日清紡精機広島株式会社は、マツダが1967年に発売した「コスモスポーツ」の復刻パーツを製造・納品し、今後もよりレストア事業の強化を図っていくと発表しました。自動車メーカーやその関連企業も旧車のパーツを復刻する取り組みを加速していますが、その狙いはいったいなんでしょうか。
■社内の技術伝承も狙いか コスモスポーツの絶版パーツを復刻
日清紡精機広島株式会社は、マツダ「コスモスポーツ」の復刻パーツを製造・納品し、今後もよりレストア事業の強化を図っていくと発表しました。
また、国産メーカーによる旧車パーツの復刻プロジェクトも近年盛んになってきていますが、各社がパーツを復刻する狙いとはいったい何でしょうか。
コスモスポーツは、491cc×2ローターの実用量産ロータリーエンジン「10A型」を搭載する1967年に発売された2シータークーペです。
ロータリーエンジンの特徴のひとつであるエンジンの小ささを活かして、ボンネットが低く抑えられたことで、伸びやかな外観デザインを持つことも特徴となっていました。
日清紡精機広島株式会社は広島県東広島市に拠点を置き、エンジン関連事業を主力としている企業ですが、今回コスモスポーツのパーツを復刻した理由とは、どのようなものだったのでしょうか。
同社は、コスモスポーツオーナーズクラブからの要請を受けたことが直接の理由であったとコメントすると同時に、具体的な取り組みの背景について次のように説明します。
「日清紡精機広島株式会社は、前身である辰栄工業株式会社時代の1954年、東洋工業(現マツダ)の自動車部品の製造に乗り出し、1957年にはエンジン廻り部品の機械加工に加え、ブレーキマスターシリンダーボデー加工の発注を受け生産を開始。
1966年には全車種のブレーキマスターシリンダーなどの組み立てを受注し、名実ともにマツダ車のブレーキパーツの技術を支えてきました。
今回、国産ロータリーエンジン第1号であるコスモスポーツを動く姿で後世へ残していきたいというコスモスポーツオーナーズクラブの思いに賛同し、またブレーキシリンダー技術伝承の機会と捉え、マツダの支援の下、コスモスポーツオーナーズクラブ向けに、生産終了となっている部品を製造しました。
70年近くマツダのブレーキシリンダー製造に携わり、技術を継承・進化させてきたメーカーである当社ならではの製品品質を追求し、今後もレストア部品を供給して参ります」
日清紡精機広島株式会社が今回復刻したコスモスポーツのパーツは「ブレーキマスターシリンダー」と「クラッチマスターシリンダー」で、2019年12月にコスモスポーツオーナーズクラブへ100セットを納品。
実際に取り付けたオーナーによると、性能も良好で好評ということです。
日清紡精機広島株式会社は今後、これまで紡いできた事業力を生かし、ブレーキシリンダーのレストア事業を強化することで、日本の自動車文化の深耕にも貢献したいとしています。
■自動車メーカーも復刻パーツを販売 新規開発するメーカーも
近年では、国内自動車メーカーやその関連企業が絶版パーツを復刻する動きも広がってきています。
マツダは2017年に「NAロードスターレストアサービス」を開始。1989年に発売された初代(NA型)「ロードスター」の現存数が多いことや、長く愛用しているユーザーが多かったことから実現されました。
初代ロードスターに限定していますが、レストア(再生)サービスだけでなく、ハンドルやシフトノブ、フロアマット、ソフトトップ、そのほか補修用部品を復刻しての販売もしています。
さらに、マツダはブリヂストンと共同で、初代ロードスター発売当時の純正タイヤ「SF-325」を復刻して販売するなど、他社と共同での取り組みもおこなっています。
また、ホンダの純正用品を手掛けるホンダアクセスは、1999年に発売された「S2000」の復刻パーツを2020年6月に発売しました。
発売から20年の節目を迎えたことをきっかけに開発がおこなわれ、ただ復刻するだけでなく、新デザインのフロントバンパーを開発するなど、S2000の新たな一面を見られるパーツも用意されました。
S2000の20周年記念純正アクセサリーについて、ホンダアクセス広報部の担当者は次のようにいいます。
「これまでにも、『NSX』や『ビート』といった“名車”と呼ばれるモデルの節目にアイテムを発売してきました。
古いクルマのオーナーからは自分のクルマのパーツも復刻してほしいという要望もあるのですが、残存する台数などを考慮したうえで、復刻パーツの取り組みをしています。
ホンダ車に長年乗っていただいているオーナーのために、今後もこういった古いクルマへの取り組みができればと考えています」
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復刻パーツを販売する動きは、トヨタによる「GRヘリテージパーツプロジェクト」があるほか、日産・ニスモ・オーテックジャパンが共同でR32型・R33型・R34型「スカイラインGT-R」用パーツを再生産する取り組みがあります。
自動車メーカーおよび関連企業が取り組む狙いのなかには、自社製品を長年保有しているオーナーを重視したサービスという一面もありそうです。