2020年、トヨタはグローバルでさまざまなSUVを発表。6月には日本で「ハリアー(北米名ヴェンザ)」、「RAV4 PHV」、7月にはタイで「カローラクロス」、8月には日本で「ヤリスクロス」、9月にはインドで「アーバンクルーザー」と続々と新規モデルやフルモデルチェンジを投入しています。そのなかで、カローラクロスが日本に導入される可能性が高いといいますが、実際に導入された場合にはどのような影響があるのでしょうか。
■トヨタ「カローラクロス」は日本に来る? もし来たらトヨタSUVラインナップはどうなる?
2020年8月31日に日本で発売されたトヨタのコンパクトSUVとなる「ヤリスクロス」は、先行予約時点から多くの反響があり、いまもっともユーザーの関心が高いSUVです。
一方、2020年7月9日にタイで発表されたのが「カローラクロス」です。現在は、東南アジアを中心に展開される見込みですが、近い将来日本への導入も噂されています。この2台は昨今のSUV市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
ヤリスクロスは、2020年2月に発売されたトヨタのコンパクトカー「ヤリス」と同じTNGAプラットフォーム(GA-B)を用いており、世界的なボディサイズの分類ではBセグメントSUVとなります。
一方のカローラクロスは、トヨタがグローバル市場で展開する「カローラシリーズ」のSUVモデルとなり、2019年9月にフルモデルチェンジした「カローラ/カローラツーリング」と同じTNGAプラットフォーム(GA-C)を採用。ヤリスクロスとはセグメントが異なるのです。
しかし、日本市場においてはどちらもコンパクトSUVに分類され、同じトヨタSUVということもあり、カローラクロスも発売されるとなるとSUV市場がさらなる激化となることが予想されます。
具体的なボディサイズでは、ヤリスクロスは、全長4180mm×全幅1765mm×全高1560mmとなり、ヤリスの全長3940mm×全幅1695mm×全高1500mmよりひと回り大きなサイズです。
一方のカローラクロスは全高4460mm×全幅1825mm×全高1620mmと、カローラツーリングの全高4495mm×全幅1745mm×全高1460mmと比べると、ひと回り大きくなっています。
なお、トヨタのコンパクトSUVには、最小サイズ「ライズ(Aセグメント)」(全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mm)や「C-HR(Cセグメント)」(全長4385mm-4390mm×全幅1795mm×全高1550mm-1565mm)といったモデルも存在。
現在の販売状況や仮にカローラクロスが登場した際の影響について、トヨタの販売会社の関係者は次のように話します。
「現在、ヤリスクロスは毎日のように何ならかの問い合せを頂いているほど、お客さまからの関心は高いです。発売から1か月、先行予約開始から1か月半という時間が経っているなかでこれほど反響があることに驚いています。
2月のヤリスや6月のハリアーもそれなりに反響はありましたが、ヤリスクロスはそれを上回るほどです。
また、カローラクロスに関しては現段階で情報は入っていませんが、タイのリリースなどを見る限り、日本で販売されれば売れ筋モデルになる可能性は高いと思います。
あとは、日本での価格帯次第ですが、ヤリスクロスとRAV4の間に位置するクラスとなるので、同じCセグメントのC-HR同等になるではないでしょうか」
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ヤリスクロスの価格は、ガソリン車が法人向けグレード「X“Bパッケージ”」の179万8000円から「Z」の244万1000円、ハイブリッド車は「HYBRID X」の228万4000円から「HYBRID Z」の281万5000円です。
一方のカローラクロスはタイでの価格が、ガソリン車が98万9000バーツ(約329万円)、ハイブリッド車が101万9000バーツから119万9000バーツ(約346万円から約410万円)です。
なお、日本でのC-HR(GR SPORTや特別仕様車は除く)は、ガソリン車「S-T」の238万2000円から「G-T」の291万3000円、ハイブリッド車「S」の274万5000円から「G」の304万5000円となります。
■デザインや性能面ではどう違う?
ヤリスクロスの外観スタイルは、ヤリスよりも全高が60mm程度高く設定されており、アンダー部からフェンダーまでを樹脂パーツで取り囲むことでSUVらしいアクティブな力強さを表現しています。
フロントデザインは、フロントノーズを長く見せることで、スポーティよりも重厚感のある存在感を強め、ヘッドライトやグリル形状といったフロントマスクは、ベース車であるヤリスとは大きく異なり、オリジナリティあるデザインを採用。
リアデザインでは、テールランプ周辺が横長なのが特徴なほか、リアバンパーの占める割合が大きいため、SUVらしい頑丈な印象です。
一方のカローラクロスの外観デザインは、大型のメッシュグリルを上部に配置しており、カローラ/カローラツーリングに採用される大型の台形ロアグリルフレームとメッシュグリルとは異なるデザインとしました。
ヘッドライトの形状も異なり、カローラクロスにはフェンダーやサイドスカート部分などに樹脂パーツが装着されたことで、SUVとしての力強さが感じられるデザインです。
リアのテールランプも、カローラ/カローラツーリングとカローラクロスでは違うデザインが採用されています。
パワートレインでは、ヤリスクロスはヤリスに搭載される1.5リッターのガソリン車(2WD/4WD)と、ハイブリッド車(2WD/E-Four)をラインナップ。燃費性能においては、SUVの常識を超えたクラス世界トップレベルとなるWLTCモード30.8km/L(2WDのHYBRID X)を実現しています。
走破性を向上させる4WDシステムについて、ガソリン仕様では「MUD&SAND」「ROCK&DIRT」「NORMAL」の走行モードから選べるマルチテレインセレクトを採用。
ハイブリッド仕様では「SNOW」「TRAIL」「NORMAL」の走行モードから選べる電気式のE-Fourを採用(ともにトヨタコンパクトSUV初)。
降坂時に一定の低車速に保つダウンヒルアシストコントロールもトヨタコンパクトSUVとして初採用しました。
一方、カローラクロスのパワートレインは、1.8リッターのガソリン車とハイブリッド車を設定し、日本で販売されるカローラ/カローラツーリングと同様の仕様と見られます。
なお、日本のカローラシリーズには1.2リッターターボ、欧州向けのカローラシリーズには2リッターハイブリッドが用意されていることから、今後導入される国や地域によっては異なる可能性もあります。
駆動方式では、カローラクロスは2WD(FF)のみの設定ですが、日本のカローラシリーズの駆動方式は2WDのほかに、ハイブリッド車には「E-Four(電気式4WDシステム)」、カローラスポーツのターボ車には4WDが設定されています。
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爆売れ中のヤリスクロスですが、2020年10月上旬時点で最大3か月ほど納車に時間が掛かるとしています。
また、登録車販売台数ランキングでは常に上位にランクインするライズも発売開始から約1年経つものの好調を維持するなど、トヨタのコンパクトSUVはこの2台が支えているといっても過言ではありません。
さらに、C-HRもかつてほどの勢いは無いものの、SUVジャンルにおいてはまだまだ上位に位置するなど、トヨタは盤石なSUVラインナップを誇っています。
ここに、カローラクロスを日本に導入した場合、その販売バランスが保てるのか注目したい部分です。