年に登場した2世代目ですが、登場当初の奇抜なデザインには賛否両論ありました。
2018年のマイナーチェンジでは、フロントグリルのデザインを変更するとともに、ユーザーから要望が多かった2列シート5人乗り仕様を追加。普段使いでで大きな荷物を積む際や、アウトドアや車中泊で活用することができます。
パワートレインは、1.5リッターガソリンと1.5リッターハイブリッドを用意し、駆動方式は2WDと4WDがあります。また、3列シート車は6人乗りと7人乗りが選べます。
■日本では販売してない!? 超巨大ミニバン「シエナ」ってどんなクルマ?
海外においても、トヨタはミニバンを販売しています。
北米では「シエナ」という全長5mを超える巨大なミニバンが存在。2020年5月に4代目へのフルモデルチェンジが発表されました。
新型となるシエナは、日本の新幹線からインスピレーションを得て、滑らかでスピーディな造形を実現。
セダンの「カムリ」や「アバロン」と同じTNGAプラットフォーム「GA-K」を採用し、2列目にキャプテンシートを備えた7人乗りと8人乗りを設定しています。
新型シエナのパワートレインは、2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンにトヨタの「THS II」ハイブリッドシステムを採用し、最大システム出力243馬力を発揮します。
安全面では、トヨタの最新予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(TSS 2.0)」を標準装備するとともに、全10個のエアバッグを搭載しています。
また、トヨタはアジアで「アバンザ」という3列シート7人乗りミニバンを販売しており、インドネシアやマレーシア、フィリピンなどで展開されています。
トヨタとダイハツで共同開発されたモデルで、生産はダイハツのインドネシア工場でおこなわれ、ダイハツでは「セニア」という車種名で販売されています。
搭載されるエンジンは1.3リッター直列4気筒ガソリンと1.5リッター直列4気筒ガソリンです。トランスミッションは4速ATと5速MTが組み合わされます。
ボディサイズは、全長4190mm-4200mm×全幅1660mm×全高1695mmで、シエンタに近いサイズ感といえます。また、日本のミニバンではほとんど見かけなくなったヒンジ式の後部ドアを採用しています。
さらに、インドやタイなどでは「イノーバ」という3列シート7人乗り/8人乗りのミニバンが存在。
ボディサイズが全長4735mm×全幅1830mm×全高1795mmで、ミドルサイズミニバンのノア/ヴォクシーより少し大きいサイズですが、アバンザと同じようにスライドドアを装着せず後席はヒンジ式のドアを採用しています。
ガソリン車とディーゼル車(排気量は異なる)や、AT/MTが設定されています。
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日本でミニバンは人気のカテゴリですが、海外でも多人数乗車できるクルマは人気となっています。
なお、アルファードがアジアに輸出されているほか、日本では販売されていないレクサスのミニバン「LM」も中国で人気を博しているなど、トヨタの高級ミニバンの海外での需要が高まっているようです。